課題 ある大手送電網企業は、時間がかかりミスが発生しやすい受注生産型の販売プロセスを最適化する必要があることを認識していました。社内の設計データを活用することで、購入の信頼性や販売効率を向上させることを希望していました。

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多くの購入者にとって、重要な投資の準備には、その投資が適切であることを確認することです。車の試乗、家の見学、靴の試着など、手に入れるものについて知ることで安心感を得られます。では、なぜビジネス投資は異なるのでしょうか?企業が正しい技術を活用すれば、顧客は購入前にソリューションを適切にイメージできるようになり、双方にとって時間と費用の節約につながります。

 

 

 

過去の経験を活かし、成長を加速

今日のメーカーは、急速に変化する顧客ニーズに応えるというプレッシャーに直面しています。時間が限られる中で、すでに得た勢いを活用することが、変化に対応するための最善の方法です。ある送電網業界のグローバルリーダーは、過去の仕事を繰り返して改善することで、まさにそれを実現しました。また、PTC の先進的な技術を活用することで、持続可能なデジタルエネルギーソリューションのポートフォリオを進化させながら、ビジネスの拡大に成功しました。


 

高度にカスタマイズされたソリューションがメーカーにとって多大なコストに

どのような業界においても、顧客を維持し、ビジネスを拡大するには、高品質の製品とサービスを提供することが重要です。大規模な送電網システムの場合は、品質の低下が送電網全体とそれに接続されたすべての機能に影響を及ぼす可能性があります。電力品質の問題に対応するために、ある大手送電網企業はコンデンサとフィルタを提供しています。これは、電気回路の電力品質を向上させるために、妨害を除去して効率を高める、カスタマイズされたシステムです。しかし、これらのシステムは注文に応じて設計しなければならず、さまざまな分野の多くの専門知識を必要とするため、時間とコストがかかります。

送電網企業の工場では、これらのシステムの 1 つを開発するプロセスが手作業で行われていました。また、深い専門知識と専任のチームにもかかわらず、人為的ミスによって生産の遅延が多発していました。このような遅延が連鎖反応のように、販売から物流まで必要な修正作業が未処理となり、システム全体のプロセスに悪影響を及ぼし始めました。

課題となったのは、販売サイクルの初期の段階でした。この高度にカスタマイズされたソリューションの段階では、写真や図を参照するための既製のカタログがなかったため、顧客が独自の製品を理解してイメージすることは困難でした。これが後になって、予想外のソリューションを提示された顧客が設計の変更を求めたときに、コストがかさむことになりました。

送電網企業は、カスタマーサポートを改善してオペレーションの規模を拡大するためには、自動化プロセスを通じてこのような受注生産ソリューションのコストを最適化する必要があることを認識していました。時間をかけて、設計を最適化するための小さなソフトウェアの開発に成功しましたが、プロセスには時間がかかり、データの計算ミスや測定ミスなどコストのかかる人的ミスが容易に発生しました。送電網企業は、必要な知識はすべて揃っており、より優れた大規模なプラットフォームさえ構築できれば、販売と設計のサイクルを簡単に自動化できることに気づきました。

PTC のソリューションが販売と設計のサイクルを変革

送電網企業は、新たに開発した設計およ設定ツールに PTC の複数の製品を統合しました。この統合された単一システムは、電力システムの変数をバックエンドで設定し、コストを最適化し、カスタマイズされた設計ソリューションと見積書を顧客のために作成しました。また、PTC の PLM(製品ライフサイクル管理)ソフトウェアである Windchill と PTC の CAD (コンピューター支援設計)ソフトウェアである Creo のデータも活用しました。この機能により、セールスエンジニアが異なる部品番号をシステムに入力すると、それらの部品に関連するデータが Windchill から Creo に入力され、自動的に 3D モデルが生成されるようになりました。このモデルから 2D 図面が生成され、顧客に見せることで、設計ソリューションの候補をイメージできました。その後、ソリューション設計全体が Windchill 内に保存され、送電網企業のセールスエンジニアが必要に応じて設計にアクセスし、調整できるようになりました。

当初、1 つの製造施設でのみこのソリューションの使用を開始しましたが、数年間の改良と改善の結果、運用上の変革をグローバルレベルで拡大し、構成システムをさらに優れたプラットフォームに拡張することで、売上の増加とカスタマーサービスの向上を実現できることがわかりました。そのために、PTC の拡張現実 (AR) ソリューションを利用して、カスタマーサービスの能力を変革しました。

拡張現実 (AR) でビジネスソリューションをひとつ上のレベルへ

送電網企業は、設計ツールを作成した勢いで、さらに適切な技術に活用することが、カスタマーエクスペリエンスの強化、購入の信頼性の改善、販売効果の向上につながると考えました。

以前からほかの PTC 製品を使用していたこともあり、AR はこれらの目標を達成するのに理に適っていました。そこで、効率的な AR オーサリング環境である Vuforia Studio を選択したことで、同社は既存の 3D CAD モデルを活用して、構成ソフトウェアで指定したバリエーションに基づいて没入感のある拡張現実 (AR) コンテンツを開発することに成功しました。

Vuforia Studio で開発された AR コンテンツにより、顧客は提案されたソリューションの実物大のデジタル表現を、自社の環境内で、大規模な送電網システムに正確に配置して確認できました。これにより、最終的なシステムを構築して出荷する前に、修正が必要な不正確な点や問題点を簡単に特定できました。また、AR により、お客様が紙の図面、指示書、一般的な設置ガイドに頼る必要もなくなり、より適切にカスタマイズされた迅速なソリューションを提供できるようになりました。

明確な競争優位性の出現

AR プロジェクトに加えて、再開発した構成システムが現在、世界 14 カ所の営業所やエンジニアリングオフィスに導入されており、時間と費用の大幅な節約を実現したことがさらなる成長につながりました。ソリューション全体を手動で開発する場合に比べて、15 倍のエンジニアリング作業が可能になり、販売に費やす時間も最適化されました。これまで 6 週間かかっていたリードタイムが、今ではたった 1 ~ 2 回の顧客との打ち合わせ後に営業が成約するようになりました。この販売とサービスのプロセスは業界でもこれまでに類を見ないものであるとの報告が多数あり、同社はお客様からの購入の信頼性がまったく新しいレベルに達しているのを目の当たりにしました。

バックエンドの詳細なデータ管理により、より正確な設計仕様を作成して作業することで、組み立てプロセスにおけるリスクを最小限に抑えることができるため、エンジニアリングリスクも大幅に低下しました。これによりコストが削減され、同社はこのような成果を競争力のある価格としてお客様に還元できます。

すでに実績のある経験の活用

PTC とのパートナーシップを築くことに成功したことが、同社に成功をもたらした中心的な要因の 1 つでしたが、それだけが理由ではありませんでした。同社の事例から、この成功を導いたのは、技術を引き継いできた熟練した内部チームの存在を認める必要があることも明らかになりました。社内のほかのチームがこれまでに行ってきた作業のおかげで、現在のチームは変革のために完全な見直しを行う必要はなく、ビジネスの進め方を変えるだけで目的を達成できたのです。

このように、彼らは企業内のほかのチームが刺激を受けて独自の変革を開始し、他の業界にも成功を広めることを期待しています。知識と協調という土台があれば、ほぼすべてが可能になるからです。