スマート・コネクティッド・プロダクツ (SCP) とは、インターネットに接続され、製品自体とその環境に関するデータを共有できる、あらゆるデバイスのことです。このデータには、リアルタイムのパフォーマンス指標、デバイスの状態および健全性に関する情報、類似デバイスや関連デバイスとの比較情報、さらに今後発生し得る問題を防止するための予測情報などが含まれます。SCP デバイスの条件には、そのデバイスが物理コンポーネント、スマートコンポーネント、(アクティブに)接続されたコンポーネントを備えていることが挙げられます。製品の機械部品や電気部品のような有形材料が物理コンポーネントを構成するのに対し、スマートコンポーネントはセンサー、制御装置、ソフトウェアなどで構成されます。物理的な側面とスマート技術の側面が連携して接続用のコンポーネントが形成され、製品が周囲の環境や外部システムと接続できるようになります。
SCP の導入を始めたばかりだという場合、このすべてが複雑だと感じるかもしれません。しかし、PTC の Smart Connected Products Accelerator (SCPa) を活用すれば、SCP の導入に不可欠な遠隔支援のユースケースを迅速に実装し、価値実現までの期間を大幅に短縮できます。Smart Connected Products Accelerator は総合的なソリューションではありませんが、高度な機能セットを備えており、独人のデジタル構成あるいはユーザーに表示されるプロパティを選択できるテンプレートを活用することで、総所有コストを 40% 低減します。つまり、Smart Connected Products Accelerator を使えば、ゼロから始める必要はないということです。また迅速に導入できるだけでなく、IT 部門以外の従業員もシステムを管理できるようになります。
産業機器を出荷した後、サプライヤーはさまざまな不安を抱えることになります。機器の性能や稼働時間を確認したくても、それを知る具体的な方法がないからです。情報さえあれば、サービスの追加、データの活用、顧客満足度の向上における絶好の機会となる可能性がありますが、サプライヤーは情報から断絶されています。しかし、SCP なら情報を可視化することで予測不可能な状況に対応し、価値ある収益化戦略を実現できます。パフォーマンスデータをリアルタイムに把握できるので、収益性の向上や顧客ロイヤルティの強化、データに基づく意思決定が可能になります。
インターネット接続機能と高度なセンサーを搭載した SCP は、データをリアルタイムに収集および送信できるように設計されています。このデータからは、顧客の行動、好み、トレンド、製品の使用方法や改良できるポイント、あるいはまったく新しい収益源の創出などのインサイトが含まれます。またデータを利用して新サービスの提供も可能です。データから得たインサイトを活用し、データに基づく意思決定を行うことで業務効率も向上するため、競合企業に先んじて優位性を確立できます。
ソフトウェアソリューションを導入する前には、常に戦略が必要で、SCPaも例外ではありません。コネクティッド・プロダクツは一般製品をはるかに上回る機能を備えており、産業界のユーザーの大半にとって、SCPaはデジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みの遅れから、遠隔でのサービス提供にいたるまで、リスクを削減できるというのが最大のメリットです。コネクティッド・プロダクツ戦略の策定は、コストや廃棄物の削減と収益増加の機会創出など、大きな成長機会の特定を支援します。
コネクティッド・プロダクツ戦略を導入するメリットは、以下のとおりです。
SCP の導入を始めたばかりの企業の場合、投資へのリターンを確実に得られるよう、長期的なビジョンと戦略を立案する必要があります。企業の目標とニーズ、活用できるスキルやリソースを特定できれば、どのような戦略とプロセスを定義すべきかも明確になるでしょう。
コネクティッド・プロダクツ戦略は、現場での修理を最小限に抑えることでサービスコストの削減を支援します。その具体的な方法のほんの一部として、リモート診断、予知保全、ファームウェアの更新、効率的なリソースの割り当てが挙げられます。このようなコネクティッド・プロダクツ戦略によってサービスコストを削減でき、収益向上につなげられます。
コネクティッド・プロダクツは、予知保全戦略の実施も支援します。収集したデータを分析できれば、今後発生する問題をあらかじめ予測し、メンテナンスのスケジュールを策定できます。メンテナンスに対するこのようなプロアクティブなアプローチは、ダウンタイムの削減にも役立ちます。
コネクティッド・プロダクツ戦略をサービスコストの削減に役立てる方法はほかにもあります。ファームウェアをリモートで更新してバグやセキュリティの脆弱性に対応しサービスコストの削減につなげ、製品のパフォーマンスを最適化して全体を効率化するという方法です。
製品の初回修理完了率 (FTFR) の向上も、コネクティッド・プロダクツ戦略のメリットの 1 つです。FTFR とは、技術者が初回訪問時に製品の問題を解決できる割合です。コネクティッド・プロダクツから価値あるリアルタイムデータを得られるため、技術者は問題を迅速に診断して解決できます。
また、メーカーがデータ分析を行って問題を詳細に診断し、解決方法を技術者に提供できます。このようなリアルタイムのサポートにより、FTFR が大幅に向上します。その結果、何度もサービス訪問を行わずに済むようになるため、メーカーと顧客の双方が時間と費用を節約できます。
コネクティッド・プロダクツ戦略では発生した問題を迅速かつ効率的に解決できるため、顧客満足度も向上します。また、製品の使用状況に関する貴重なデータを収集し、製品設計の強化や新製品の開発にも利用できます。
コネクティッド・プロダクツの例として、家庭用スマートサーモスタット、フィットネス用ウェアラブルデバイス、また Tesla 社製をはじめとする自動車などがあります。コネクティッド・プロダクツの最大のメリットのひとつは問題をリモートで診断できることであり、問題発生時には診断データが製品からメーカーに送信されるため、メーカーは問題を特定して修正プログラムを開発できます。
修理は製品を物理的に移動させずにリモートのみで実施できるため、メーカーと消費者の双方が時間と費用を節約できます。実際、リモート診断とリモート修理は双方にさまざまなメリットをもたらします。
消費者にとっては、購入した製品を修理場所まで時間をかけて運ぶ必要がないため、素早く簡単に修理してもらうことが可能です。メーカーにとっては、リモートで迅速に問題を特定して修理できるため、製品回収の必要がなくなります。
リアルタイムのデータ収集および分析、ユーザーエクスペリエンスの向上、遠隔監視および制御にいたるまで、コネクティッド・プロダクツ戦略の導入によって製品パフォーマンスを最適化できます。メーカーは接続性を活用して、より便利で効率的な製品を開発できるため、収益の向上につながります。
インターネット接続とテクノロジーを統合することで、製品のパフォーマンスと機能が強化されます。このアプローチにより、顧客が製品をどのように使用し、製品がどの程度のパフォーマンスを発揮しているかという貴重なデータを得られるようになり、製品の機能改良における意思決定の判断材料になります。
製品のパフォーマンスを最適化することで、メーカーにとっては、コネクティッド・プロダクツの継続的なモニタリングおよびメンテナンスをサブスクリプションサービスとして提供するなど、新たな収益源を生み出すことにもつながる可能性もあります。顧客は製品がモニタリングおよびメンテナンスされているという安心感を、メーカーは安定した収入源を確保できるという点で、双方にとってメリットがあります。
コネクティッド・プロダクツは、より適切にパーソナライズされた体験を顧客に提供できます。顧客の行動や好みに関するデータを収集することで、顧客ごとのニーズに合わせた製品を提案できます。顧客レベルでパーソナライズできるため、顧客満足度と顧客ロイヤルティが向上します。
コネクティッド・プロダクツの機能が向上すれば、顧客はその製品により価値を感じるようになり、日常での使用頻度も高まります。その一例がフィットネス用のコネクティッドデバイスです。心拍数のモニタリングや歩数の計測だけでなく、パーソナライズされた運動も提案できるため、多くのユーザーがこのデバイスを利用しています。
また、顧客が製品の使用状況データにアクセスできるようになると、顧客とブランドの関係が強化され、製品の利用頻度も高まります。人はよく使う製品や満足度の高い製品を家族や友人、同僚に勧めることが多いため、ここからビジネスチャンスやブランドロイヤルティの向上につながる可能性があります。
コネクティッド・プロダクツ戦略は従業員にも変革をもたらしますが、その最大の要因はデータです。今日、調査や研究、その他従来の情報源から収集された大量のデータは、製品そのものによって補われています。製品から直接得られるリアルタイムデータは、機器の所在地、将来のサービスニーズ、製品の保証やパフォーマンスに関するインサイトの宝庫です。
メーカーやサービス部門は、情報豊富なこのデータを分析することでサービスが必要な時期を予測し、問題の兆候を把握して、機器の故障を未然に防ぐことができます。このように、あらかじめ問題を発見できれば、コストのかかる予期せぬ修理を回避できます。これはサービスコストの削減だけでなく、顧客満足度の向上にも寄与します。コネクティッド・プロダクツ戦略の導入は、アセットの監視、サービスの最適化、予測分析を可能にし、最終的には顧客との信頼関係向上にもつながるのです。
効果的なコネクティッド・プロダクツ戦略を策定するには、まず小さな課題に集中して始めることが重要です。初めからすべての課題を解決したくなるかもしれませんが、あれこれと理想を並べるだけで進展しない可能性があります。あらゆる課題に目を向けるより、課題を絞って注力するほうが賢明です。特定の目標に集中することで、スムーズに価値を引き出せます。スマート・コネクティッド・プロダクツ (SCP) 戦略は企業とともに成長します。最も価値をもたらす SCP 戦略を学習して見極め、そこから発展させていくことをお勧めします。