モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みを成功に導くベストプラクティス

執筆者: Chad Jackson
7/22/2021

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変化を受け入れなければ、ビジネスを向上させることはできません。そして、変化には障壁がつきものです。それでも多くのイノベーションには、積極的に取り組むだけの価値があります。メーカーの競争力維持につながる、テクノロジーを活用したプログラムであればなおさらです。モデルベース定義 (MBD) の導入も、まさにそのようなイノベーションのひとつです。

モデルベース定義 (MBD) の導入: モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みを成功させるには

モデルベース定義 (MBD) は、コンピューター支援設計 (CAD) ソフトウェア に組み込まれたアノテーション付きの 3D モデルであり、特定の製品設計の詳細情報の定義に使用されます。モデルベース定義 (MBD) を利用した製品設計には多くのメリットがあり、そのため、モデルベース定義 (MBD) を導入する企業が増えています。しかし、ただソフトウェアをインストールすれば成功するわけではありません。モデルベース定義 (MBD) を活用するためには、相応の取り組みが必要です。

製品設計プロセスにモデルベース定義 (MBD) を取り入れるための万能なアプローチはありません。しかし、モデルベース定義 (MBD) の活用に向けた取り組みを成功に導くベストプラクティスは存在します。
本ブログでは、モデルベース定義 (MBD) の作成、効果的な利用、このようなプロセスの変革にともなう企業文化の変化を管理するためのヒントをご紹介します。

モデルベース定義 (MBD) オーサリングへの切り替え

モデルベース定義 (MBD) の導入にあたって最初に取り組むことになる主要なステップは、従来の 2D 図面の作成からモデルベース定義 (MBD) の作成への移行です。エンジニアリングチームがこの変更を行う際、確実に成功させるためのいくつかの方法があります。

  • アノテーション削減の推進。2D 図面の作成では、設計者は通常、個々のジオメトリ情報を空間に配置するために各々の寸法を追加するという方法を取っていますが、このプロセスは非常に時間がかかります。モデルベース定義 (MBD) のメリットは、そのようなジオメトリ情報がすべてモデルベース定義 (MBD) の作成過程で組み込まれる点です。つまり、設計者は製品製造情報 (PMI) を追加しておくだけで製造される部品の適合性を確保できるため、設計ドキュメント作成のための全体的な作業量を削減できます。このメリットをアノテーション削減の取り組みと組み合わせることで、大きな相乗効果を得られます。アノテーション削減にまだ取り組んでいない企業にとっては、モデルベース定義 (MBD) への移行が取り組みを始める最適なきっかけとなります。
  • セマンティック PMI の組み込み。モデルベース定義 (MBD) のもうひとつのメリットは、セマンティック PMI(機械による読み込みが可能な PMI)を組み込めるため、後工程の CAD やその他の設計プログラムでその情報を利用できることです。セマンティック PMI は、組み込まれたモデルベース定義 (MBD) がリリースされると、工程の自動化のために非常に幅広い方法で活用できます。設計者が最初からセマンティック PMI を追加しておくことで、設計ワークフローの中断を引き起こすような変更が後から発生するリスクや、製造の後工程での遅延の可能性を最小限に抑えることができます。

モデルベースのプロセスへの移行

モデルベース定義 (MBD) を作成するだけでは十分ではありません。単に従来の 2D 設計図面をモデルベース定義 (MBD) に置き換えるだけでは、モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みの投資利益率は低くなります。さらに、大きな価値を実現する機会も逃してしまいます。

詳細レベルと精度の高い情報が含まれるモデルベース定義 (MBD) は、設計部門およびその他の部門において数多くの革新的な方法で利用できます。モデルベース定義 (MBD) を最大限に活用するには、モデルベースのプロセスを開発プロセス全体に取り入れることが重要です。

調達部門での活用を例に挙げてみましょう。見積依頼 (RFQ) プロセスの一環としてモデルベース定義 (MBD) およびテクニカルデータパッケージ (TDP) をサプライヤーと共有することで、サプライヤーがより正確な見積りを算出できるよう支援できます。情報が明確に示されたモデルベース定義 (MBD) により、サプライヤーはコンポーネントやアセンブリに関する要件を正確に把握できるため、製造までの期間や価格の予測精度が大幅に向上します。

製造および品質部門での活用方法もあります。モデルベース定義 (MBD) に組み込まれたセマンティック PMI は、コンピューター支援製造 (CAM) および 3 次元測定機 (CMM) の次世代アプリケーションでも利用できます。これらのアプリケーションでセマンティック PMI を読み込むことで、より正確で標準化されたツールパスを自動的に生成できるため、作業時間とコストの大幅な削減につながります。

さらにモデルベース定義 (MBD) は、作業指示のイラストやアニメーションを作成する必要がある部門にもメリットをもたらします。モデルベース定義 (MBD) を利用する場合、作業指示の作成者は 2 種類の成果物、つまり 3D モデルと 2D 図面の両方を参照する必要がありません。単一のモデルを表示、操作、検証するだけで、必要な情報を得ることができます。その結果、より詳細かつ正確な作業指示を提供できます。

企業文化の変化への対応

モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みにより新しいツールとプロセスが導入されると、技術面での大幅な刷新が必要になります。さらに、企業文化の変化への対応も考慮しなければなりません。

社内の設計者は従来の 2D 図面での作業に慣れています。モデルベース定義 (MBD) を導入し、まったく新しい設計ドキュメント作成方法へと移行する際は、設計者が新しい方法に慣れるまで日々の業務や活動に混乱が生じます。後工程にも同様の影響を与えます。そこで、企業文化の変化に適切に対応し、てモデルベース定義 (MBD) の導入を成功させる方法をいくつかご紹介します。

導入時における各部門への期待事項の明確化

まず認識する必要があるのは、どのメーカーにも、それぞれ異なる利害関係を持つ多くの関係者が存在するということです。設計マネージャーや責任者などを含む各部門のオーナーは、モデルベース定義 (MBD) 導入の過程でもプロジェクトの納期を厳守しなければなりません。

このような各部門の責務は、決して小さなものではありません。各部門の制約を理解したうえで、モデルベース定義 (MBD) 関連の目標達成に必要な変更を各自が実行できるよう支援することが重要です。この種の変更にともなう短期的なコストを軽視してはいけません。

成功のために必要なツールの提供

2 番目に留意すべき点は、どのような変革の取り組みも、その成否はサポート体制にかかっているという点です。モデルベース定義 (MBD) を導入する場合も同様であり、確固としたサポート基盤がなければ成功は望めません。適切なトレーニング、テクノロジー、テクニカルサポート、知識向上のためのリソースを提供し、業務への影響を最小限に抑えつつ、新しいプロセスへスムーズに移行できるよう設計チームを支援する必要があります。

サプライヤー向けのトレーニング

最後に、サプライヤーとよく話し合い、サプライヤーがこの新しい設計ドキュメントに慣れるまで緊密に連携してサポートすることが大切です。一部の企業ではこのプロセスを省略しており、それが原因で問題が発生するケースも見られますが、このような問題は事前のトレーニングで容易に回避できます。

現在、多くのメーカーのサプライチェーンは 2D 図面に大きく依存しています。サプライヤーがモデルベース定義 (MBD) での作業に慣れていない場合は、モデルベース定義 (MBD) を利用するシステムへスムーズに移行してもらえるようサポートを提供する必要があります。モデルベース定義 (MBD) での作業に慣れてもらえるまで十分なサポートを提供することは、メーカーとサプライヤーの両方にメリットをもたらします。

成功に向けたベストプラクティス

モデルベース定義 (MBD) への移行には課題がともないます。しかし、明確な見通しを持って取り組むことでそれらの課題を克服し、設計ドキュメント作成と製品開発プロセスの両方に多くのメリットをもたらすことができます。

本ブログで紹介した新しいモデルを作成する際、モデルベース定義 (MBD) オーサリングとモデルベースのプロセスをサポートするとともに、チームへの期待事項と企業文化の変化を適切に管理することが重要です。この点に留意することで、企業の俊敏性や競争力を維持し、将来に起こりうる変化への対応力を高めつつ、モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みによるメリットを最大限に引き出すことができます。

モデルベース定義 (MBD) 活用に向けた取り組みにともなう技術的および企業文化の変化に対応する方法の詳細については、eBook『モデルベース定義 (MBD) に向けた取り組みから価値を引き出す』をダウンロードしてください。

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Tags: CAD

執筆者について

Chad Jackson

Chad Jackson is an analyst, researcher and blogger providing insights on technologies used to enable engineers. As a prolific writer, he has published educational thought leadership topics hundreds of times. As a sought-after speaker, he has presented dozens of times both domestically and internationally. As an astute researcher, he has surveyed thousands of engineering organizations as part of his research studies. As a commonsense co-host of numerous web shows, he has debated and pushed limits on critical issues. Overall, Chad is an influential, independent and insightful voice on technologies used to design products.