課題 業界がリチウムイオンバッテリーに移行することで複雑性が増す中、EnerSys 社は ERP 中心の考え方から製品ライフサイクルプロセス主体のアプローチに移行する必要がありました。つまり、人、プロセス、技術のすべてを製品中心にまとめてガバナンスとトレーサビリティを確保する必要があるということです。

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  • PTC クラウド ベースの PLM
  • 製品データ管理
  • コラボレーション
  • 変更管理
  • BOM 管理

産業用技術のリーダーである EnerSys 社は、エネルギーの効率性、信頼性、持続性への高まる要求を満たす、ミッションクリティカルな蓄エネルギーソリューションをグローバルコミュニティに提供しています。EnerSys 社は、どこにいてもアクセス可能な電源を提供することで、人々の仕事や生活をより良いものにしたいと考えています。

 

EnerSys 社が実現する産業の未来

EnerSys 社は世界中の顧客に動力バッテリー、予備バッテリー、充電器、電源装置などを製造、販売しています。ペンシルベニア州レディングに拠点を置き、世界各地に工場や設計センターを展開し、100 念以上にわたり、エネルギー貯蔵システムやソリューション群を業界、用途を問わずさまざまな顧客に提供してきました。

EnerSys 社は、継続的な改善と絶え間ないイノベーションを目指し、リチウムイオンなどの持続可能な技術を活用した革新的な新製品の導入に移行しつつあります。リチウムイオン技術は鉛酸ほど原材料がかからず、より環境に配慮した技術です。

「私たちは、革新的な技術を採用することで進化し、業界をリードして、可能な限り最高のユーザーエクスペリエンスを創出することを目標としてきました。これは今後も変わりません」と EnerSys 社のシニアバイスプレジデント兼 CTO である Joern Tinnemeyer 氏は述べています。

あらゆる設計データの信頼できる正しい情報源を活用した、新たな運用アプローチを模索

メーカーにとって、鉛酸からリチウムイオンテクノロジーへの移行は、個別の原材料主体の製造アプローチからプロセス中心のアプローチへのシフトを意味します。この大きな変化は、営業、品質、製造、サプライチェーンなど、EnerSys 社のあらゆる部署に影響を与えました。エコシステム全体で効率性の向上、総所有コスト (TCO) の最適化、需要への迅速な対応が重視されるようになりました。

ニーズの変化や複雑さの高まりに対応するために、EnerSys 社は、ERP 中心のデータ管理から製品ライフサイクルプロセス主体のアプローチへの移行を決定しました。つまり、人、プロセス、技術のすべてを製品中心にまとめてガバナンスとトレーサビリティを確保する必要があるということです。

「コラボレーション、設計原理、エンジニアリング原理など、さまざまなものが進化しています。製品の性質自体も、私たちの働き方をより良い方向に変えてくれます」と EnerSys 社のグローバル PLM ヘッド兼アーキテクトの Sudip Pattanayak 氏は述べています。

EnerSys 社は、運用を変革し改善が見込める主要領域を特定することから始めました。リチウムイオンバッテリーに求められる複雑な運用とカスタマイズを実行、標準化するにはグローバルチームとの連携が不可欠であるため、EnerSys 社はコラボレーションを強化し、コンカレント設計原理を適用することを決めました。もうひとつの目標は、部品中心のガバナンスを促進することです。各種システムや部品表全体でデータや情報のサイロを削減することで、より正確な製造情報を時間通りに製造現場に提供し、製造工程とリソースの発見、再利用が可能になります。最終的に、複雑な電気機械製品を新たに立ち上げるには、真のエンジニアリングデジタルトランスフォーメーション (DX) ツール、つまりグローバル製品ライフサイクル管理 (PLM) ソリューションを採用し、信頼できるデジタルスレッドを構築する必要がありました。

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Windchill SaaS を実装し、IT やハードウェアの管理に伴うコストを抑えたままコラボレーションの促進、製品データの管理、ワークフローを改善

EnerSys 社は PTC と提携し、製品データ、BOM、検証、バリデーションプロセス、サプライヤの管理のために Windchill SaaS を PTC クラウドに実装しました。Windchill は、データガバナンスおよびトレーサビリティの総合的な PLM ソフトウェアであり、設計、運用、サプライヤ、顧客について信頼できる正しい情報源を提供します。Windchill のオープンアーキテクチャーは、他のエンタープライズシステムとの統合が簡単で、製品主体のデジタルスレッドのための基盤を構築できます。PTC クラウドに実装した Windchill は、PTC のエキスパートが保守を担当します。EnerSys 社はこのソフトウェアにより価値を生み出すまでの時間を短縮し、総所有コストを大幅に削減できると判断しました。

Windchill の SaaS マネージドサービスは、設計、品質、製造、サービス、および ThingWorx Navigate を使用した関係企業向けのエンタープライズパッケージと役割ベースのアドオンを提供します。PLM ソリューションの構成、拡張、保護が容易になり、リモートワーク環境を含む拡張エンタープライズ全体のコラボレーションや俊敏性を促進できます。

製品開発および製造のための信頼できる安全なデジタル基盤を手に入れた EnerSys 社は、プロセスを改善し、効率性を向上させ、データの使用と管理を改善する計画をしました。こうして、コスト、市場投入までの期間および品質の大幅な改善に向けた準備が整いました。

PTC クラウドベースのサービスとプラットフォームを活用

EnerSys 社は、PTC クラウドを活用したプロアクティブなパフォーマンス管理により技術のピークパフォーマンスを確保しています。PTC クラウドのエキスパートが適切な構成とインフラストラクチャーを整え、EnerSys のソリューションを迅速かつ安全に起動できるようにしました。PTC クラウドの機能、パフォーマンス、セキュリティにより、メーカーは最先端の技術を活用して管理上の負担やハードウェアコストを軽減するとともに、価値の高いビジネスチャンスのためのリソースを集中できるようになります。

「PTC クラウドは私たちにとって重要な戦略的選択であり、クラウドファーストの未来への一歩となりました」
— EnerSys 社グローバル PLM ヘッド兼アーキテクト、Sudip Pattanayak 氏


 

Windchill と PTC クラウドにより新製品導入プロセスを統合

EnerSys 社は Windchill と PTC クラウドを使用して、コンセプトからリリースまで、新製品導入 (NPI) プロセスを統合しようとしています。これはデジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた数年がかりの取り組みであり、ゆくゆくは他のプロセスにも拡大していきます。

EnerSys 社の目標は 3 段階に分かれています。まず、すべての部品表 (BOM) を統合して接続します。次に、製品開発に向けたグローバルな設計コラボレーションを可能にし、テンプレートとプロセスを全社で標準化します。最後に、製造工程管理環境を統合し、製品データ管理 (PDM)、エンタープライズリソースプランニング (ERP)、製造実行システム (MES) の間で情報を交換できるようにします。

「最初のパイロットフェーズがビジネスに与えた影響と価値は一目瞭然でした。そこで、さらに多くの NPI プロジェクトを会社全体に追加しようということになりました」

- EnerSys 社グローバル PLM ヘッド兼アーキテクト、Sudip Pattanayak 氏

 

現在、EnerSys 社は BOM を統合し、段階的な成熟プロセスを実現しています。設計部品表 (EBOM) と製造部品表 (MBOM) 間でBOM 管理を統合し、部品中心の運用基盤を構築しました。変数、構成、関連プロセスはシステム間で同期、交換されます。製造工程全体で BOM が統合されたことで、製造から設計までコンポーネントのトレーサビリティを可能にしました。


 

EnerSys 社は、Windchill に品質プロセス全体を組み込むことも計画しています。品質情報はさまざまなフォルダーやメールなどに分散しています。Windchill を使用することで、このようなサプライヤーやメーカーの品質情報を、単一の場所で収集できるようになります。さらに、厳格な監視プロセスを確立し、必要な品質情報を必要なときに見つけ、アクセスできるようにします。また、現在の ERP (SAP) データ、プロセス表、電子作業指示書などを PLM ツールに組み込み、完全な統合体験を提供することを目指しています。

投資効率を上げ、市場投入までの期間を短縮し、品質を向上

EnerSys 社は、コスト削減、市場投入までの期間の短縮、品質向上という目標に対してすでに大きな成果を上げています。複数のシステムが構築され、計画当初から参加している従業員から支持を得ています。

コスト削減

コストへの影響という点では、EnerSys 社は再利用の可能性を高め、手戻りのコストを削減することで投資効率を上げています。強力な PLM がなければ、メーカーは重複、過剰拘束、部品の間違いなどが起こるというのが現状です。しかし、EnerSys 社は、Windchill を活用して部品処理と変更管理のプロセスを改善し、品質の問題や調整にこれまで以上に迅速にフラグを立てることができるようになりました。完全に品質基準に満たない部品が見つかれば作業を止め、迅速に問題を特定して、必要な手戻りの作業量を軽減できます。

市場投入までの期間の短縮

EnerSys 社は、市場投入までの期間を短縮するためにコラボレーションを強化し、ユニフォームシステムを構築しました。BOM が統合されたことで、作業の繰り返しや製造部門と設計部門の余計な議論が減りました。以前であれば、チームは手作業で進捗状況の報告をしていました。設計部門がサプライヤーのパッケージに対して変更を加えなければならない場合、プロジェクト・マネージメント・オフィス (PMO) は進行中のプロセスを把握することも、問題の原因を追跡することもできませんでした。

「数カ月かかっていた BOM の構築が数週間に短縮されました。また、モデルベースの設計アプローチを採用したことで、開発期間も短縮しました」

- EnerSys 社グローバル PLM ヘッド兼アーキテクト、Sudip Pattanayak 氏

 


 

今ではあらゆるチームが同じ BOM にアクセスするため、PMO 部門は Windchill で管理されているプロジェクトのステータスを迅速に把握できます。PMO 部門は製造工程全体を完全に把握し、リアルタイムでレビューを実施でき、チーム間の誤解も少なくなりました。このプラットフォームアプローチにより、さまざまな分散要件も管理できます。

品質の向上

迅速で正確なプロセスにより、設計が改善され、製造する部品の品質が向上しました。たとえば、偏差管理プロセスは大幅に改善されました。逸脱を素早く記録して、担当チームに戻して手戻りを求めることや、根本原因を追跡できます。

プロセスの改善という点では、品質部門が製造工程の各段階でゲートキーパーとして有効に機能しています。設計段階では、設計者が適切な制御特性を実装したかどうかを迅速に確認できます。もし問題が発生すれば、設計段階で問題を放置するのではなく、適切な承認を得るために協力できます。また、Windchill によりさまざまな製品群でテストと検証のプロセスを再利用し、迅速で正確な品質チェックが可能になりました。

さらに、EnerSys 社は現地のコンプライアンス要件に迅速に対応できるようになりました。たとえば、地域の火災安全テスト要件について、全面的なコンプライアンスチェックのサイクルを調整して適切なタイミングで実行されるようにしています。トレーサビリティが向上したため、現場で問題が発生した場合に原因を調査して、再発防止を図ることもできます。

デジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた取り組みに終わりはない

EnerSys 社の取り組みに終わりはありません。コスト、市場投入までの期間、品質は大いに改善されましたが、やるべきことは残っています。現在のデジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた取り組みに加えて、PTC と連携しながらその他の革新的な技術の導も検討しています。

EnerSys 社は、運用全体に PTC の産業 IoT プラットフォーム ThingWorx をベースにした IoT の導入を検討しています。ThingWorx と ThingWorx Kepware Server を使用したパイロットプログラムが進行中であり、運用環境に導入されています。各種機械を接続し、データの抽出と設備の可視性向上を図っています。これは始まりに過ぎません。Windchill と ThingWorx は、これからも EnerSys 社の継続的な改善を促進していくでしょう。EnerSys 社は PTC と協力して、世界各地で次なるイノベーションを起こそうとしています。