課題 Fujitsu Network Communications 社のネットワークシステムは非常に複雑で、顧客が現場で組み立てることが困難ですが、事前構成済みのシステムを提供するには多大な時間とコストが必要でした。Fujitsu Network Communications 社は、作業員がネットワークシステムを迅速かつ効率的に組み立てることができるツールを必要としていました。


新しく手に入れた、本棚、人形の家、エクササイズバイク。部品がいっぱいに詰まった箱と、多くの人がうんざりする長い取扱説明書が付いてきます。昔ながらの紙のパンフレットを捨てて、ユーザーに各部品の正確な取り付け場所を指示する仮想的な取扱説明書を手に入れることができたら、どれほどの時間を節約できるでしょう。製造業の世界では、それですべてが大きく変わります。

高まるデジタルトランスフォーメーションの必要性

デジタルトランスフォーメーションによるメリットを手に入れることは、企業が将来の成長のための強固な基盤を構築するうえで大きな鍵となります。ある企業は、データの力を活かして業務の拡張に成功しました。その企業とは、Fujitsu Network Communications 社です。1980 年に創業し、テキサス州リチャードソンを拠点とする Fujitsu Network Communications 社は、ネットワークを所有する企業にデジタルトランスフォーメーションソリューションを提供する業界トップの企業です。専門分野は、オープンプログラマブルネットワーク、自動化およびオーケストレーションソフトウェア、インテグレーションとコラボレーションであり、主要な通信事業者、MSO、MNO、ICP、各種業界がこれらを利用して新たな通信サービスを提供しています。Fujitsu Network Communications 社は、現在増加しているリモートワークに対応するために不可欠なネットワークインフラを構築し運用する顧客を支援するという重要な役割を果たしています。

Fujitsu Network Communications 社のハードウェア

面倒な製造プロセスにより失われる時間と機会

電気通信業界では、複雑な部品や高度なソフトウェアをさまざまに組み合わせ、そのすべてを連携させて音声、動画、データによる通信サービスを提供しています。Fujitsu Network Communications 社の多くの顧客は、ネットワークシステムが非常に複雑なため、現場での組み立てが難しいという特殊な課題に直面していました。顧客ごとにオーダーやネットワークが異なり、固有の要件があったため、まったく同じ構成のシステムは存在せず、どのシステムにも通用する組み立て作業指示を含めることが不可能でした。さらに、導入対象のすべてのシステムに数百個の部品が使われており、部品それぞれを正しい場所に配置しなければ、ネットワーク全体の中で設計どおりの機能を発揮することができませんでした。多くの顧客には、システムを組み立てると同時にネットワークサービスを管理するための時間も知識もありませんでした。

この顧客の課題を認識した Fujitsu Network Communications 社は、自分たちが対処する必要がある問題であると考えました。顧客が現場でプラグインして電源を入れるだけで済むように、事前構成済みのシステムを受け取るというオプションの提供も考慮しました。しかし、自社の製造施設でネットワークシステムひとつひとつを事前に構成してから納品するには、非常に多くの時間がかかり、Fujitsu Network Communications 社にとってコスト面で厳しい取り組みであることが分かりました。

各ネットワークシステムを構成する手順は長く、複雑なものでした。Fujitsu Network Communications 社の作業員は、部品を取り出し、部品番号を読んで、長々と紙に印刷された対応する部品表で部品番号を見つけ、システムの図面を見ながらその特定の部品番号の参照コードを探さなければなりませんでした。最後に、実際のシステムのある場所まで歩いて移動し、図面のどこに部品があったかを思い出さなければなりませんでした。この紙の図面をベースにした手法は、顧客の現場と同様に Fujitsu Network Communications 社の工場でも非現実的であることがわかりました。

さらに、システムを正確に組み立てるために、作業員は複雑な決断を数多く下さなければなりませんでした。Fujitsu Network Communications 社のソフトウェアエンジニアである Thomas Chiu 氏は、先に進むためには、中心的な問題に対応する必要があることが明らかになったと言っています。「どうすれば作業員に指示を与え、その決断を支援し、作業を簡単に、スピーディに、効率的にすると同時にエラーの発生を抑えることができるでしょうか?」と Chiu 氏。こうして作業のデジタル化の必要性が明らかになりました。そして問題は、その方法だけでした。

スループット改善のための新たなアプローチ

Fujitsu Network Communications 社は、社内製造に新たなアプローチを採用すれば、スループットを最大化し顧客のニーズにより適切に対応できると考えました。ローテクからハイテクまで複数のソリューションを試しましたが、組み立て作業の効率向上に役立つ適応性を備えたものはありませんでした。しかしその後、ある機会に恵まれ、新たなソリューション候補について希望の灯がともされました。

Fujitsu Network Communications 社のグループ会社が、企業の課題へのソリューションとして拡張現実 (AR) をテーマとしていました。その分野に詳しいエンジニアにFujitsu Network Communications 社の工場作業を視察してもらい、いくつかの領域の作業が AR によって改善されることを確認しました。顧客支援のためにネットワークシステムを事前構成する領域も AR で改善されることが明らかになりました。

長期間 PTC の製品を利用してきた Fujitsu Network Communications 社は、その製品の品質と産業エンタープライズに関する専門知識に深い信頼を寄せていました。PTC の AR 製品ラインに頼れば、目標に向かってまい進することができると分かっていました。

 

Vuforia Engine を利用して作業員向けの AR 作業手順書を導入した Fujitsu Network Communications 社

Fujitsu Network Communications 社のチームは、複数の物理的な回路図と組み立て作業指示書に従うという面倒なプロセスを排除できれば、最終的に組み立てのコストが削減されるであろうと考えました。

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そのためには、作業員によるネットワークシステムの迅速かつ効率的な組み立てを可能にする一方で、コストのかかるエラーを削減できるツールが必要でした。Fujitsu Network Communications 社が迷いなく選んだのは、比類なき精度と高度なコンピュータービジョンを備えた Vuforia Engine でした。これにより、使いやすく状況に応じたビジュアルガイドを作成し、工場で働く作業員の効率を劇的に向上させることができました。

Fujitsu Network Communications 社は、AR コンテンツ作成を支援するソフトウェアの Vuforia Engine を使用して、Microsoft HoloLens と組み合わせて利用するアプリを開発しました。このアプリでは、顧客の注文情報を設計の構成データに統合し、ネットワーク機器に重なって表示されるリアルタイムの AR 作業指示ガイドを生成します。これにより、作業員の組み立てプロセスが劇的に簡略化されました。まず HoloLens を装着し、通常どおりに組み立てプロセスを開始します。現在では、各部品のバーコードを目で読み取る代わりに、簡単にスキャンできるようになりました。バーコードがスキャンされると、AR アプリが実際のシステムの表面に赤色の輪郭線を映し出し、部品を取り付ける場所を作業員に正確に示します。コンポーネントが正しく取り付けられると、そのことを示す緑色の輪郭線が表示されます。

この新しいガイドにより、作業員は以前なら不可能であった方法でシステムを効率的かつ正確に構成できるようになりました。作業員から非常に前向きなフィードバックが寄せられたため、新しいテクノロジーを試そうという気運が社内で高まりました。Fujitsu Network Communications 社のフルフィルメント担当シニア・バイスプレジデントを務める Barrie Hall 氏が、このような大きなプロジェクトの実施において Vuforia Engine がもたらした膨大な価値について「非常に複雑なプロセスが大幅に簡略化されました」と話してくれました。AR を使用することで、作業員は状況に応じて重要な作業指示にアクセスできたため、組み立てプロセスが大幅にスピードアップしました。

 

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時間とコストが即座に削減される一方で品質が向上

新しい AR 組み立て作業指示書の成果は短期間で表れ、効率、生産性、品質の向上が見られました。作業員のトレーニングにかかる時間は、3~5 日から約 1 時間に減少しました。システムの組み立てにかかる平均時間は 120 分から 97 分に減少し、生産性が 19% 向上しました。さらに効果的だったのは SFP (Small Formfactor Pluggable) トランシーバーの取り付けにかかる時間で、53 分から 31 分に減少して 42% の生産性向上を達成しました。

この投資は、Fujitsu Network Communications 社の収益源と顧客拡大に多大な影響を及ぼしました。「このテクノロジーのおかげで、お客様が抱える大きな課題に対するソリューションを提供し、ほかの方法では不可能だった新たなビジネスを開拓できました - 全員が恩恵を受けることができたわけです」と Hall 氏は言います。

顧客のニーズに対応する一方で収益も上げた Fujitsu Network Communications 社

顧客による現場でのネットワークシステム組み立ての支援という中核的なビジネスニーズに直面した Fujitsu Network Communications 社は、Vuforia がその答えになることを理解していました。社内である程度の成功を収めることができたため、事前構成のプロセスを顧客向けの通常のサービスとして提供できるのではないかと考えたのです。これにより顧客の満足度を高めることができるだけでなく、Fujitsu Network Communications 社にとっては新たな収益源の獲得につながります。

PTC と連携した Fujitsu Network Communications 社は、このコンセプトを高度な新サービスとして市場投入し、顧客の業務全般で非常に多くの時間を削減することで顧客のビジネスにおける生産性の改善を支援しています。Fujitsu Network Communications 社は、PTC とのパートナーシップによりカスタマーサービスと成長のための新たなビジョンが生まれたと確信しています。「目に焼き付けられるような、印象的な光景です - ほかでは見たことのない、説得力のあるものです。それが現場で実際にどのような機能を発揮するかを顧客が理解し、そのベースに使われているテクノロジーを理解してくれれば、当社は新しいビジネスを勝ち取ることができるでしょう」と Hall 氏は言います。PTC を味方につけた Fujitsu Network Communications 社は、今後も顧客向けのソリューションを拡大し続けるでしょう。その可能性は無限大です。

 

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