IoT(モノのインターネット)とは?

11/1/2023

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IoT(モノのインターネット)とは?

IoT (Internet of Things) は、Wi-Fi など通信機能やセンサーを備えた機器(モノ)から得られるデータを、インターネットを経由して通信しながら処理したり活用したりする仕組みや概念を示します。IoT の読みは「アイ・オー・ティー」で、中央の「o」だけが小文字で表記されることが多いです。Internet of Things の日本語訳は、「モノのインターネット」となり、その概念の意味をかなり端的に示しています。

機器から送られるデータは、インターネットを介して離れた場所にあるコンピューター内に収集されます。逆に、コンピューターにあるデータを、インターネットを介して離れた場所にある機器へ送ります。

インターネットに接続できるものは、今や、パソコン (PC) やスマートフォン、タブレット端末に限りません。テレビやオーディオ、デジカメ、自動車、住宅、工場設備など、インターネットに接続できる何らかの手段を備えたモノであれば、何でも IoT 機器となり得ます。また電気信号、音声、画像、熱、光、圧力、加速度、磁気など、機器に備えたセンサーやカメラなどを用いて取得できるさまざまなデータを活用できます。

IoT を活用した機能としては、遠隔での制御・操作や状態監視(モニタリング)、機器や設備同士の相互連携などがあります。またデータを単に取得・収集をするだけではなく、それを分析したり可視化したりすることで、IoT の真価が発揮されます。

IoT の身近な活用例

IoT の活用例として、最近身近に見られるものとしては、スマートフォンを用いたスマートロックシステム、遠隔コントロールできる掃除ロボットや自動給餌器、ウェアラブル機器から取得するバイタルサイン(血圧、心拍、体温など)を利用した健康管理機器などがあります。

国内でも急速に普及する IoT システム


今日のインターネット通信の高速化、バードウェア性能の向上、クラウドサービスの高性能化といった技術の進化と、それらの普及に伴う低価格化などで、IoT システムの実用化が加速しています。研究機関や行政、企業によるPoC(実証実験)を経て、IoT システムが次々と実用化されてきており、生活家電にも IoT システムを搭載するモノも次々と登場してきました。

IoT は、経済産業省が推進する「コネクテッドインダストリーズ」や「ソサエティー5.0」においても重要な技術です。

調査会社の IDC は、2023 年 6 月に発表した市場調査で、国内 IoT 市場において2022 年のユーザー支出実績が 5 兆 8,177 億円だったと発表。さらに、2022 ~ 2027 年の年間平均成長率 (CAGR) の予測は 8.5% であり、2027 年には 8 兆 7,461 億円に達するだろうと予測しています。

過去の言葉となった M2M とユビキタス

IoT という言葉は、1999 年に、RFID (Radio Frequency Identification) の研究で有名な英国の技術者であるケビン・アシュトン氏が初めて言葉にしたとされます。ちょうど、インターネットが一般家庭に急速に広まってきていた頃です。それ以前は、IoT に近しい概念として「機器間通信」の意味である M2M(Machine to Machine、マシーンツーマシーン)という言葉がよく使われていました。

また、RFID と関連して、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも、ネットワークにつながって、さまざまなサービスを提供する」といった、今でいう IoT に似た意味合いの概念として「ユビキタス (Ubiquitous) 」という言葉が、2004 ~ 2006 年くらいをピークに、IT エンジニアの間で頻繁に使われましたが、いつの間にかあまり聞かなくなってしまいました。

市場での経験値が積み上がり、技術もますます進化していくだろう将来、現時点では想像もつかないような IoT システムの数々が生み出されて普及し、人々の生活も今と大きく変わっているのでしょう。その頃には、「IoT」という言葉も使われなくなっているのかも知れません。


産業用 IoT との違い

IoT の中でも産業用途の IoT は、「産業用 IoT」または「インダストリアル IoT (IIoT : Industrial Internet of Things)」と呼ばれます。産業用 IoT は、製造や物流、交通・輸送、エネルギー、小売りやサービス、農業、水産など、さまざまな産業での業務で活用されます。産業用 IoT システムおよび機器においては、「ハイレベルなデータセキュリティーの確保」「通信速度・品質の向上」「社会インフラや業務を停止させないための稼働安定性の実現」といった、一般の IoT 用途と比較するとさらに厳しい要件を満たす必要があります。


IoT 導入により得られるメリット

IoT を導入することによるメリットは、社会生活や業務における利便性を高める、あるいは障壁を取り除きつつ、データ分析や改善が行えることで、効率化や省人化、コストダウンといった効果が望めることです。

IoT を活用すると、まず情報を得るための「物理的な距離」という制約がなくなります。離れた場所の状況を把握したり、そこからデータを得たりといったことが可能になります。

さらに取得するデータが蓄積されていくほど、データベースとしての価値が高まっていきます。蓄積されたデータは AI(人工知能)に学習させて、さまざまな分析や予測に活用できます。

モノから取得したデータを利用するだけではなく、収集したデータの分析から得られた結果に基づいてモノ側の動作や運用を改善・改良することも可能です。

このような IoT による一連の仕組みは、小児や高齢者の見守り監視、小売店舗での在庫管理や販売計画、工場の生産ラインでの稼働監視や予知・予防保全、輸送機器における自動運転など、多岐にわたる用途で活用でき、かつ上記で述べたメリットをもたらします。

国内においてかなり深刻な状況となりつつある少子高齢化や人口減少に伴う働き手不足、医療・介護人材不足といった社会問題へ対処手段の 1 つとしても IoT が有効です。


IoT を導入する際の課題

IoT を導入する際の課題は、いくつか代表的なことが挙げられます。

セキュリティー対策

まずセキュリティー関連のリスクへの対応があります。IoT はインターネットに接続してデータをやり取りするため、ハッキングやマルウェア攻撃(サイバー攻撃)の恐れがあります。セキュリティー対策が万全でなければ、個人情報の漏洩など個人の生活や企業活動において深刻なアクシデントにつながってしまうこともあり得ます。

よって、システムや機器の設計や構築の段階から、多角的なセキュリティー対策を徹底的に行う必要があります。セキュリティーポリシーの策定・周知、運用体制整備と合わせ、認証・認可機能の実装やログ保存、データの暗号化、異常検知といった機能実装など機器やシステム自身での技術的対策などが求められます。総務省や IPA(独立行政情報処理推進機構)が、IoT セキュリティーに関してガイドラインを公開していますので、詳しくはそちらをご確認ください。

なお、2018 年に「情報通信研究機構法」の一部改正が実施されました。総務省と情報通信研究機構 (NICT) では、インターネット・サービス・プロバイダー (ISP) と連携し、2019 年 2 月から、IoT 利用者に対するセキュリティー関連の注意喚起「NOTICE (National Operation Towards IoT Clean Environment)」を実施しています。2019 年からは、総務省、NICT、ICT-ISAC、ISP 各社が連携して、既にマルウェアに感染している IoT 機器の利用者に対しても、ISP が注意喚起を行うようになっています。

流通データ量の増大によるネットワーク負荷への対処

IoT システムでデータを取得する端末機器が増えていけば、データの流通量も増大します。そこで扱われるデータに、映像など重いグラフィックスや音声などが多くを占めている場合、あるいは AI のディープラーニングが伴う場合などで、CPU や GPU、ネットワークにかかる負荷が大きくなります。

そこで、データを発信する機器側にデータ処理の機能を持たせることで、データ送信時やサーバーでの処理の負荷を分散する(エッジコンピューティング)などの対応をすることがあります。


PTC が提供する IoT ソリューション

PTC が提供するIoTソリューションには、産業向け IoT システム「ThingWorx(シングワークス)」があります。PTC は 2013 年に ThingWorx 社を買収。以後、ThingWorx が PTC ファミリーに加わりました。データを取得する機器や設備、ERP や PLM など業務用ソフトウェア、AR(拡張現実)システムなど、IoT システムを構成するさまざまなモノやソフトウェアをつなぐプラットフォームとなり、モニタリング、データ収集・可視化・分析、制御などを行います。

設備や機器のさまざまなプロトコルに対応する「ThingWorx Kepware Server」により、新旧を問わない多くの種類の設備や機器と簡単に接続でき、かつシステム構築も容易かつ短期間で行えます。また同サーバーに備えたプロトコル「AlwaysOn」では、ユーザーが取り扱うデータを暗号化し、IoT システムをネットワーク攻撃から確実に守ります。

また、IoT システムの運用に役立つ豊富な機能も備えています。1 つのプラットフォームで、機器の接続からデータ収集、分析、可視化、データ活用と、IoT システム活用に必要な処理を全て行えます。


PTC が提供する IoT ソリューションの導入事例

PTC が提供する IoT ソリューションは、自動車、産業機械、医薬品などさまざまな産業の現場で活用されています。

株式会社クボタ

産業機械メーカーのクボタは、設備・機械、車両情報などを GPS・IoT で遠隔管理できるシステム「クボタトラッキングシステム」の構築に PTC の IoT プラットフォーム ThingWorx を採用しています。建設機械の部品交換やメンテナンスといったアフターサービスのアプローチを積極的に推進する仕組みの短期構築と付加価値提供を実現しました。
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武田薬品工業株式会社

武田薬品工業は、迅速な状況把握や意思決定の高速化のために同社が取り組むデータドリブン(データ分析に基づいた意思決定やアクションの実行)マニュファクチャリングの一環で、同社の医薬品生産現場において ThingWorx や AR コンテンツを活用しています。
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ファイザー・ファーマ株式会社

ファイザー・ファーマは、ThingWorx により PLC からデータをリアルタイム収集し、必要な人が必要なデータに容易にアクセスできる環境を整えて、データを活用した製造工程の品質改善および安定化に取り組んでいます。
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そのほかの事例

ThingWorx は、この他にも石油化学、建材、鉄鋼など幅広い業界で成功事例があります。ThingWorx など PTC 製品の事例は、こちら からご覧いただけます。


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