課題 Elastico Disegno 社はPrensilia 社と契約し、ロボット義手にデザインと美観をもたらすために、機械的構造と解剖学的構造を単一の環境で設計することにより、製品開発を加速することができる高度な 3D CAD ソフトウェアを必要としていました。

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デザインの自由度が高く、高品質な材料を使用できる HP Jet Fusion 3D プリンティングソリューションにより、Prensilia 社と Elastico Disegno 社はロボット義手「Mia」を製作

 


 

はじめに

イタリア、ピサ大学の聖アンナ大学院大学発の企業として 2009 年に創業した Prensilia 社は、義手の製造、および人工装具の専門企業や研究機関に販売しています。

学術研究における優れた経歴を持つメンバーを擁する Prensilia 社は、学問とビジネスの融合により、優れた機能性とデザイン性を備えた年間数十個の製品を生産し、少量生産の義手を製作する企業における数少ない成功例として事業を運営しています。Elastico Disegno 社はデザインおよびイノベーションの分野を扱うコンサルティング企業で、1998 年にイタリアのトリノで創業しました。

ロボット義手にデザインと美観をもたらす依頼を受けて Prensilia 社と契約した Elastico Disegno 社は、Prensilia 社が製品開発を加速させるために 3D プリントを最大限に活用できるよう支援しました。

課題

2012 年に Prensilia 社が設定した目標は、軽量で高機能、魅力的なデザインを備え、内部の機械構造と電子部品を保護するうえで必要な構造的特性をもったロボット義手を、最小限のコストで少量生産することでした。この課題を解決するため、Prensilia 社が契約した Elastico Disegno 社に期待されていたのは、外部カバーを内部の機械的構造の形態に完全に適合させることができないといった、従来型の製造法およびフィラメントベースの 3D プリント技術の制約を克服し、同時に優れた表面の質感を実現することでした。

義手の外的形態と内部設計は内部の部品に適合することが求められるため、それらを検討し決定するには、PTC の Creo のような高度な 3D CAD ソフトウェアが必要でした。Elastico Disegno 社が選択したのは、機械的構造と解剖学的構造を単一の環境で設計できる PTC の Creo でした。

PTC の Creo を活用することで、開発の加速と必要な部品数の削減、部品の変更に応じた製品サイズの柔軟な変更、技術開発部門との直接のコミュニケーションおよび顧客とのデータのやり取りを容易にすることで、設計の繰り返し作業の迅速化を見込めました。

結果として、両社のプロジェクトは素晴らしい成功を収め、内部の機械部品を保護し構造によるサポートを提供する十分な強度の解剖学的構造、外観を損なうことなく Mia の機械部品に適合する複雑な形状、迅速な繰り返し作業と製造、費用対効果の高い少量生産を実現しました。

解決策

Mia は、肘と手首の間にある橈骨部に埋め込まれがチタン製センサーを搭載しています。筋肉や神経を接続するケーブルや電極は前腕部の 2 本の骨(尺骨と橈骨)の間を経由してロボット義手につながっており、指でとらえた情報を戻して手の動きを補助します。

PTC の Creo の「フリースタイル」モデリング機能を使用することで解剖学的構造を簡単に設計でき、人体に適合する均整の取れた形態を実現するとともに、コンセプトから設計、最終製品に至るまで一貫性を確保できます。

Mia の部位の大半は非常に複雑であるため、Prensilia 社と Elastico Disegno 社は、Mia の製造を可能にする唯一のオプションは付加製造テクノロジーの活用であるとの結論に至りました。3MF ファイルを使用することで同一の設計セッションにおけるプリントジョブのコンポーネント最適化とジオメトリの標準化を実現する PTC の Creo の機能により、設計の環境から試作品や最終製品の製作への移行もスムーズでした。

手および指の部分の外部カバーの製造には HP 社の Multi Jet Fusion テクノロジーを使用し、材料は HP 3D HR PA 12 を採用しました。これにより優れた強度と構造によるサポートを実現しつつ、Prensilia 社が望む美観を確保するための表面仕上げが施されています。この外部カバーには摩耗の可能性のあるボタンやファスナーも含まれており、それらの部品はすべての機能性テストをクリアしました。

Mia の指先に使用される柔らかい部品はシリコン成型により製造されますが、これも HP Multi Jet Fusion と HP 3D HR PA 12 で制作されています。Prensilia 社によると、金型の材料を金属からプラスチックに切り替えることで、パフォーマンスや表面仕上げの品質を犠牲にすることなく、コストと製造時間を削減できました。

Mia は 2019 年、優れた製品およびコミュニケーションデザインやデザインコンセプトに対して贈られる国際的な賞である、Red Dot Award を受賞しました。Red Dot Award:Product Design は毎年、デザイン性においてその年最も優れていた製品に贈られます。

結果

Elastico Disegno 社に所属するパートナーである Guido Cherici 氏は、「PTC の Creo のおかげで、イタリアのデザインが誇る存在感を実証することができました。PTC の Creo は、素晴らしい製品デザインの実現と、技術開発者との共通の言語によるコミュニケーションを可能にしてくれました」と言います。

「患者さんに初めて Mia を装着してもらったとき、最初の感想は『こんなに軽いの?』でした」と語るのは、Prensilia 社の創業者である Marco Controzzi 氏です。「内部の機械構造を改善し、強度と表面仕上げの品質を両立できる HP Multi Jet Fusion による 3D プリントを外部カバーの製造に採用することで、必要とされるレベルの堅牢性を達成できました」

Controzzi 氏はまた、HP Multi Jet Fusion テクノロジーの大きな利点として、迅速に繰り返し作業を行える点を挙げています。

Controzzi 氏は言います。「当社製品のような、テクノロジーの最先端をリードする製品に 3D プリントがもたらすもう 1 つの重要なメリットは、お客様に最新の製品を提供できる可能性があることです」

Mia は現在、ヨーロッパで実施されている研究プロジェクトである DeTOP (Dexterous Transradial Osseointegrated Prosthesis with neural control and sensory feedback) により、スウェーデンでテストを行っています。