編集注記: このブログの初版が公開されたのは 2023 年 4 月です。2024 年 2 月に新たな情報を加筆しました。
製造をますます複雑化させている大きな要因の 1 つは、製品の構成可能性を高め、最終的には製品のバリエーションを拡大したいという要望です。構成ライフサイクル管理 (CLM) とは、さまざまな製品構成やビジネス上の目的に合わせて作成された BOM(部品表)を調整して連携させ、品質と生産性を最大化するためのプロセスです。
本ブログシリーズの最近の投稿では、完全にデジタル化された包括的な BOM 管理について取り上げ、各種の BOM(設計部品表、製造部品表、サービス部品表)の違いや関係について掘り下げました。BOM 管理プロセスを、PLM、ERP、CRM などの広範なエンタープライズエコシステムに統合するには、合理的な構成ライフサイクル管理戦略が必要です。
CLM の主なメリットは、開発から提供終了まで、製品ライフサイクル全体でオプションが増加し続ける中、それによって必要となる大量のデータ、規則、モデルを維持管理できることです。製品の複雑化が進み、ほぼすべてのメーカーが、製品のオプション、バリエーション、拡張機能を増やさなければならないという圧力を受けているため、製品の構成可能性がかつてなく重要になっています。
CLM を利用すれば、関連するすべての製品データが統合されており、最新で、一元的に保存および追跡されていることを確信できるだけでなく、設計、製造、営業、マーケティング、サービスなど、企業の各部門が必要とする形式でこれらのデータにアクセスできるようになります。
CLM により、さまざまなシステムと、それらのシステムを利用するチームの間で、一貫性のあるデータがスムーズかつ整然とやり取りされるようになります。実質的に、CLM は製品ファミリー内のすべてのバリエーションを統合し、リアルタイムで管理するためのエンタープライズプラットフォームの役割を果たします。世界レベルのバリエーションも地域レベルのバリエーションも明確で整然としており、いつでも利用できます。
製品とそのバリエーションを定義するデータは、部門ごとに異なる形式で保存されています。さらに同じ部門内でも、チームによって保存形式が異なる場合があります。このため、部門が異なっていても、必要不可欠なビジョン、つまり製品の設計意図が明確であり、常に保護されるようにすることが重要です。CLM は、企業内のすべての構成可能データを単一の正しい情報源に集約して、サイロ間を接続し、チーム間のコミュニケーションの質を向上させます。
マーケティングと技術の両方に関係する多くの理由から、メーカーが自社の上流工程と下流工程におけるすべての入力とプロセスを徹底的に追跡し、文書化する能力がますます重要になっています。CLM 戦略を適切に実施することで、材料の調達から製造、購入者による利用、メンテナンス、提供終了まで、包括的なトレーサビリティを確保できます。特に複雑なサプライチェーンにおいて、完全なトレーサビリティの価値は、規制遵守から在庫管理の強化、サステナビリティに関する目標の達成、製品リコールプロセスの効率化まで広範に及びます。
企業には、構成データを表示してアクセスすることが必要になるプロセスや優先事項が複数あります。これらの CLM プロセスのフェーズは、製品ライフサイクルを定義する連続的なビューから構成されています。
製品開発は中核となる製品を設計するフェーズであり、意図したオプションとカスタマイズ可能なバリエーションを定義するデータがこの時点で生成されます。
適切な価格設定を行うには、カスタマイズ可能な製品とそのすべてのバリエーションの開発にかかるコストを正確に計算しなければなりません。また、需要、競争上の要因、ビジネス面でのその他の流動的な要素も考慮する必要があります。構成は、部品や意図した製品ポジショニングに基づいて、コストを正確に計算するためのロジックとなります。
このフェーズでは、市場の需要と規制要件の影響に基づき、企業がユーザーに製品を提供する際の規則が定義されます。地域の市場の期待と規制要件を満たすバリエーションを提供することが最優先事項となります。
実際に発注され、さらにそこからフルフィルメントが完了するまで、顧客の具体的な要件に対応しなければなりません。顧客が個人の場合も、類似した購入者から成る集団の場合も同様です。
世界中に展開していることも多く、数百とは言わないまでも数十のサブサプライヤーから構成される複雑なサプライチェーンを CLM システムで調整します。この調整には、入力内容を同期し、適切な順序で生産ラインに届くようにする処理も含まれます。バリエーション BOM は CLM を介して自動的に ERP に接続するため、効果的な購入および生産計画が可能になります。
構築フェーズでは、CLM システムによって、生産プロセスの根幹を成すさまざまな形式の製造部品表が生成されます。作業指示、構築指示、プロセスフローは、複数の構成間で統一の取れたものになります。
実際に製品が利用され、成熟していく中で、サービス部品表、スペア部品リスト、メンテナンスマニュアルなど、バリエーションに固有のサービスおよびメンテナンス関連資料を生成するために CLM が不可欠になります。
製品が寿命を迎えたら、CLM を利用することで、リサイクル、リユース、適切な廃棄のためのさまざまな要件を確実に集約し、最新の要件にアクセスできます。
すでに製品ライフサイクル管理を理解し、活用しているメーカーの場合、CLM との関係は完全に補完的なものとなります。実は、CLM の基となる技術とアプローチは PLM と同じであり、その中心となっているのは単一の正しい情報源です。
CLM を可能にする製品構造、BOM 管理、構成管理機能を実現するには PLM が必要です。PLM と CLM の両方が、モジュール式の製品構造、部品主体の(図面主体とは異なる)BOM 管理、構成管理など、製品のライフサイクル全体で連携して連続的にデジタルスレッドを実現するさまざまな技術を活用しています。
CLM は、PLM をほかの重要なビジネスシステムと統合し、調整します。これには PLM だけでなく、ERP や CRM など、企業が利用しているその他のシステムも含まれます。これらすべてのシステムによって定義されるデジタルループを企業レベルで閉じることで、CLM は製造プロセスそのものの生産性だけではなく、製品とそのバリエーションに関連する情報に貢献する、またはそれらの情報を利用する個々のチームの生産性も最大化します。
事実上、CLM は複数のチームを統合する柔軟性と応答性に優れた単一のデジタルシステムを作り上げ、個々のプロセスの影響や効率性を損なうことなく包括的なデジタルトランスフォーメーション (DX) を実現するための道を切り開きます。
このビデオで、ライフサイクルおよび構成管理を利用している Polaris 社の事例をご確認ください。
CLM は基本的に、それまでサイロ化されていた部門とワークストリームの間のやり取りを効率化することで現代の製造上の課題に対応しています。設計から調達、製造、営業、サービスまで、CLM はすべてのチームをまとめ、単一の正しい情報源に基づいて作業できるようにします。
製品関連のあらゆる意思決定やイベントが及ぼす影響が即座かつ正確に組織全体に行き渡れば、チームはそれぞれの専門領域内で確信をもってその後の意思決定を下せるようになり、企業全体にもたらされる価値が増大します。より優れた決定を下すことで、製品の品質と製造の効率が向上し、市場投入までの期間が短縮されます。構成ライフサイクル管理によって促進されるこれらのメリットは、増収、ブランド資産価値の強化、株主価値の増大に大きく寄与します。