是正処置と予防処置 (CAPA) とは

10/10/2023

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編集注記: この記事の初版が公開されたのは 2020 年 12 月です。2023 年 10 月に新たな情報を加筆し、更新しました。 

是正処置と予防処置 (CAPA) により、企業は不具合の厳密な調査を計画、実施し、根本原因を発見して、部品や製造プロセスに対する改善策を実行できます。本稿では、CAPA の概要、重要な理由、仕組み、実行方法をご紹介します。

CAPA とは

単に「是正処置」とも呼ばれる CAPA(是正処置と予防処置)は、製品の不適合や望ましくないシナリオの原因を排除することを目的とした継続的な改善プロセスです。CAPA のワークフローを標準化することで、既存の問題を是正して品質と規制遵守を改善する手順を確実に開始、評価、割り当て、監視、レビュー、承認できるようになります。

CAPA が重要な理由

是正処置はプロセスの半分にすぎず、問題が起こらないようにするのは予防処置の役目です。CAPA では処置の履歴が残るため、関係者は予防策を取り、変更通知を自動的に生成できます。品質に焦点を当てて改善策を継続的に取り入れ、当初の問題に対応することで、企業は製品の不具合が再発するリスクを事前に低減できます。

是正処置と予防処置の違い

是正処置と予防処置の最もわかりやすい違いは、事後か事前かです。是正処置では、主に監査や苦情で明らかになった既存の問題に対応し、緊急の問題の解決と再発防止に取り組みます。予防処置は、主にリスク評価やトレンド分析で明らかになった問題の発生を防止し、リスクを低減することが目的です。いずれも品質とリスク管理システムに欠かせない要素であり、企業は高い基準を保ちながら混乱を最小限に抑えることができます。

是正処置と予防処置を実行する理由

現場で製品や設備に不具合が生じた場合、重要なのは、問題をできるだけ早く診断して解決することです。そうすることで、次のような悪影響を軽減できます。 

  • 人への危害
  • コストのかかるダウンタイムの発生
  • 欠陥製品の売買
  • 政府による規制や法律により科される、不具合に対する罰則

是正処置と予防処置を実行することで、企業は次のようなメリットを得られます。

  • 改善プロセスが構造化され、測定可能に
  • 過去の設計で得られた教訓を予防処置に盛り込む
  • 規制の厳しい業界で遵守を確保

さまざまな業界の企業がこのプロセスを品質管理プログラムに盛り込み、製品の品質強化に取り組んでいます。実際、製薬業界における CAPA は成功に不可欠とみなされています。

CAPA のプロセス

CAPA のプロセスは、必要な製品関連の情報の収集と分析、製品と品質に関する問題の特定と調査、適切かつ効果的な是正処置と予防処置の実行による再発防止からなります。 

デジタル・コネクティッド・エンタープライズが登場する前は、企業の CAPA 策定プロセスには課題が多く、当初の問題を悪化させる場合もありました。データがサイロ化しているため、必要な情報がどこにあるかわかりません。プロセスもきちんと定まっておらず、企業は次のような状況に苦しんでいました。

  • 事前的な対策よりも事後的な対応に終始
  • 根本原因がよくわからない
  • 部門間の連携が欠如

現在では、関係者は事前定義済みかつ構成可能なワークフローと部品表 (BOM)、部品、ドキュメントを統合して、品質関連のすべての情報を紐づけています。複雑な CAPA から統合レポート、有効性の監視まで、さまざまな個別の行動が紐づけられ可視性が高まったことで、企業は潜在的な問題に関する知見を直接かつ正確に得られるようになりました。

CAPA の実行方法

不適合、顧客からのクレーム、偏差への対応は、不具合の是正における重要な要素です。現在の企業は、このプロセスをデジタル・コネクティッド・エンタープライズで強化して、CAPA をリアルタイムに管理し、関係者が効果的かつ正確な処置を取ることができるようにしています。 

業界をリードする PLM ソフトウェアである PTC の Windchill を使用すれば、企業はサイロ化した情報をデジタルでつなぎ、是正処置と予防処置にデータを取り入れることができます。そうすることで、プロセス全体の透明性と品質が合理的な方法で確保されます。

CAPA の原則を用いるべき場面

CAPA の原則は、問題の特定、調査、対応が必要なあらゆる場面に適用できます。品質、安全、規制遵守、プロセス改善など、分野は問いません。CAPA の原則は汎用性に優れ、ヘルスケア、製薬、食品、飲料、製造、IT、ハイテク、ユーティリティなどさまざまな業界で事業を展開する企業にとって特に価値があります。

CAPA に関するよくある誤解

トレーニングにコストがかかる

CAPA の原則では、社員のトレーニングに関する初期投資は必要かもしれませんが、長期的に見ればメリットがコストを上回り、コストの削減、リスクの低減、規制遵守、全体的なビジネスの改善などの効果があります。また、エンゲージメントの向上、効率性の向上、競争力の強化にもつながり、高品質な製品とサービスを一貫して提供できるようになります。

CAPA さえやっておけば、品質を確保できる

CAPA は品質の問題に対応し、しかるべき改善を行うために欠かせませんが、広範な品質管理フレームワークに統合する必要があります。強力な PLM を基盤とする包括的な品質管理アプローチにより、企業は問題の是正と予防に加え、一貫した品質水準を保ち、卓越性を継続的に追求できます。

仕事が増える

CAPA の原則を実行するには、もちろん準備が必要です。トレーニング、プロセス開発、ドキュメントの作成、リソースの割り当て、変更管理などの作業が必要になりますが、この場合もやはり、それを大きく上回るメリットが得られます。CAPA は効果的な品質管理と継続的な改善に欠かせない要素です。問題の根本原因に対応することで、企業は問題や危機の再発に関連する全体的な作業量を削減できます。

まとめ

CAPA は、企業が既存の問題に対応して再発を事前に防止するための重要なフレームワークで、包括的なアプローチで品質管理と継続的な改善を実現します。さまざまな業界に適用できる汎用性を持ち、企業は問題を効果的に特定、調査し、対応できるようになります。

製造業務で品質管理を実行する方法について詳しくは、Aberdeen 社のレポート『Weaving Quality into the Digital Thread(デジタルスレッドに品質管理を組み込む)』をご確認ください。PTC の品質管理ソリューションについて詳しくは、PLM 品質管理のページをご確認ください。

 

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Tags: 品質 デジタル スレッド 製品ライフサイクル管理 (PLM) Windchill

執筆者について

ジェフ・ゼムスキー(Jeff Zemsky)

ジェフ・ゼムスキーは Windchill デジタルスレッド担当副社長です。彼のチームは、ナビゲーション、ビジュアリゼーション、Windchill UI、デジタル製品トレーサビリティを統轄しています。PTC に入社する前は、産業、ハイテク、消費者製品の企業で PLM、CAD、CAE の導入と活用を 16 年間担当し、2002 年には Windchill PDMLink の最初の導入を主導しました。また、PTC/USER コミュニティでも積極的に活動し、Windchill Solutions 委員会の委員長や PTC/USER の理事会メンバーとして、お客様の意見をまとめ、ツールやプロセスについて人々が連携できるコミュニティの形成に貢献しました。レンセラー工科大学およびリーハイ大学で学びました。