課題 2D 図面と、部品、組立、設置のためのデータがサイロに埋もれていた Daktronics 社では、固有の顧客のニーズに広範囲で対応するために、より戦略的な設計および製造アプローチを必要としていました。

詳細はこちら

熱狂する大勢の観客の上空に設置された巨大なデジタルスコアボードは、アリーナでのイベントに欠かせない要素であるため、メーカーは安全性と機能性の両方に配慮しなければなりません。製造から組立まで、複雑化する作業に対応する必要があります。そのすべては効率的な設計から始まります。デジタルサインおよびスコアボードの業界をリードする大手メーカーが、CAD および PLM ソフトウェアを活用して設計プロセスを効率化し、継続的な改善の基盤を構築した事例をご紹介します。

 

Daktronics 社はスクリーン上に革新的なエンターテインメントを実現

スポーツ観戦、海外旅行、毎日の通勤などで、デジタルサイネージの業界リーダーである Daktronics 社の製品を目にしたことがあるでしょう。1968 年に設立され、South Dakota 州 Brookings を拠点とする Daktronics 社は、スポーツ、ビジネス、交通用途の大型 LED ビデオディスプレイ、メッセージディスプレイ、スコアボード、デジタル掲示板、オーディオシステム、制御システムの設計および製造に特化した企業です。

タイムズスクエアから地元の高校のサッカー場まで幅広い製品を手掛けている Daktronics 社のアプローチは、「可能な限りすべてを受け入れ、大小を問わずあらゆる可能性を活かし、既成概念を打ち破って革新的な製品を提供する」というシンプルなものです。

高度にカスタマイズされた注文が設計および製造段階にもたらす課題

「yes-company(すべてを受け入れる企業)」をモットーとする Daktronics 社は、その顧客中心のアプローチにより顧客を拡大し、状況に応じて対応してきました。しかし、注文が増加し、従来とは異なるカスタマイズされた用途の需要が増加すると、図面を重視した 2D のツールではもう対応できなくなることをチームは認識しました。

当時は、2D の AutoCAD を使用してすべての部品、組立、設置図面を作成していました。必要なすべてのデータはこれらの図面内にありましたが、これらの図面は非公式の記録ドキュメントとなりました。しかし、チーム間でデータを共有するには、古い方法に頼らなければならず、設計、製造、設置プロセスの遅延が生じるなど、大きな課題がありました。たとえば、図面はハードコピーでしか見ることができず、すべての図面がオフィス内の 1 室に保管されていました。ある図面を参照したい場合、その部屋に行き、図面を借り出し、使い終わった後で返却しなければなりませんでした。

製造と組立に関しては、大型プロジェクトの場合、工場でテストフィットを行った後、分解して納品し、顧客の施設の駐車場などで再組立を行うこともありました。

このような設計プロセスと製造工程はしばらくうまくいっていましたが、Daktronics 社の成長スピードについていけるほどの効率性はありませんでした。単純に設計と製造を「スピードアップ」するだけでは、ミスが発生し品質が低下する可能性がありました。多様な顧客ベースから非常に多くのカスタム注文を受けていたチームは、顧客独自のニーズに広範囲で対応するために、より戦略的な設計および製造アプローチを必要としていました。

daktronics-field-image1

PTC のソリューションを導入して CAD およびデータ管理ソリューションを改善

PTC の技術について調査した Daktronics 社のチームは、Creo Parametric によって大規模で複雑な注文の設計および組立プロセスを進化できると判断しました。Creo は PTC の 3D モデリングソフトウェアで、ユーザーはコンピューター支援設計 (CAD) モデリング機能を使用して設計を作成、分析、表示し、さらに後工程で共有できます。

Creo が加わったことで、製品の開発および品質を改善するための新たな可能性が生まれました。その一つがピクセルピッチ(画面上のピクセル間の距離)のような複雑なパラメーターを考慮して設計するという、頻繁に発生する課題への対応でした。ピクセルピッチは、最終的に表示解像度と視聴者が明確に視認できる距離に影響を与えます。チームがより厳しいピクセルピッチを必要とするプロジェクトに入ると、板金の厚みの許容値や組立技術などの要素を考慮して設計を進化させなければならず、顧客への納品スケジュール全体に影響が及ぶ可能性がありました。

Creo で設計の改善に取り組んだチームは、基本的な「ビルディングブロック」という設計プラットフォームを再構築しました。このプラットフォームは、異なる構成でピクセルピッチ、曲率、カスタムシェイプなどのさまざまなデザインパラメータに対応できる柔軟性を持って配置できます。その結果、現場での調整が容易になり、間違いに気づいた時にディスプレイ全体を分解する必要がなくなりました。

Creo によって明確で一貫性のある改善が実現され始めましたが、高性能な製品データ管理 (PDM) システムの必要性は明らかでした。Daktronics 社は、新しい Creo ファイルの管理のためにハードコピー用の文書室を段階的に廃止することを目的とした複数の自社開発 PDM システムと、設計オブジェクトを修正し、基本的なデータ管理操作を実行するための PTC の Intralink など、さまざまなソリューションを試しました。しかし、マルチ CAD 環境では、複数の CAD ツールを管理し、さまざまな自社開発システムからすべてのドキュメントを統合できるだけの十分な柔軟性を備えた単一の PDM ソリューションが必要でした。

複数のソリューションを検討したkえっか、Daktronics 社は必然的に PTC の Windchill を選択し、ファイルおよび図面管理を改善しました。中核的な PDM 機能と高度な製品ライフサイクル管理 (PLM) 機能で知られるこのソフトウェアは、Daktronics 社のプロジェクト遂行の進化を支える設計プロセス改善に向けた第一歩になりました。

ワークフローの効率化と現場組立ソリューションの改善を模索

Creo と Windchill を導入して設計およびデータ管理を刷新した Daktronics 社のチームは、顧客のニーズを満たすためにさらなる取り組みについて検討を開始しました。企業全体からさまざまな関係者を集めたワーキンググループを結成し、6~9 カ月間にわたって打ち合わせを行いました。

ニーズと機能を精査した結果、最終的には PLM の機能を Windchill 内に導入するというビジネスケースを作成しました。この導入により、製品開発を促進する変更プロセスおよびワークフローの管理を向上させ、市場投入期間の短縮と、ERP(統合基幹業務)のエラーも削減されます。また、設計部門とその他の製品部門との間のギャップも埋まり、情報の伝達がよりスムーズになると考えられました。

この決定により、設計、製造、サービスの各部門からなる統合グループが新機能導入のためのロードマップを作成し、ビジネスニーズに応じて複数段階に分かれた展開を計画しました。

第一段階は、設計部品表 (EBOM) を ERP へ自動的に取り込む機能を持つソフトウェアである WT Parts の導入でした。WT Parts は特定の部品に関連するすべての情報の中心となるため、すべての関連 CAD ファイル、図面、設計変更履歴、主要な BOM 構造を WT Part にリンクさせ、プロセス全体で WT Part を単一の正しい情報源とすることが重要です。

「日常的な設計作業を行う設計者から経営幹部まで、私たち全員が、真実を語るのは設計者で、ほかのすべてはそこから派生するということを認識しなければなりませんでした」

- Randy Soukup 氏、エンジニアリングシステムアナリスト、Daktronics 社


 

「CAD モデルが真実です」と、正しい情報源の認識とその後の文化の変化について語るのは、エンジニアリングシステムアナリストの Randy Soukup 氏です。「意識の変化が必要でした。日常的な設計作業を行う設計者から経営幹部まで、私たち全員が、真実を語るのは設計者で、ほかのすべてはそこから派生するということを認識しなければなりませんでした」と Soukup 氏は続けます。「成果を上げるために、その正しい情報源に新しいホームと新しいシステムを与える必要がありました。そしてここ最近、成果が見られるようになっています」

WT Parts の導入により、自動化されたワークフローを利用してプロセスを効率化し、BOM を手作業で入力することによるミスや、CAD から実際の工場までその他のあらゆる場所で発生する手作業によるミスが削減されました。

「今まで何度も BOM を入力しなければならなかったが、今ではどれだけ効率化されたか実感しています」と CAD/PLM システム管理者の Andy Hermanson 氏は話します。「今では、CAD 構造のすぐ後に BOM 作成され、担当者がボタンをクリックしてチェックするだけで ERP にプッシュされ、非常にシンプルなプロセスになりました」

第一段階nお導入に成功した Daktronics 社は、変更通知、ローカル・ドキュメント、サプライヤー管理、不適合および逸脱などの次の段階に注力するようになりました。これらはすべて、Daktronics 社のビジネス目標と顧客のニーズを満たすことに貢献しています。

PTC の技術により設計時間の短縮と製品の品質向上を実現

CAD と PLM のロードマップを確立することで Daktronics 社が達成した最大の改善点の 1 つは、作業の実行と設計から製造への移行するスピードが速くなったことです。データ入力の自動化により重複入力と基本的な伝達ミスが排除され、貴重な時間をエラーの修正に費やす必要がなくなりました。トラッキングやバージョン管理が改善されたため、組織全体のチームが図面、部品、ファイルに迅速にアクセスし、簡単かつ正確に作業計画を立てることができるようになりました。

また、シンプルな長方形のディスプレイの場合、設計時間が大幅に短縮されました。「私が設計グループに入ったばかりの頃は、従来の長方形の設計に 1 週間、高度にカスタマイズされた注文の設計には 2 週間以上かかることもありました」と、Soukup 氏は言います。今では、簡単な操作で工学部の学生でもこれを使用でき、上級レベルの専門スタッフはカスタムプロジェクトに専念できるようになりました。「PTC のツールと自動化により、高品質な製品を開発する際の処理能力が飛躍的に向上しました」と、Soukup 氏はさらに言います。

これらすべての要因により、エラーの修正にかかる時間が短縮され、成果物を作成するための時間が増加することで、結果的に、収益の増加と顧客基盤の構築が実現しました。新規顧客を獲得できただけでなく、既存顧客へのサービスも向上しています。可視化機能の向上により、購入企業は、製品を実際の施設に設置した場合、どのように見えるかはっきり把握できるようになりました。また、顧客のもとに納品された製品を、ほとんどミスなく迅速に組み立てることができるようになりました。

daktronics-image3

注目すべき点は、技術的な変化だけではなく、文化的な変化によっても改善されたことです。全員で新しい考え方を受け入れ、今までのやり方を止めることができたのです。Soukup 氏は、今後、この 2 つを組み合わせることで、さらに高度な機能を実現するための変化を起こすことができると考えています。「設計においては、常に時間が大きな課題です」と Soukup 氏は言います。「このため、このような新しい技術に注目し、試し、当社が求める結果を達成するために将来的に設計プロセスを促進する今とは異なる方法を追求しています。これは疑いようのないパラダイムシフトであり、新たな考え方に賛同してもらうことが鍵となります」

継続的な改善への取り組みが明るい未来を示す

新たな可能性を見据えた Daktronics 社は現在、製造工程で使用される塗装機の一部をデジタル接続し、監視する計画を進めています。これらの機械の監視は、以前は面倒な手作業のプロセスでしたが、現在は、Kepware を使用してライブデータを PLC から ThingWorx ダッシュボードに取り込み、塗料噴霧器の圧力とオーブンの温度をリアルタイムで監視しています。高度な可視化のおかげで、Daktronics 社は適切なタイミングで調整を加えるためのデータを手に入れ、製造の効率性と品質を確保できるようになりました。

また、モデルベース定義とモデルベースエンタープライズにより設計プロセスを進化させ、付加製造、ジェネレーティブデザイン、リアルタイムシミュレーションなどの新たな技術を取り入れて、可能性の限界を押し広げるための方法も模索しています。

拡張現実 (AR) への関心が高まる中、Daktronics 社も PTC の Vuforia を検討し、現時点でも素晴らしいカスタマーエクスペリエンスにさらに印象的な要素を加えようとしています。最近、AR を使用して見込み顧客がアリーナ内でデジタルオーバーヘッドディスプレイを体験できるようにする契約を締結した Daktronics 社は、学生や新規採用の従業員が設計プロセスについて学べるようにそれを自社の CAD ソフトウェアに AR を組み込むことにも関心を寄せています。さらに、3D ビューやハンズオン形のインタラクティブな体験を提供するために、AR を活用することも検討しています。

「新しい契約の締結時に、どのようなプロセスが必要なのか、より良いアイデアが得られるようになり、異なるグループがセットアップについて話し合うことができます。これは社内で開発したものですが、非常に大きな成功を収めています」

- Andy Hermanson 氏、CAD/PLM システム管理者、Daktronics 社


 

Hermanson 氏は、これまでの努力に加えて、今後もこのような先進技術を取り入れることで、顧客との間だけでなく、自分たち自身のコミュニケーションもより効率的になると話します。「効率的なプロセスを導入することで、コミュニケーションを改善できる領域をより多く特定できます」と Hermanson 氏。「新しい契約の締結時に、どのようなプロセスが必要で、どのような引き渡しが必要なのか、より良いアイデアが得られるようになり、異なるグループがセットアップについて話し合うことができます。これは社内で開発したものですが、非常に大きな成功を収めています」

Soukup 氏は、これまでの取り組みを振り返り、成長の苦しみにはそれなりの価値があったと言います。「長い時間が経ちました」と Soukup 氏は話します。「かつては、数人の担当者がネットワークドライブのフォルダーにデータを保存していましたが、今では状況が改善しました。PTC のツールセットがその実現を支援してくれました」

PTC は今後も Daktronics 社が続ける取り組みを支援していきます。究極のデジタル視聴エクスペリエンスを提供するという点で、Daktronics 社は正真正銘の業界リーダーであり、そのイノベーションと顧客満足への取り組みのおかげで、世界中の視聴者を楽しませることができない空港、オフィス、アリーナはありません。