創業者の Clessie Cummins 氏は 11 歳のときに蒸気エンジンを自作していたという伝説がありますCummins 社は 100 年以上にわたって電力事業に携わっており、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電機、その他の関連製品を製造しています。また、製品設計の柱としてサステナビリティと環境に対する影響を据える一方で、製品の品質に関しては一切の妥協を許さず、コストを増加させることもありません。イノベーションの輝かしい歴史を今に引き継ぎ、電力ソリューション分野のリーダーとして、より持続可能な製品とオペレーションを実現している企業の事例をご紹介します。

 

イノベーションを継続する Cummins 社

Cummins 社は、ディーゼルおよびガスエンジンを設計、製造する世界最大かつ数十億ドル規模の独立系企業であり、燃料電池や電池システムなどの電力供給システムの主力サプライヤーでもあります。幅広い分野で高い評価を得ている Cummins 社は、米国 Newsweek 誌の「America’s Most Responsible Companies」の上位 6% にランクインしており、Ethisphere の「World’s Most Ethical Companies」に 14 年間連続で認定されています。発電関連ビジネスに携わる Cummins 社は長年、環境への影響を削減することを企業目標としてきました。 

世界的な気候変動の克服に必要なのは効率化

Cummins 社は、社会的および環境的責任に関する世界的リーダー企業として、より持続可能で豊かな世界を創り上げるために自らの役割を果たそうと努めています。そのため、 Cummins 社は 2030 年に向けた全社的な目標に加え、2050 年までの長期的な目標を設定した、環境サステナビリティに関する新戦略「PLANET 2050」を立ち上げました。Cummins 社は 2030 年までに複数のマイルストーンを達成することを目指しています。たとえば、施設やオペレーションで排出される温室効果ガスの絶対量を 50% 削減する、すべての部品を対象に循環型ライフサイクル計画を策定し、収益に占める施設やオペレーションでの廃棄物の割合を 25% 削減するなどです。

Cummins 社が年間 100 万台以上のエンジン製品を製造していることを考えると、Cummins 社が定めたサステナビリティに関する目標は野心的なものであると言えます。これだけ生産量が多いと、大量の材料と天然資源が必要となります。また、厳格さを増し続ける環境関連規制も遵守しなければなりません。そこで、Cummins 社はサステナビリティを念頭に置き、設計プロセスを見直すことにしました。製品のライフサイクルにおける二酸化炭素排出量の約 70% は設計時に決定します。つまり、製品が環境に及ぼす影響を最小限に抑えるには、設計段階からそのための対策を講じる必要があります。PLANET 2050 の一環としてあらゆる側面の最適化を重視している Cummins 社が設計段階に注力することで、コストの削減から環境面でのメリットまで、大きな成果を上げることができます。

適切な設計ツールが必ずしもイノベーションにつながるとは限りませんが、イノベーションが生まれやすい環境を作り出すことはできます。そこで Cummins 社は、業界の主流であり、世界中の設計者やエンジニアに信頼されている 3D CAD(コンピューター支援設計)ツール、Creo を導入しました。

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Creo のジェネレーティブ機能を使用してシミュレーション主導の設計を実現し、リソースを最適化

Cummins 社は、電力ソリューション業界において、市場投入期間を短縮すると同時に、環境サステナビリティの実現に向けてオペレーション、製造、サービスを最適化するには、堅実な設計が不可欠であることを認識しています。設計エンジニアがタスクの設計要件とオペレーション要件を記述すると、Creo が設計コンセプト作成を支援する一連の設計およびシミュレーションツールを提示します。このプロセスにより、設計エンジニアは設計コンセプトの開発と繰り返し作業をより効率的に行えるようになり、設計者と解析担当者の間で発生するやり取りを回避できます。また、これらの重要なリソースをさらに効果的に活用できるようになります。さらに、時間の制約があったため以前は不可能だったさまざまな設計案の検討も可能になります。

Cummins 社は、Creo Generative Topology Optimization、Creo Simulate、Creo Simulation Live (CSL) を利用してデジタルプロトタイプの設計とテストを行い、実際のエンジンシステムでの動作を把握しています。Creo Simulation Live を使用すると、設計上の意思決定についてリアルタイムのフィードバックを得られるため、設計者はより迅速に繰り返し作業を行い、より多くのオプションを検討できます。これは、設計者の大幅な時間の節約につながります。加えられた変更は毎回、通常のワークフローの一環として数秒で解析されます。しかも CAD 環境を離れる必要がないため、効率が大幅に向上します。

Cummins 社は、このアプローチから複数のメリットを得ています。ジェネレーティブデザインと CSL を利用することで、機能面を最初から適切に設計できます。構成部品が必要な設計制限を満たしているか確認するため、解析担当者と何度もやり取りする必要はありません。また、設計プロセスの前段階でシミュレーションを実行することで、コストを削減し、より良い製品を生み出し、市場投入期間を短縮できます。基本的なシナリオのテスト、迅速な繰り返し作業、モデルの改良により、解析担当者が自身の専門知識を活かせる問題により多くの時間を費やせるようになるため、部品の製造に必要な治具を最初から適切に設計することが可能になります。

このプロセスでは、解析担当者に必要な作業は結果の検証だけなので、より複雑な解析タスクに集中できます。「設計者と解析担当者の間で何度もやり取りをしなければならない状況は、本当にリソースの無駄遣いです」と話すのは、Cummins 社の設計担当ディレクター David Genter 氏です。「この状況は、解析担当者が本来の業務である複雑な解析に費やすべき多くの時間を奪っています。設計の領域で対応すべき業務を解析担当者に任せるケースが増えるほど、解析担当者にしか対応できない業務から彼らを引き離すことになります」

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Creo には総合的な解析ツールが組み込まれているため、設計者が必要な初期の解析の多くを実行できます。これらのツールは、特に繰り返し作業について効果を発揮します。しかも、多くの純粋な解析ツールよりも直感的に使用できるため、トレーニングすることなく使用できます。

Cummins 社は、部品数を削減し、従来の方法では製造できない機能を設計するために付加製造にも投資しています。一般に、3D プリントの金属部品は従来の方法で製造される部品よりコストが高くなるため、Cummins 社はまず、ステンレスやインコネルなど二酸化炭素を大量に含む特殊な材料に焦点を当てました。総合的な効率性がパフォーマンスの向上やコスト削減を左右すると考えると、このような材料を使用する場合、必然的に付加製造に投資することになります。

付加製造の優れている点は、抜き勾配、機械の設定など、従来の製造上の制約を気にする必要がないことです。このため、ジェネレーティブデザインと CSL を活用して、より有機的な形状や、従来の製造では考えられなかったような代替材料を自由に検討できます。「付加製造によって設計の自由度が大幅に向上し、Creo Generative Topology Optimization で生まれる多くの有機的な設計を、機能面をほぼ犠牲にせずに製造できます」と Genter 氏は言います。

PTC の LEARN Online を活用して Creo 認定を取得する Cummins 社の設計者

LEARN Online は、PTC University による講義形式のオンライントレーニングプログラムです。サブスクリプション形式で利用でき、PTC の技術を使いこなす方法を学ぶための豊富なコースのカタログをユーザーに提供します。Creo 製品の基礎的な知識からより高度な専門的スキルまでをカバーする認定プログラムも用意されているため、Creo ユーザーはモデリングの熟練度を高め、Creo Generative Topology Optimization などの Creo ベースのシミュレーションモジュールをより広い範囲で活用できるようになります。PTC は LEARN Online を介して、Creo のモデリングやその他の機能の熟練度を客観的に評価する方法を提供しています。Cummins 社は、社員トレーニングへの投資、ツールやリソースの効率的な利用、次第に厳格さを増す環境関連基準の遵守という全社的な目標の一環として、LEARN Online を活用して Creo のより詳細な機能を学ぶよう自社の設計者に推奨しています。

Cummins 社が LEARN Online を使用する目的は、設計者個人のスキルを向上させるだけでなく、Creo の広範な機能を社内の 4,000 名以上のユーザーに周知することにあります。「目指している成果の 1 つは、これらの機能が Creo に組み込まれていることを社員に認識させることです。これらの機能の大部分はすでに存在していましたが、以前は、それらについて調べようという意識を持つきっかけがありませんでした。しかし現在は、LEARN Online を介してさまざまな Creo モジュールを知ることができます。ユーザーは、自らのスキルを磨いていることを披露し、評価されながら、設計エンジニアリングの機能をより多く発揮できる素晴らしい方法であると気付き始めています」と Genter 氏は言います。

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「付加製造によって設計の自由度が大幅に向上し、Creo Generative Topology Optimization で生まれるより多くの有機的な設計を、機能面をほぼ犠牲にせずに製造できます」

David Genter 氏
Cummins 社、設計担当ディレクター

 

 

Cummins 社は現在、PTC と連携して業界初の設計者解析認定プログラムを導入しようとしています。このプログラムは 2021 年に Professional Certification プログラムを介した試験運用に成功しており、Creo Simulation Live、Creo Simulate、Generative Design、Creo Flow Analysis などのシミュレーションモジュールを中心とした個別のプログラムを提供するために刷新されました。このプログラムにより、Cummins 社は期待するモデリングとシミュレーションの熟練度を、設計者のキャリアの特定の時点に客観的に結び付けることができるようになります。 

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設計者解析認定プログラムがもたらす別のメリットとして、エンジニアが優れた設計方法を採用するためのガイドの役割をジェネレーティブデザインが果たす点が挙げられます。ジェネレーティブデザインは荷重と流入経路それぞれに適切に対応するために構造や輪郭をどこに配置すべきかを示しますが、設計者がこのプロセスをマスターするには、キャリアを通じてある程度の時間を費やす必要があります。ジェネレーティブデザインでは、このプロセスはより直感的か迅速になり、特に新人エンジニアの場合、設計コンセプトを最初から適切に作成できます。また、解析担当者との度重なるやり取りを省くことで、設計プロセスを短縮し、材料が最適化された製品を製造できるようになります。

このツールを使用するだけで直観力が高まり、実現可能なコンセプトをより迅速に作成できるようになるため、設計者の価値が向上します。つまり、LEARN Online は、Cummins 社の設計者が各自のモデリング能力と解析能力を向上させるとともに、現在のレベルを評価するための具体的な手段を提供したことになります。

「あなたのモデリング技術は素晴らしいのでこれ以上伸ばす必要はない、などと言う人はいないだろうと設計者たちには伝えています」と Genter 氏は言います。「モデリング技術を極めるに越したことはありません。それにより作業スピードが上がり、設計コンセプトの成熟度が向上し、自身の設計能力を存分に発揮し続けることができるのですから。モデリング技術が向上すれば、Creo のほかのモジュールに手を伸ばしたくなるものです。LEARN Online は、そのための自信を設計者たちに与えてくれます」



 

 

Creo が支える「地球の管理人」としての Cummins 社の役割

ビジネスの最優先事項として持続可能な製品と生産方法を掲げる Cummins 社の設計プログラムの中で、Creo は大きな役割を果たしています。Cummins 社は、従来の方法で設計された部品にジェネレーティブデザインを適用することで、通常使用する材料を 10~15% 削減できることに気付きました。このアプローチにより、特定の構成部品が環境に与える影響と、そのコストおよび重量が削減されます。

Cummins 社は、設計するすべての部品を対象とした循環型ライフサイクル計画を実行することで、サステナビリティに関する目標の達成に向けた重要な一歩を踏み出しました。現在では、設計する部品について、構成部品を最適化して使用する材料を最小限に抑えることが基本的な要件となり、PLANET 2050 の目標を達成するための Corporate Design Review 基準に正式に組み込まれています。

Cummins 社は、すべての部品を対象とした循環型ライフサイクル計画の一環として、最高の材料仕様とプロセスを選択したこと、ジェネレーティブデザインなどの材料最適化テクニックを適用したこと、すべての新規に設計された構成部品についてリサイクル、リユース、再製造の計画を策定したことを文書化し、提供しています。

このアプローチは、サステナビリティに対する Cummins 社の取り組みを明確に示しています。「当社は、新しい設計に費やす材料の量とその製造に必要な水の量を非常に重視しています。二酸化炭素排出量のほとんどは設計段階で決まります。もし、ジェネレーティブデザインを利用しなかったり、リサイクルやリユース、再製造ができない最適ではない材料を選択したりした場合、設計・開発プロセス全体の早い段階でその機会を失うことになります」と Genter 氏は言います。

「Cummins 社の社員は「地球の管理人」として行動することを期待されています。そのため当社は、新しい設計に費やす材料の量とその製造に必要な水の量を非常に重視しています」

David Genter 氏
Cummins 社、設計担当ディレクター

 

 



つまり、Cummins 社の社員には「地球の管理人」として役割が期待されているのです。イノベーションを生み出してサステナビリティを実現するために、Cummins 社は電力ソリューション業界を前進させ続けるような方法で技術を活用し、未来の世代のために革新を起こしています。「当社には違いを生み出すための技術があります。そして、違いを生み出すことは正しいことであると考えています」と Genter 氏は言います。