BOM(部品表)管理とは?基礎知識と種類、システム導入メリットを解説

12/7/2023

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BOM(部品表)とは

BOM とは、「Bill Of Materials」の略であり、直訳すれば「資材の明細表」といった意味なのですが、「部品構成表」や「部品表」と訳されます。BOM で管理される情報の例としては部品番号、部品名称、個数、材料(原材料)などがあります。

国内製造業の設計・製造現場においては、「BOM」というと、コンピューターの中にある部品管理表やデータベース(すなわち、BOM システム)やデジタルデータを示す場合が比較的多く、装置や製品で使用する機械部品や資材を昔ながらの紙や Excel でまとめた表を「部品表」とそのまま日本語で表している場合もあります。また BOM システムでは、「PN(Parts Number:品目情報)」と「PS(Part Structure:PN の親子関係、構成情報)」などで管理されます。


BOM(部品表)の目的

部品表を使用する目的は、以下のようにさまざまです。
  • 設計を進める中での情報整理、およびコスト計算など
  • 購入部品を調達する際の情報整理
  • 部品加工や組み立ての工場に、それぞれ作業の依頼を出す際の情報整理
  • 生産ラインの計画の際の情報整理
  • 工場で製造に携わる担当者が参照する
  • 保守エンジニアが保守作業時に参照する
  • 取扱説明書に記載もしくは付属して消費者に提供する
目的に応じて、それぞれの組織や部門が、内容や項目が少しずつ異なる部品表を用意します。同じ設計部門で扱う部品表でも、例えば量産製品であれば、設計中(試作中)用と量産準備用、本番の生産用と分かれています。

BOM(部品表)のデータ構造別の種類

BOM のデータ構造の例としては、以下の 2 つがあります。

サマリー型(サマリ型)

部品番号、部品名称、個数、材料を一覧にして並べていく形式です。設計製造現場における昔ながらの部品表のまとめ方ともいえます。設計過程でのコスト計算、部品調達時の参照データなどに向いています。

ストラクチャー型(ストラクチャ型)

製品内の構造やユニット構成を可視化するため、表の中で線を結んで部品の階層を作り、ツリーでユニット構成を表現していく形式です。製品の組み立て工程が分かりやすくなるため、生産リードタイムや作業工数算出などに向いています。


BOM(部品表)の用途別の種類

BOM(部品表)には、EBOM(設計部品表)MBOM(製造部品表)、購買 BOM、SBOM(サービス部品表)など、目的に応じたものがあります。BOM の機能を提供するソフトウェアでは、1 種類の BOM に特化したもの、1 つのデータベースからさまざまな BOM が生成できるものなどがあります。

EBOM(設計部品表)

EBOM は、「Engineering BOM」の略です。エンジニアリング、つまり設計開発で主に運用される BOM です。「設計 BOM」と呼ぶこともあります。CAD のユーザーにとっては最もなじみがある BOM といえます。多くの CAD では、ソフトウェア内で製図した図面に記載した表題欄にある部品番号や名称、個数などの情報を抽出して EBOM を生成する機能を提供しています。BOM システムとして開発されたソフトウェアの場合は、データベースにある図面データと連携して情報を抽出し EBOM を生成します。EBOM の内容は設計フェーズにより内容が変化していきます。開発終盤の EBOM は、後述する MBOM を構成するための元データにもなります。

MBOM(製造部品表)

MBOM は、「Manufacturing BOM」の略です。こちらは製造部門で主に運用される BOM です。「製造 BOM」と呼ぶこともあります。MBOM には、部品情報と合わせ、それに関連する加工方法や組み立て方法などの情報が盛り込まれます。部品加工や工程設計、生産計画で活用されます。

EBOM で定めた構成を基に MBOM が生成される場合が多くありますが、容易にできることではありません。業務内容の違いから「設計では必要だが、製造では必要ない情報」やその逆も当然あるので、両者では部品番号(品目コード)や属性などの管理の仕方が大きく異なるためです。連携させる際には、社内で連携前提の品目ルールや運用ルールを定めた上でデータベースやプログラムを設計するなど、それなりに手間やコストがかかります。過去のルールで長年管理していた設計や製造の情報はどのようにするのかを考えると、その検討は非常に複雑です。ちなみに品目コードの管理にまつわる問題は、国内の製造業 DX におけるよくある悩みです。

購買 BOM

購買 BOMは、その名の通り、企業の購買部門(調達部門)向けの BOM のことです。購買 BOM では部品の仕入れ先、発注価格、数量などを管理します。BOM のデータを利用し、製品製造に必要な部品や資材の見積もりや発注などの業務を行います。

SBOM(サービス部品表)

サービス BOM (Service BOM) は、アフターサービス(保守)業務向けの BOM です。「保守 BOM」と呼ぶこともあります。顧客へ製品を届けた後のメンテナンス業務で利用します。顧客ごとのメンテナンス内容、保守部品発注などの履歴や部品交換時期などを管理します。


BOM(部品表)管理システムとは

BOM(部品表)管理システムとは、製品を構成する部品情報を管理する情報システム全般を指します。製品の設計製造にかかわる業務ごとに特化したシステムや、部門をまたいで管理できる統合システムがあります。

BOM システムも、ローエンドからハイエンドまで、ソフトウェアごとで規模や技術レベル、機能の内容が異なります。製造業で CAD が普及する現在は、PLM や PDM、CAD の機能の一部として提供されることもあります。製造企業で内製した BOM システムもよく見られます。


BOM(部品表)管理システムの機能

BOM(部品表)管理システムでは、BOM の生成およびデータ管理の機能を提供します。また、設計・製造の各部門の業務を効率化するためのさまざまな機能も備えています。

BOM(部品表)管理機能

BOM は CAD で製図した図面データと連携し管理されることが多くあります。そこに、部品の 3D データを紐づける場合もあります。

BOM(部品表)変換機能

BOM システムの中には、用途別の BOM を自動生成できる機能を備えているものもあります。

在庫管理機能

BOM システムを活用して、設計・製造の各工程での部品在庫の可視化が行えます。

製品管理機能

製品管理機能として、製品ライフサイクル全体にわたり製品の部品情報を統合管理し、製品の設計、開発、製造、および保守に関連する情報の探索や活用が容易に行えるようにしている BOM システムもあります。


BOM(部品表)管理システム導入のメリット

それぞれの部署で独自かつアナログな手法(あらかじめ用意した表に 1 つ 1 つ手書きする、帳票に入力するなど)で部品表を用意していると、入力ミスや入力漏れが起こり得ます。また設計変更や生産条件変更、部品調達状況による変更により、それぞれの部署が用意している部品表で正確に変更履歴が捕捉しきれなくなってトラブルが起こり得ることも容易に想像がつきます。特に、関連部署や企業が多くなる、部品構成が複雑で点数も非常に多い、あるいは派生機種が多岐にわたる、一品一葉の製品などといった場合には、よりトラブルが発生しやすくなります。

そこで活躍するのが、コンピューター上で部品や資材の情報を管理する BOM システムというわけです。BOM システムを適切に導入することで、部品管理の効率化、ヒューマンエラーの回避などの効果が望めます。

部品管理の効率化

BOM システムにより設計・製造や部品の情報を一元化することで、部品データの正確性や一貫性を確保できます。設計・製造の各部門が、必要な時に、必要な部品データを容易に検索できる仕組みの提供も可能です。データ検索や見積もり、各部門への問い合わせの手間などを大幅に削減できるので、在庫管理も最適化でき、原価削減へつなげることも可能です。

ヒューマンエラーの回避

BOM システムの導入により、部品データの入力や変更、履歴管理といった処理を自動化できるため、従来のアナログかつ煩雑な部品管理により起こっていたヒューマンエラーを回避できます。また誤って過去のデータを参照してしまいミスをする、誤った情報を上書きしてしまうなども防げます。

PTC の BOM(部品表)管理システム

PTC の「Windchill」や「Windchill+(SaaS 版)」では、デジタルスレッドによる PLM システムの中でBOM機能を提供しています。メカ部品、ソフトウェアプログラム、電子部品、設計ドキュメントなど、あらゆる設計・製造情報を EBOM に統合できるため、いつでも必要な情報を引き出すことが可能です。EBOM から、MBOM やサービス BOM を自動で生成することも可能です。BOM の管理情報を 3D データで可視化できるのも PLM ならではの特色です。Windchill の BOM システムにより、営業、設計、製造、保守と製品ライフサイクルに関連する部門が一丸となって、より良い製品やサービスを提供することが可能です。


まとめ

今後、働き手の不足が加速するであろう国内製造業が市場で長く生き残るためには、従来の現場の勤勉さや高い技術力だけでは課題克服は非常に厳しいものであり、DX への取り組みが不可欠になっています。その中核になるのが、BOM システムや PLM を利用した部品情報の一元管理やデータ活用です。BOM システムは IT の進化とともに、今日の複雑化した設計・製造の事情に合わせて使いやすく進化し続けています。PLM や BOM システムに、ARIoT をかけ合わせれば、製品設計・製造の現場は、より精力的で意欲的な場に変わっていくことでしょう。PTC 製品のユーザー事例や、今後の機能の進化にもぜひご注目ください。


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