3D は「3 次元」の意味であり、3D データで設計物などを表現することを示します。「CAD」は「Computer Aided Design」の略称であり、日本語に訳せば「コンピューター支援設計」であり、国内外ともに「キャド」と呼称します。
3D CAD は、「スケッチ」と呼ばれる線画を描き、それに対して高さや奥行きを定義することで立体のデータを形成します。そこへさらに形状追加や修正を繰り返しながら立体を定義します。また、スケッチや立体は数値で精密に制御可能です。3D CAD で作成する 3D データは、スケールや寸法、幾何の概念が伴うことが特色です。なおアニメーションやゲームのグラフィック制作で用いる 3D CG ソフトウェアでも 3D データを制作可能ですが、それで製作する 3D データには寸法やスケールの概念が伴いません。
3D CAD で生成する 3D データは、中身の詰まった立体である「ソリッドモデル」が主流です。ソリッドモデルの作成手法は、大きく「パラメトリックモデリング(ヒストリー型)」と「ダイレクトモデリング(ノンヒストリー型)」の 2 手法に分かれます。パラメトリックモデリングは形状を積み上げて、形状作成履歴や各部位を設計根拠に紐づけながらモデリングしてく手法です。一方、ダイレクトモデリングは、作成履歴に囚われず、思うがままに形状を作りあげる手法です。どちらの手法が優れているかは一概に語れず、自社の製品設計の進め方により選定するのがよいとされます。
2D CAD と何が違うのか
2D CAD と 3D CAD は、単純には設計物を平面的に表すか、立体的に表すかの違いですが、作図の考え方や設計物の捉え方が少し異なります。
さらにその後、1990 年代からマイクロソフトの OS である「Windows」が登場し、3D CAD を動作させる OS は従来の Unix から Windows が主流に変わり、パーソナルコンピュータ(パソコン)やインターネットが普及していく中で、製造業で 3D CAD が急速に普及していきました。
3D CAD の種類について
3D CAD の規模(クラス)は、大きく 3 種類あります。
ハイエンド CAD
1980 年代に登場し、比較的歴史が長く、かつハイエンドな機能を備えた 3D CAD を指します。ライセンスの価格帯は、比較的高価になっています。航空宇宙や自動車業界で使用される 3D CAD で目立つクラスです。
ミッドレンジ CAD
1990 年代後半に登場した、Windows OS をベースに動作する、PC 向けの 3D CAD ソフトウェアを指します。ライセンスの価格帯は、ハイエンド CAD に比べて機能を抑えて普及的な価格に抑えたものになっています。業界や企業規模にかかわらず、広く使われているクラスです。
ローエンド CAD
2010 年代半ば以降に急増した、個人ユーザーでも手が届く数万円クラスの価格帯や無償の 3D CAD を指します。機能面はミッドレンジクラスの 3D CAD に劣るため、企業内での設計でメインツールとするには厳しいクラスです。このクラスには、クラウド対応の CAD もあるため、社外の協力者などと協調して開発する際、あるいはリモートワークの際のサブツールとして使用するのが現実的でしょう。
3D CAD を使用するメリットは、設計物の形状や構造を 3D データで直感的に把握できることです。特に複雑な形状や部品点数が多い場合は、設計者自身が直感的に形状を理解しながら、設計を進めることができます。また、3D CAD で扱うデータが、ソリッドという中身が詰まった密度を伴うデータであるため、自動で部品同士の干渉をチェックできる、すぐに部品の体積や重量を計算できる点も便利です。
例えば、長年 2D CAD で設計を行ってきた人からよく聞くのが、「慣れたツールを変えたくない」「新しいことを覚えたくない」といった声です。このような人たちも、いざ職場に 3D CAD が導入され、さらに「それでしか仕事をしてはならない」となれば、やがて慣れて順応してしまうことが多いようです。
ソフトのインストール
上述のとおり、3D CAD は、「とにかく使ってみること」が大事であるといえます。3D CAD を使えるようになる第一歩は、試用版でも無償の 3D CAD でもかまわないので、ダウンロードして、3D CAD でモデリングする体験をして、実際に業務でやっている単純な設計から試してみることがいいかもしれません。今は、無料でさまざまな 3D CAD を試すことができるため、いろいろ試しながら自分の設計スタイルに合ったソフトウェアを探していくとよいかもしれません。
トレーニングの受講
3D CAD の操作を習得したい場合には、ソフトウェアのチュートリアルを実践してみるのがおすすめです。無償のソフトウェアにもたいていチュートリアルが付いています。また、YouTube では、本職の機械エンジニアや職業訓練の先生の YouTuber が 3D CAD の入門を無料で教えています。このような人たちは SNS を使って、設計初心者の方向けのお役立ち情報も発信しているので、ぜひ探し出して、「この人、いいね!」と思う人と交流してみてください。
3D モデリングを教える研修やトレーニングも、インターネット上でも、実地でも、いろいろあり、個人にも負担がかからない額の受講料のものも結構あります。「自分自身にコミットする」きっかけ作りとしては、このようなトレーニングを受講するのも有効かもしれません。
3D CAD のモデリング方法
ここでは、パラメトリック 3D CAD による一般的なモデリング方法の一例について説明します。
3D CAD のモデリングの基本的な機能は、どのブランドのソフトウェアも大きく変わりません。また、「スケッチを描いて、押し出す」を繰り返していくことがモデリングの基本であり、パラメトリックモデリングでもダイレクトモデリングでもそれは同じです。両者では、大きく、設計空間に対して作成履歴を考慮していくかいかないかの違いがあります。
10. 3D モデルが完成しました。
画面左側に、これまでのモデリングの過程が「ヒストリーツリー」としてまとまっています(以下の図、赤枠)。このヒストリーツリーを使って、過去のモデリングをさかのぼって修正を加えることが可能です。ノンヒストリーの 3D CAD の場合は、このようなヒストリーツリーはありません。