課題 巨大な機械の数値制御 (NC) プログラミングには困難が伴います。手動プロセスには時間がかかり、作業ミスはコストのかかるダウンタイムにつながります。MAN Energy Solutions 社の設計チームと製造チームは、正確かつタイムリーに固有の要件を満たすには、より戦略的なアプローチが必要だと考えました。

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巨大な機械の数値制御 (NC) プログラミングには困難が伴います。手動プロセスには時間がかかり、作業ミスはコストのかかるダウンタイムにつながります。MAN Energy Solutions (MAN ES) 社は、PTC の Creo 3D コンピューター支援製造 (CAM) 機能を使用し、カスタマイズ可能なプロセスの自動化によって設計および製造プロセスを大幅に改善させました。MAN ES 社は現在、Creo でプログラミングプロセスの精度を向上させ、設計から製造への移行を効率化しています。

持続可能な進歩と繁栄のためのエネルギーソリューションを開発する MAN Energy Solutions 社

エネルギー関連のソリューションとサービスを提供する MAN ES 社は、カーボンニュートラルな時代に向けたグローバル経済の動きに貢献しています。MAN ES 社は、250 年を超える歴史の中で先進的なエンジニアリングの道を切り開いてきた業界のリーダーであり、海運やエネルギー業界向けに大口径ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ターボ機械を提供する世界屈指のメーカーです。ドイツのアウグスブルクに本社を置き、現在では世界 120 カ所以上の拠点に 1 万 4,000 人を超える社員を擁しています。MAN ES 社のポートフォリオには、海洋や定置用途の 2 サイクルおよび 4 サイクルエンジン、ターボチャージャー、プロペラ、ガスおよび蒸気タービン、コンプレッサー、化学反応器などがあります。


MAN ES 社は将来を見据え、デジタルトランスフォーメーション (DX) を推進して産業プロセスを効率化し、信頼性を高めることが、気候変動に配慮した産業を構築する上で、極めて重要なステップになると考えました。そこで着手したのが、電気エネルギーの生成と貯蔵のための新たな技術の開発です。再生可能エネルギーの変動に対応し、動力装置の二酸化炭素排出量を抑えることが狙いでした。MAN ES 社のデジタルトランスフォーメーション (DX) とメーカーとしての進歩は、部品の設計と製造から始まりました。

大型機械部品の設計と製造は困難なプロセス

アウグスブルクにある MAN ES 社の製造施設では、あらゆる大きさの複雑な部品を製造しています。重量も 1 キロに未満から 120 トンを超えるものまでさまざまで、NC プログラミングや製造でミスは許されません。さらに、製造するほぼすべてのエンジンで、顧客固有の要件を満たす必要があります。特に大型製品の場合、ミスが生じるとコストも時間もかかってしまうため、最初から正しく製造することが重要です。

これまでMAN ES 社は手動の古いプロセスに依存しており、設計、NC プログラミング、部品の製造に時間がかかっていました。2.5 次元 CAM ソフトウェアを使用して各部品を製造していたため、非効率で市場投入にも時間がかかっていました。たとえば、あるプロセスでは、設計者が 2.5 次元 CAM システムに 2,000 点を超える座標を手動で記録する必要があり、これは非効率で時間のかかるプロセスでした。さらに、さまざまな相手先ブランドメーカー (OEM) の旧式の機械とそのすべてに付属する各種制御システムに依存していたため、エンジニアリングとプログラミングの段階がいっそう複雑になっていました。

このように複雑な状況では、コストのかかる作業ミスが発生しやすくなります。たとえば、手動のシステムでは、設計からプログラミングに引き継ぐ際にミスが発生しやすくなります。干渉が起きてしまえば、大きなコストを伴います。また、複雑で巨大な機械の修理には、長時間のダウンタイムが必要になります。場合によっては、再稼働まで数カ月かかることもあります。

MAN ES 社の設計チームと製造チームは、正確かつタイムリーに固有の要件を満たすには、より戦略的なアプローチが必要だと考えました。具体的には、各種パーソナライズ機能を備えたより効率的で自動化されたツールにより、ツールパス作成の生産性を向上させる必要がありました。MAN ES 社は、レガシーシステムを最適化するために、3D CAM ツールへの移行を決断しました。自動化と繰り返し可能なプロセスを活用することで、NC プログラミングプロセスをより迅速かつ効率的に行えます。

MAN ES 社は Creo の CAM を活用してプロセスを自動化し、処理能力を向上

MAN ES 社は 2015 年、Creo を導入して 2D のスケッチから完全な 3D モデルのアプローチに移行しました。Creo の幅広いツールパスと自動化機能により、複雑な大型機械のツールパスのプログラミング時間を短縮します。Creo は、PTC の 3D モデリングソフトウェアです。包括的な機能を搭載した 2D および 3D ソリューションであり、コンピューター支援設計 (CAD) や CAM に対応しています。Creo は、設計から製造までの効率を最大化するための包括的なソリューションを提供します。Creo の CAM ソフトウェアである Creo NC および Tool Design ソリューションは、最高品質の精密加工を最短時間で行うために必要なすべての機能を備えています。このソリューションにより、金型設計/鋳造設計や高度な NC から 3D のシミュレーションや検証まで、製造プロセスのあらゆる局面に対応できるようになります。

MAN ES 社が Creo を選んだのには、いくつかの重要な理由がありました。まず、Creo の機能の多くが習得しやすく、使い勝手もよく、専門知識の有無を問わずすべてのユーザーの効率を高めてくれる点です。また、Creo のすべての製品とシームレスに統合し、信頼できる唯一の情報源を提供できます。たとえば、CAD モデルへの変更は、下流側のすべての成果物に簡単かつ自動的に反映されます。CAD と CAM を統合することで時間の短縮にもなり、今後 Creo でツールパスを再計算する際の不具合を削減できます。

Creo には数値制御の高度な工程計画機能も用意されており、自動化機能の幅広いカスタマイズが可能です。Creo NC および Tool Design では作成したプロセスを再現できるため、同じ手順を何度も作成し直す必要がありません。結果として、不具合の修正にかかる時間やミスコミュニケーションを削減できます。最終的に、Creo では追跡とバージョン管理が向上しているため、企業全体のチームが図面、部品、ファイルに迅速にアクセスし、作業計画を簡単かつ正確に立て、複数のバージョンを時系列で確認できるようになりました。

高度な NC プロセス計画の自動化機能により、効率化とコスト削減を実現

Creo の各種ツールにより、MAN ES 社はカスタムアプリケーションを製作し、設計および製造プロセスの最適化と効率化を実現しました。ユーザーは、Creo のテンプレートで、特定の部品周辺を扱う作業員に向けた成果物を自動で作成できるようになりました。情報を手動入力する必要はなく、部品の直径、長さ、位置などの測定値が設計から自動的に抽出されます。ツールパスを作成する際は、ツールと素材が最終部品としてかみ合う位置をユーザーが完全に制御できます。Creo の CAM では、効率的なツールパスを作成するだけでなく、設計と製造のノウハウを取り込むこともできます。そのようなノウハウは将来的に再利用できるため、設計と製造の専門家の知識をすべての人が活用できるようになります。

製造テンプレートにより、アジャイルかつ効率的なプロセスを実現

cs-man-esCreo の製造テンプレートなど、高度な NC プロセス計画の自動化機能により、ノウハウの取り込みが可能になります。製造テンプレートには、NC ツールパスの実行に必要な情報を記載できます。この機能により、ユーザーは無制限の自己定義のライブラリーを作成できるため、製造部門はデータを簡単に確認し、共有できます。社内の経験豊富なプログラマーのノウハウをコンテナに取り込み、経験の浅い製造設計者がベストプラクティスとして参照、再利用できるようにすれば、企業全体で高い一貫性を確保できます。

製造テンプレートでは、個別のファイルに複数のフィーチャーを保存し、同一または別のモデルに繰り返し配置できます。その作業を行い、テンプレートを再利用することで、ユーザーは簡単かつ瞬時に複雑なツールパス、測定値、シーケンスを生成できます。これらの機能はモデル固有ではなく、定義するだけでさまざまなモデル、部品、製品などに適用できます。結果として、製造、不具合、手戻りにかかる時間を短縮し、設計や CAM のプログラミングプロセスの効率性と俊敏性を向上させます。複雑なテンプレートを作成し、機械を分析することで、MAN ES 社は設計部門のデータを品質向上(穴加工の精度向上など)に活用できるようになります。

Gpost によるユーザーの柔軟性の向上

さらに、Creo は、ライセンス料のかからない Gpost ポストプロセッサージェネレーターを備えています。Gpost は習得しやすく、必要な数だけポストを作成できます。ほかの CAM ソリューションとは異なり、Creo のポストプロセッサーは機械を問わず構成できます。ポストプロセッサーを構成するには、ユーザーはまず質問表のすべてのチェックボックスをチェックします。ポスト処理の準備はこれでおおよそ完了です。Creo に統合された切削のシミュレーションでツールパスを検証し、必要に応じてチームで修正します。Gpost は習得しやすく、MAN ES 社が特定のポストを作成するために必要な機能がそろっているため、柔軟性に優れ、CAM での作業を効率化できます。

Windchill により、設計者はデータとリリースの管理を強化

MAN ES 社の設計者はまた、PTC の Windchill を使用して設計および製造のデータを管理し、一貫性と生産性を向上させています。たとえば、ユーザーは変更箇所や変更理由のメモなどを確認できます。Windchill のデータ管理には、Creo の設計のほか、原材料の部品や治具などの CAM 関連の部品、アセンブリが含まれます。

cs-man-es さらに、リリース管理機能により、プログラミングプロセスの履歴を取り込めるので、変更や反復がすべてシステムに組み込まれます。ユーザーは、古いバージョンの確認、変更履歴の一覧表示、複数のバージョンの比較などを行えます。また、Creo の API をサードパーティー製ソフトウェアツールと連携させることで、さらなる効率化を期待できます。現在、MAN ES 社では API を使用してツールを管理し、製造のシミュレーションを改善して、干渉を回避しています。

MAN ES 社は複雑なプロセスの効率化に成功

MAN ES 社は、Creo でプログラミング作業の精度を向上させ、設計から製造への移行を効率化しています。大型製品を製造する場合、以前は最初の機械部品の製造に 3 週間かかっていましたが、今では Creo を使用することで、わずか 1 週間で済んでいます。さらに、3D CAM に移行したことで、再計算による誤りや、座標の誤りがまったくなくなりました。「数千ユーロの経費削減に成功しています。機械と部品に干渉が生じると最大で 10 万ユーロかかりますが、3D CAM を使い始めてから干渉がなくなりました」と MAN ES 社プログラミング部門チームリードの Mathias Reiter 氏は述べています。

Creo の 3D CAM ソフトウェアにより、MAN ES 社はプログラミングにかかる時間を 33% 短縮しました。最初の部品のプログラム後、これまで 12 日かかっていたプロセスが 9 日になり、やがて 5 日になりました。最終的に、MAN ES 社は Creo により競争優位性を獲得し、複雑な大型機械部品を競合よりも迅速に設計、製造できるようになりました。

MAN ES 社は今後も Creo を使用し、デジタルプロセスの最適化へ

MAN ES 社は PTC とのパートナーシップを継続していくことに期待を寄せています。「PTC のチームとは実に良好なコミュニケーションが取れています」と Reiter 氏は言います。「業界屈指のサポート力で、私たちのコミュニティを成功に導いてくれます」

「数千ユーロの経費削減に成功しています。3D CAM を使い始めてから干渉がなくなりました」
Mathias Reiter 氏

(MAN ES 社プログラミング部門チームリード)

MAN ES 社は、2021 年に Creo 7 へのアップグレードを計画しています。最初の機械部品を製造する際に、プロセスの精度を高め、CAD データをより効率的に活用できるようにするためです。また、プロセス全体を総合的に確認するための新たな KPI の設定も検討しています。デジタル化に向けた取り組みを進める MAN ES 社は、PTC と Creo とともに製造プロセスの効率化をますます図っていくでしょう。