設計変更管理プロセスの概要

編集注記: このブログの初版が公開されたのは 2023 年 5 月です。2024 年 2 月に新たな情報を加筆しました。

設計変更管理とは？

製造における設計変更管理 (ECM) の目的は、複雑なプロセスをできる限りシンプルにして、設計変更の通知やリクエストに迅速、効果的、かつ効率的に対応できるようにすることです。規制要件、変化する市場の需要、サプライチェーンの推移、競合会社の決定事項などに応じて、製品の設計と BOM（部品表）に調整を加えることが必要になります。

設計変更管理が設計プロセスに及ぼす影響

変更管理プロセスを適切に実施することで、設計エンジニアリングプロセスのすべての側面を継続的に調整できます。新しい要件が特定され、設計のコンテキスト全体が変化する場合、その変更自体は小さくても、新しい要件に合わせて常に設計を適応させなければなりません。その後、設計を適応させたことを設計部門全体で把握し、必要な処理として受け入れる必要があります。

設計変更管理が下流工程の関係者に及ぼす影響

さらに、あらゆる組立製造業者、特に複雑で構成可能な製品を製造するメーカーは、設計部門内だけでなく、企業全体で各変更がもたらす影響に対応する必要があります。設計変更管理の影響を受けるプロセスは相互に大きく依存し、同時に実行されるため、すべての関係者が、正確な最新情報を適切なタイミングで確実に入手できるようにしなければなりません。設計変更をリアルタイムで企業全体に正確に伝達する唯一の方法は、堅牢なデジタルスレッドを使用することです。

設計変更管理、設計変更リクエスト、設計変更通知の関係

設計変更管理とは、広範なプロセスと特定の領域に関するものです。変更を開始し、文書化するために、変更リクエストと変更通知という 2 つのプロセス入力が使用されます。ほとんどの場合、これらは連続して発生し、リクエストが承認されると通知が開始されます。

設計変更リクエストは、既存の設計の機能強化を行う場合、または問題レポートに対応する場合に作成されます。このリクエストには、改良の実現に必要な変更や、特定された問題を解決するための変更が詳細に記述されています。また、ビジネス部門や設計部門の意思決定者が、提案された変更を取り入れるか、または却下するかを判断するために必要な情報も提供されます。

設計変更通知は、変更リクエストが承認された時点で発行され、変更を実装するために必要な作業を許可するものです。システム管理者が設定した権限に応じて、1 つ以上の変更リクエストに対応できる通知もあれば、変更リクエストと無関係に発行される通知もあります。

設計変更プロセスの段階

どのように開始された場合も、設計変更プロセスは一般に、変更リクエストからリクエストの実行まで続く一連の段階またはチェックポイントで構成されています。

1.問題（または機会）を特定し、記述する

問題に最初に気付いた時点で、その問題の特徴的な現象を記録します。これらの問題を特定できるのは、従業員、顧客、エンドユーザーなどのあらゆる関係者です（同様に、技術的な問題ではなく、機能強化のための機会があれば、将来的な検討事項として文書化されることがあります）。

2.正式な変更を検討する

次の段階では、適切な担当者が記録された現象を評価し、その現象を詳しく調査するか、機能改良を模索するかを正式に決定します。

3.問題の原因を特定する

文書化された現象を調査し、適切な分析を実施して、問題の根本原因を特定します。この作業には、関連する設計変更、部品、文書の特定が含まれることがあります。

4.解決策を提案する

問題の根本原因を特定できたら、その問題を修正するための一連の作業を提案します。前の段階と同様、解決策を準備するチームまたは個人が、変更を正確に反映するために必要な関連部品およびドキュメントを特定できます。

5.解決策を実行する

変更が承認されたら、最終段階で最適な解決策を完成させて実行します。実行の一環として、変更プロセスのユーザーが必要な部品やドキュメントのリビジョンを特定します。これは、古いもの（関連する変更を反映する必要がある既存の要素）の場合も、新しいもの（変更プロセスに対応するために新しく作成されたもの）の場合もあります。この段階で、必要に応じて解決策を生産プロセスに組み込みます。

効率的な ECM プロセスの構築

前述したように、効果的な設計変更管理により、開発プロセスの効率化と全体的な生産性向上が可能になります。その一方、プロセスの最適化が不十分であったり部分的であったりした場合、さまざまな障害が生まれ、企業に最大限の価値をもたらす製品の能力が損なわれる可能性があります。効率的な ECM プロセスを支える 3 本柱は、ワークフロー、トレーサビリティ、アクセスです。

通知の開始や変更リクエストに関連するワークフローは、明確でわかりやすく、過度に複雑でないことが条件となります。承認手続きでは、適切なレベルの監視と関係者からの情報提供が必要であり、厳密性を損なうことなく、迅速な解決を目指さなければなりません。

トレーサビリティは決定的な役割を果たします。新しい要件や変更された要件すべての起源、詳細、根拠が、すべての関係者にとって明瞭でなければなりません。これらの関係者にとって、この背景情報は、要件が及ぼす影響の大きさやその焦点を理解するための重要なコンテキストとなります。このトレーサビリティの重要性を考慮すると、このプロセス自体が状況に応じて詳細な追跡に対応できる必要があります。

処理中のすべての設計変更のステータスとドキュメントに簡単かつ安全にアクセスできるため、さまざまな関係者がそれぞれの役割や職務に応じてプロセスを処理し、適切に応答できます。アクセスして操作するデータは、リアルタイムで正確なものでなければなりません。そうでない場合、古い情報に基づいて対応することになり、コスト増につながる作業ミスが発生して全体に影響が広がる可能性があります。

設計変更管理ワークフローの概要

ここで、一般的な ECM プロセスの段階、構成要素、それぞれの関係をわかりやすく図で示します。設計変更指示ワークフローには、変更通知と変更タスクが含まれています。一般的に、このワークフローは、変更リクエストの調査、提案の提出、分析作業が完了した段階でエンジニアによって開始されます。

分析によって、問題の詳細な説明と、問題の原因を（変更調査で）判断した結果、または（変更解決案で特定した）問題の修正方法を指示した結果が生成されます。また、問題の原因となる可能性のある、または提案された解決策に基づいて変更する必要がある関連事項も分析によって特定できます。

PLM を使用した設計変更管理

製品ライフサイクル管理 (PLM) の原則、プロセス、ツールを ECM に適用することが、ここで取り上げている ECM 固有の目標を実現するための効果的な戦略となります。しかし、ECM を主に PLM を介して企業全体で実現されるデジタルスレッドの重要な構成要素とすることで、このようなアプローチの価値が設計部門を超えた幅広い領域にもたらされます。PLM と ECM を連携させれば、特定の製品と企業全体の成功を左右する、次のような機能面での重要な成果を得られます。  

• ビジネス上の必要性に合わせて拡張可能な、簡単に構成できる変更プロセス
• 適切なタスクを適切なユーザーに割り当てる柔軟なワークフロー
• 変更への効率的な対応
• さまざまな役割に固有の必要性を満たす、わかりやすいレビュー
• ビジネス規則を確実に遵守するための進化した変更検証
• 一括更新、エフェクティビティの設定、後継のプランニング
• 詳細かつ正確で迅速な変更結果のレポート

これらの PLM がもたらす成果が一体となり、生産性、可視性、ガバナンス、全体的な企業価値に関するビジネスレベルのメリットをもたらします。 

• 企業全体で変更プロセスに簡単に関与できるため、生産性が向上します。
• 可視性が向上するため、チームや担当者の関係性にかかわらず、変更が計画に及ぼす影響を全員が把握および評価して、対応できるようになります。
• ビジネス全体での意思決定のスピードと質が向上するため、ガバナンスが強化されます。
• より優れた変更分析を介して企業価値を直接実現でき、結果的にスクラップと手戻りが減少します。

Windchill での変更管理のデモを紹介するビデオをご覧ください。

つまり、設計変更管理作業は、効率を大きく向上させる機会をもたらしますが、一方で、コストのかかる設計の障害を生み出す可能性もあります。成功の鍵は俊敏性にあります。あらゆる関係者から提供される情報を取り入れつつ、変更の評価、実装、運用を迅速かつ正確に実施することが重要です。

製品ライフサイクル管理 (PLM) に統合された機能として ECM を戦略的に実行することでこの俊敏性が実現され、設計開発サイクル内で、また企業全体で改良を行い、利益を生み出すことが可能になります。