品質管理とは?品質保証との違いや PLM との統合によるメリットを解説

11/30/2023

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品質管理とは

品質管理 とは、製品やサービスを一定の品質で顧客の下に届けるための取り組みのことです。品質管理は、「品質 (Quality):高品質で」「コスト (Cost):最適な(あるいは安価な)価格で」「納期 (Delivery):なるべく早く」という 3 つの指標 (QCD) のバランスを取りながら行われます。競合の多い市場において競争力を確保する上では、いずれの指標も妥協が許されず、品質管理部門にかかるプレッシャーは非常に大きいものです。


品質管理と品質保証の違い

品質管理と品質保証は、「製品の品質向上」というミッションは同じであっても、業務内容やかかわるプロセスが異なることが多くあります。

品質管理 (Quality Control) は「QC」と略され、製品を製造し市場に送り出すまでの品質確保や向上のための検査や改善などにかかわります。

一方、品質保証 (Quality Assurance) は「QA」と略されます。「Assurance」は「保証」と訳されます。製品設計から製造、市場に出た際のクレーム対応や対策、監査までかかわりながら、製品やサービスの品質向上を担保します。品質保証は、製品ライフサイクル全体においてシステマチックに製品品質を高めていく概念であり、欧州製造業が発端です。日本は欧州に倣って品質保証の概念を取り入れたという歴史があります。

日本製造業においては、企業によって上記ミッションごとに品質保証と品質管理で担当者や部署が分かれていたり、同一の担当者や部署で行われたりと、企業規模や考え方によりさまざまです。

国際標準化機構 (ISO) による規格「ISO 9000 シリーズ」においては、「品質マネジメント (Quality Management : QM)」という言葉があります。マネジメント (Management) という英語が、「管理」という日本語訳が当てられることもありややこしいのですが、QM と QC は同義ではありません。QM には、上記で述べた QC と QA の考え方が包括されます。


品質管理の業務内容

品質管理は、製品品質を確保するため、製品の製造ラインでの手順改善に取り組んだり、市場に送り出す前の製品を検査したりといった業務を行います。また製造現場の作業手順作成、作業担当者の教育も業務範囲です。また品質管理の業務は、「工程管理」「品質保証」「品質改善」に大別できます。

工程管理

工程管理では、生産計画に基づいて製品の生産における進捗を管理しながら、要求される品質要件を満たした製品を、決められた納期内で一定した個数を確保することを目指します。

品質検証

品質検証(品質検査)では、顧客に出荷する前の完成した製品が、要求されている品質要件を満たしているかどうかの検査を行います。品質検証には、完成品の全数が対象となる全数検査と、ロットごとの一部を抜き出して検査を実施する抜取検査があります。また完成品の検査だけではなく、製品を生産する工程や使用している素材・原料などが品質にどのような影響を及ぼすかも検証します。

品質改善

品質改善では、生産過程で発生した不良品や不具合に関して原因追及や対策を実施します。その中で、安全分析手法の「FTA (Fault Tree Analysis)」を使用することもあります。不良品や不具合の発生を未然に防ぐために、安全分析手法の「FMEA (Failure Mode and Effect Analysis)」を実施します。


品質管理の手法

品質管理の手法の代表的なものには「PDCA サイクル」「SQC」「QC7 つ道具」があります。

PDCA サイクル

PDCA サイクルは、下記の4つの頭文字になぞらえられた品質管理手法です。
  • Plan=計画:品質改善や向上のための目標と計画を立てる。
  • Do=実行:計画に基づいて実行する。
  • Check=評価:実行について振り返り、結果について評価を行う。
  • Action=改善:評価に基づいて、計画の改善を実施する。
上記 4 つのプロセスを継続的に循環させることで、品質改善や向上を目指します。なお PDCA サイクルの考え方は、製造業の品質管理以外にも適用されています。

SQC

統計的品質管理 (Statistical Quality Control : SQC) とは、統計的な手法を用いて品質管理や工程改善を推進することを示します。少数のサンプル数や限定的なデータであっても、過去データの統計を利用することで高精度な計算を行えます。全数の検証が現実的ではない場合の品質分析や、品質問題の早期発見に役立ちます。

QC7 つ道具とは

QC7 つ道具には、下記があります。

グラフ

ここでいう「グラフ」は、散布図やパレート図(後述)を除く、棒グラフや折れ線グラフ、円グラフなどの一般的なグラフのことです。

品質管理とは?品質保証との違いや PLM との統合によるメリットを解説 グラフ 1

チェックシート

点検やデータ収集時などに使用するチェックシートで、必要な作業やデータの抜け漏れを防いでいきます。

パレート図

値が数値の大きな順にプロットされた棒グラフとその累積構成比を表す折れ線グラフを組み合わせた複合グラフです。

品質管理とは?品質保証との違いや PLM との統合によるメリットを解説 グラフ 2

ヒストグラム

データを階級(区間)に分けて、それぞれの度数(データ数)を示すグラフの一種です。横軸がデータの階級、縦軸がそれぞれの階級の度数で表します。

特性要因図

結果(特性)と要因の関係を系統的に線で結びながら、分かりやすく整理して示した図のことです。要因のうち、結果に影響を及ぼすものが原因です。図の見かけから「魚の骨図」と呼ばれることもあります。

散布図

縦軸と横軸に量や大きさについて別項目を設けて、対応する個所に点を打ってデータ分布を示す図です。

管理図

品質や工程の状態のばらつきを折れ線で示した図です。目標値を示す中心線 (CL)、その上下に上方管理限界線 (UCL) と下方管理限界線 (LCL) を配置して公差を示します。それぞれの限界線を超える場合、異常値となります。


品質管理の手法

品質管理を行う上で重要な手法や考え方としては、「IE」「5S」「4M」「TQC」「TQM」などが挙げられます。

IE

IE(アイ・イー、Industrial Engineering)とは、品質管理手法の一種です。和訳では「産業工学」あるいは「生産工学」となり、製造工程や作業を客観的かつ定量的に分析します。IE による分析では、以下のような工程内の「3 ム」に着目し、工程をいかに最適化して付加価値を生むかを検討します。
  • ムリ:能力に対する目標が高すぎる。やり過ぎの作業。
  • ムラ:一定期間の中で能力や作業量などがばらついている。
  • ムダ:能力に対する目標が低すぎる。高い付加価値が生めない作業。
工程の分析では、加工作業や組み立て、工程内の物流(運搬)、検査を記号と図表で可視化して、工程の改善点を洗い出していきます。また工程における作業者のスケジュールや配置、作業手順などの分析なども実施します。

5S

5S(ゴ・エス)とは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字(S)を表したもので、これらの考え方に基づく行動を日々徹底していくことで職場を改善していきます。こうした 5S に基づく活動が安全性や効率の向上、従業員のモラル醸成などへつながり、ひいては製品の品質向上へとつながります。

4M

品質管理における 4M(ヨン・エム)は、「Man(人、作業者)」「Machine(機械、設備)」「Material(材料)」「Method(方法、手順)」の頭文字 (M) を表し、製品の品質を決定づける要素としています。この 4M を書き出して可視化し、生産性や安全性などに関して分析します。4M 分析では、担当変更や設備の入れ替えなどが工程にどのように影響するか検討し、考えられる問題への対策を講じるなど行います。

TQC

TQC (Total Quality Control) は、QC の拡大版であり、製造工程に限定せず、マーケティング、設計、調達、営業、販売、保守など製品ライフサイクルにかかわるあらゆる部門に及んで品質管理を行うことです。

TQM

TQM (Total Quality Management) における「Management」は「管理」とは訳さず、「経営」と訳します。よって「品質経営」と訳され、TQC の活動や考えを自社の経営戦略の一環として経営者がトップダウンで実施することを示します。


品質管理と PLM を統合するメリット

品質管理システムを PLM のプロセスに取り込むことで、以下のようなメリットがあります。

リアルタイムの可視性の向上

一元管理された製品ライフサイクルにかかわるあらゆるデータの最新情報にいつでもリアルタイムにアクセスできます。そのような環境で可視化や分析、情報共有がスムーズに行えます。

品質データの統合

品質管理にかかわる全ての情報を 1 カ所に集約し、デジタルスレッドによる統合管理を可能にします。

コラボレーションの効率化

設計や製造、保守など部門をまたぐコミュニケーションを効率よく、かつ素早く行えます。誰もが常に同じ情報を参照できることで、正確で建設的な議論がしやすくなり、意思決定もスムーズにできます。


PTC の品質管理ソリューション

WindchillWindchill+(SaaS 版)
品質、信頼性、安全性、プロセスの管理を製品ライフサイクルのあらゆる段階に組み込むことが可能です。
品質管理の基盤として開発情報の集約管理とプロセスの一元化により作業効率や設計品質の向上が見込めます。更に、より厳格な品質管理プロセスを適用し、一貫性のあるデータとプロセスを利用して製品開発を進める事ができます。要件管理やリスク分析などを用いた継続的な品質改善の取り組みを全社的に再定義する事も重要です。


まとめ

製品やサービスを一定の品質で顧客の下に届けるため、QCD のバランスを取りながら、さまざまな施策を行うのが品質管理でした。今日の複雑化した市場かつ厳しい条件での「ものづくり」において、QCD の最適化は困難を極めています。また、日本国内においては働き手不足も深刻化しています。限られた時間と人でこなさなければならない品質問題への対応は、現場ごとの “頑張り” だけで乗り切るには明らかに限界ではないでしょうか。ぜひそこに、PLM のデジタルの力を加えていただき、データ探索やコミュニケーションの行き違いなどで割かれてしまう時間を減らし、人が創造性を存分に発揮するべき業務に十分に時間が割けるよう環境を整えていくことが重要ではないでしょうか。


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