失敗は成功の母。分析モード

執筆者: 武田 淳
4/16/2024

読み込み時間: 5min

はじめに

「分析モード」とは、Creo Parametric 6.0 まであった、部品形状作成の失敗やアセンブリ参照失敗などの際に、Creo がその状態になっていることを教えてくれるモードのことです。
Creo 7.0 以降では「分析モード」自体は廃止されていますが、別の方法で通知されて失敗時の対応方法がわかりやすくなっているために、これらをまとめて本記事では「分析モード」として記述します。Creo 7.0 以降から Creo を利用し始めたユーザーは、旧バージョンの情報を知る機会です。
失敗時の対応を適切に行うことで、3D データを「正」とした運用において 3D データを活用したデジタルスレッドをより確実に行うことが可能です。


分析モード今昔

Creo Parametric は、Pro/ENGINEER(Creo Parametric の以前の名称)時代から、部品モデルやアセンブリなどで失敗状態が発生すると、「分析モード」というそれらのエラーを通知して修復に入るモードがありました。概要に記載したとおり、そのモードが Creo Parametric 6.0 までありました。
分析モードへ入ると保存ができず、失敗が修復されるまで新しいフィーチャーの作成や部品のアセンブリなどができません。これは一見、不便に見えますが「モデルのデータ品質を維持し、不具合な状態を抱えたまま設計を進めることによる後工程の不具合や手戻りを早期解決するため」に、「関所」のような役割をするものでした。
話は逸れますが、今から約 30 年前のこと。当時、私は前職で自社の機械設計を 2D CAD で行っていました。1994 年から 2 年ほど自社を離れて取引先企業で若手ゲストエンジニアとして働いていました。その時に Pro/ENIGNEER Release 13 に出会いました。しかし、使い方もまだ覚束ない当時は、この分析モードが「出会いたくない敵」みたいな存在でした。(下図は Creo Parametric の画像)

失敗は成功の母。分析モード - 001 - Creo Parametric の画像

分析モードが出現した時の私は、エラーが起こったことでため息をつき修復することもせずにあきらめて『削除』をしていたことが多かった記憶です。しかし、この分析モードがあることでエラー原因を知ることができ、そこで修復を行えることで問題を後に回すことなく、その時点では修復の手数がかかっても「やっておいてよかった」と後で知ることになりました。もし、エラーが発生したまま先に進めることができていたら、設計の意図として定義した参照関係が不安定になり、いつどこで悪影響を及ぼすのかわかりませんし、エラーが記録として残らないと予測すらできないことは「モデルの不安定さ」と「低いデータ品質」になってしまいます。さらに、これらデータを後工程に渡す場合の影響、例えば IGES や STEP などの中間形式で出力する場合に、ジオメトリの不具合を起こし 3D 金型設計や CAM データ作成における不具合の原因になるかもしれません。


分析モード(Creo 3.0 の場合と Creo 10 の場合)

話を過去から戻します。
ここでは、Creo 3.0 の失敗状態から分析モードまでを追ってみます。ラウンドに参照を取っている穴が、ラウンドを削除すると失敗します。

失敗は成功の母。分析モード - 002 -「ラウンド 2」のフィーチャーを削除
図 1. 「ラウンド 2」のフィーチャーを削除

失敗は成功の母。分析モード - 003 - 子の参照がある場合のダイアログボックス
図 2. 子の参照がある場合のダイアログボックス

失敗は成功の母。分析モード - 004 - 子の処理を定義
図 3. 子の処理を定義

参照している子のフィーチャーの処理。サスペンドは、削除せずに残して後で処置をする状態。

失敗は成功の母。分析モード - 005 -  分析モードの画面(穴フィーチャーが失敗)| 簡単修復(削除)
図 4. 分析モードの画面(穴フィーチャーが失敗)| 図 5. 簡単修復(削除)

図 4. は、分析モードの画面。ここでは、図 5. のメニューマネージャで「変更を元に戻す、調査、モデル修復、簡単修復」の 4 つから選択が可能です。

  • 「変更を元に戻す」で UNDO が可能
  • 「調査」で参照関係の調査
  • 「モデル修復」でフィーチャー作業や別フィーチャーの寸法修正などが可能
  • 「簡単修復」で再定義(定義編集)やルート変更(参照変更)や削除等が可能

いずれでも、分析モードでは修復や抑制や削除などで何かしらの対処をしないと保存ができません。

次に、Creo 7.0 以降では「従来の分析モード」がありません。
フィーチャーの失敗が発生しても保存操作が可能で、その状態で保存できます。なお、失敗したフィーチャーとその子フィーチャーは

  1. モデルツリー上で赤色表示され、失敗したフィーチャーへ赤色の [ i ] マークが付きます。
  2. Creo のウィンドウの右下に「通知センター」で「失敗」と表示され、それをクリックすると失敗するフィーチャーがリストされます。
  3. 検索で「失敗フィーチャー」を探すこともできます。

修復する手順は、UI こそ違うものの分析モードと同じ機能を利用可能です。
ここでは、Creo 10 の失敗状態から通知センターが表示されるまでを追ってみます。ラウンドに参照を取っている穴が、ラウンドを削除すると失敗します。

失敗は成功の母。分析モード - 006 - 「ラウンド 2」のフィーチャーを削除
図 6. 「ラウンド 2」のフィーチャーを削除

失敗は成功の母。分析モード - 007 - 子の参照がある場合のダイアログボックス
図 7. 子の参照がある場合のダイアログボックス

失敗は成功の母。分析モード - 008 - 子の処理を定義
図 8. 子の処理を定義

失敗は成功の母。分析モード - 009 - サスペンドした状態で保存可能
図 9. サスペンドした状態で保存可能

失敗は成功の母。分析モード - 010 - 再生失敗の表示
図 10. 再生失敗の表示

失敗は成功の母。分析モード - 011 - 通知センター
図 11. 通知センター
失敗は成功の母。分析モード - 012 - 失敗フィーチャーへの操作(通知センター内)
図 12. 失敗フィーチャーへの操作(通知センター内)

分析モード(Creo 3.0 のメニュー名では「フィーチャー分析」)は無くなったものの、分析モードで提供していた機能は、その機能へのアクセス方法が異なったのみで失うことなく使えます。

下記は、ユーザー向け情報ですが、これを追記してこの記事を閉めます。
Creo 7.0 以降で廃止された下記の config オプションがあります。

regen_failure_handling no_resolve_mode (デフォルト値)/ resolve_mode *

 

resolve_mode は、解決ダイアログが表示され、先に進む前に問題に対処する必要。
no_resolve_mode は、失敗があっても保存可能。

Creo 7.0 以降で上記の config オプションが廃止されているので、失敗フィーチャーがあっても保存を許可する config オプション「allow_save_failed_model」が追加されています。

 

prompt:失敗モデルの保存はユーザーが指定。
no:失敗モデルの保存ができない(保存操作はできるが保存されない)。
yes:失敗モデルの保存が可能。

以上で、今回の「失敗は成功の母『分析モード』」を終了します。


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ご参考

Tags: CAD Creo 航空宇宙・防衛 自動車 電子・& ハイテク 産業機器 デジタル スレッド デジタルトランスフォーメーション (DX)

執筆者について

武田 淳

製品事業部 CAD セグメント シニアアプリケーションスペシャリスト

超音波洗浄機、液晶製造装置等の機械設計を 2D & 3D 共に経験し1997 年に入社。機械設計分野以外に樹脂・板金金型、CAM の担当エンジニア。