デジタルスレッド (Digital Thread) とは?

10/17/2023

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デジタルスレッド (Digital Thread) とは?

設計・製造の分野で注目が集まる「デジタルスレッド (Digital Thread)」とは、「デジタルの糸」という意味で、デジタルのデータが糸でつながり合っているような状態を示す概念です。つまり、さまざまな情報が追跡しやすくつながり合っている状態を表しています。例えば、あるキーワードを基にして、必要な情報を次々と引き出すことができるような環境のことです。「デジタルツイン」(後述)とも大いに関連する言葉です。

PLM では、設計開発、部品構成、製造、品質管理、出荷、営業、サポートなど、「製品を作って売る」までに必要な情報を一元管理して、担当者レベルから管理者まで、最新かつ最適なデータに、いつでも素早くアクセスしやすくします。

なお、カタカナでの字面が似ている「デジタルスレット」は「Digital Threat」で、「デジタルの脅威」(マルウェアなどをさす場合が多い)といった意味で、「デジタルスレッド」とは全く異なります。


デジタルツインとは

デジタルツイン (Digital Twin) とは、「デジタルの双子」という意味で、現実世界の実物のデータとコンピューターの世界のデータが相互に行き来しているさまを「双子」で比喩して示している概念です。現実とコンピューターの間をどのようにつなぐのかというと、インターネットを利用します。つまり IoT(モノのインターネット)を活用した技術の一種という位置づけとなります。

製造分野においては、デジタルツインを用いた例として、以下のような処理を行います。
  1. 工作機械などの実機に設置されたセンサーから得られるデータを、インターネットを経由してクラウド上のサーバーに収集する。
  2. 上記のクラウドサーバーからデータを取得して、コンピューター上のプログラムや 3D データを用いてシミュレーションする。
  3. シミュレーションした結果を、さらにインターネットを経由して実機へフィードバックする。
設計・製造でのデジタルツインでは、機械、電子/電気、ソフトウェアと分野にかかわらず必要なデータを取り扱います。またシミュレーションにおいては、AI(人工知能)やディープラーニングを組み合わせることもあります。

実機の稼働データと、シミュレーションによる予測データを行き来させることで、日々、装置や設備を稼働させながら、よりよいものに改善・改良することが可能です。

なお、デジタルツインは 3 次元データ(3D データ)を伴う仕組みとしての事例が多く見られますが、必ずしも 3D データを伴っているわけではありません。しかしながら、誰もが直感的に情報を把握できる 3D データとの組み合わせは有効であるといえます。さらに、3D データを用いていれば、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を組み合わせることも可能です。

デジタルツインにおいて、現実世界のことは、よく「フィジカル (Physical) 空間」と表現されます。Physical は「物質の」「身体の」「物理的な」といった意味の形容詞です。一方、コンピューターの世界は「サイバー (Cyber) 空間」といわれます。アニメやマンガでもよく出てくる単語ですが、「コンピューターネットワークの」という意味です。


デジタルスレッドとデジタルツインの関係性

デジタルスレッドは、デジタルツインを構成するために必要な要素です。デジタルツインでは、デジタルスレッドで管理された実機関連のデータを取得し、そのデータをコンピューター側の 3D モデルやシミュレーションに反映することが可能です。

例えば、デジタル側の 3D アセンブリ(組み立てモデル)から部品を選択すると、その部品にかかわる設計や生産、販売、保守といったあらゆるフェーズのデータを次々と取得できるようになります。反対に、デジタルスレッド側の部品表 (BOM) に記載された部品から、デジタルツイン内の 3D アセンブリの組付け部位や部品そのものを特定するといったことが行えます。


デジタルスレッドの実現によって得られるメリット

製造の現場では、過去の設計や保守などの情報を探すために多大な時間を割かれて悩んでいるという声がよく聞こえてきます。「見つからない」という最悪の事態もあります。職場のデータ管理システムがデジタルスレッドになっていたら、そのような煩わしさがなく、貴重な工数を浪費せずに済みます。また、設計や生産技術、品質保証……と、いろいろな部署に内線をかけて尋ねる、情報にかかわっている担当者を探して回るといった機会も減らすことができます。

デジタルツインと組み合わせた例としては、保守の現場で、PC やタブレット端末に表示された製品の 3D アセンブリで修理したい部位を確認しつつ、保守マニュアルや過去の保守情報、生産時の情報もすぐに探しだすことが可能になるといったことがあります。それが図面や部品表 (BOM) からだけではなく、3D モデルからでも直感的に探せることは、実機と日々接する生産や保守の現場の人たちにとって特に非常にありがたいことです。

こうした仕組みの導入は、ベテラン世代の引退に伴う技術継承、技術者育成、人手不足の現場での生産性向上など、製造業を悩ませているあらゆる問題の解決や業務改善につながります。


デジタルスレッドを実現するための PTC ソリューション

PTC の PLM システムである Windchill (ウィンチル)においても、デジタルスレッドの概念が肝になっています。Windchill は、製品のあらゆる情報をさまざまなシステムに分散させることなく、製品構成 (BOM) で一元管理します。デジタルスレッドの仕組みにより、製品の設計製造にかかわる担当や管理者が、「自分が、今必要な情報」に素早くアクセスできます。

Windchill は、CAD のデータフォーマットにとらわれず、PTC 製品以外の CAD データも取り扱える「マルチ CAD」管理が可能で、1 つの BOM システムで統括できます。また「ノンプログラミング」のインターフェースで、役割に応じた画面や他システムとの連携の仕組みを容易に開発することが可能です。

Windchill+」(ウィンチルプラス)は、SaaS 版の Windchill です。Web ベース(クラウド)でアプリケーションを扱える上、従来の Windchill と同等の機能やモジュールを提供しています。導入の際にはサーバー環境の整備やソフトウェアのインストールといった手間がかからず、かつ機能のアップグレードも Windowsア ップデートのように随時行われます。

Windchill は 1998 年のリリース以来 20 年以上かけて、世界 2万7,000 社あまりの実績を積み上げてきました。さらにそこから得たユーザーの声を反映し、PLM のベストプラクティス(成功事例)を標準機能として搭載。バージョンアップのたびに使いやすく成長してきました。今後の Windchill の進化にもご期待ください。


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