Creo のマルチボディ

執筆者: 古賀 奨
8/30/2023

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Creo とマルチボディ

マルチボディの考え方は、3 次元 CAD 内で作られた複数の体積を持つ形状を、和、差、積といった集合演算によって合わさった形を作る 3 次元 CAD 内で作られた、歴史のある 3 次元モデリング手法です。Creo はこれら集合演算で形を作るのではなく、「パラメトリックフィーチャーベース」という、Creo の登場当時(登場時の名称は Pro/ENGINEER)は全く新しい方法で 3 次元モデリングを行う 3 次元 CAD システムだったため、集合演算を行うための「マルチボディ」という考え方はありませんでした。

マルチボディを活用して作成される形状は、すべてパラメトリックフィーチャーベースの考え方で作成できます。このため、Creo は長年マルチボディを機能として持っていませんでした。
しかし、Creo にマルチボディ機能を搭載してほしいというユーザーからの要望は常に高く、PTC も Creo にマルチボディを実装することで Creo のユーザビリティが向上することを理解し、Creo 7.0 でついに Creo でマルチボディが使用できるようになりました。
Creo のマルチボディ_001


マルチボディの基本的な使い方

既存の Creo ユーザーはマルチボディの機能がない環境でずっと設計を行っていたので、急にマルチボディが使えると聞いても「どのように使ったらいいの?」と戸惑ってしまうかもしれません。
前にも述べたように、もともと Creo はこの世に出た時から「パラメトリックフィーチャーベース」というコンセプトでモデリングを行う 3 次元 CAD です。よってマルチボディはそのコンセプトでずっとモデリングを行っていた方が無理に使用する機能ではないと思います。
ただし、ある部品と別の部品をマージする、またはカットアウトするといった作業が比較的多いユーザーであればマルチボディを使うことによってパーツ環境だけで、不要な参照関係を付けずに目的を達成できるため、作業が楽になる可能性があります。
Creo のマルチボディ_002

また、マルチボディの機能では体積を持つ形状同士を足したり引いたりするだけではなく、分割することができます。
最初は 1 つの塊でモデリングを行い、あとから分割して更には別部品にするといった事もできますので、製缶品や樹脂カバーなどの設計に活用することによって、より効率的なモデリングを行える可能性があります。
また、過去に作成したパーツモデルにマルチボディを活用して編集すると、形状の分割、移動、一体化を駆使することにより大幅な形状変更も行えるようになります。
Creo のマルチボディ_003


マルチボディを活用した構想設計

Creo は他のどのような 3 次元 CAD と比較してもトップダウン設計が得意な CAD です。
構想設計情報を下のサブアセンブリや部品に伝え、正確な設計を行うことができます。また、設計変更が発生しても構想設計情報を変更するだけでそれらの情報は下に確実に伝達されます。
Creo のマルチボディ_004

また、このトップダウン設計を行うための専用機能を持っているという事も他の 3 次元 CAD にはない Creo の大きな特徴です。
しかし、設計する製品の規模があまり大きくなかったり、トップダウン設計を行うための社内ルールが確立されてなかったり、Creo のトップダウン設計のオプションをお持ちでなかったりといったさまざまな理由から、Creo でトップダウン設計をあまり活用できていないユーザーもおられると思います。
製品規模は限定されますが、マルチボディを使ったトップダウン設計は作業や考え方がシンプルなため、今まで Creo のトップダウン設計機能を活用することに二の足を踏んでおられたユーザーにもお勧めできます。
Creo のマルチボディ_005


さいごに

Creo 7.0 以降使えるようになったマルチボディは、従来のパラメトリックフィーチャーベースのモデリングと組み合わせて使用することによって、今までよりも作業が楽になる場面があったり、シンプルなトップダウン設計を行えたりとCreoの利便性を向上させることができます。
操作方法も非常に簡単ですので興味をお持ちの方はぜひ試していただきたいと思います。


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ご参考

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執筆者について

古賀 奨

CAD ビジネスディベロップメントマネージャー

Creo Parametric(Pro/ENGINEE R含む)歴 18 年
PTC の設計ソリューションで実現できることやメリットをお客様に伝え、3 次元データを活用したデジタルツインや AR といった更なる設計環境を使っていただき喜んでいただく事が使命。