課題: 手動で連携性のないプロセスが生産性を下げ、セキュリティを脅かしている

従来、LS Industrial Systems 社では、製品開発データをサイロ化された形で保管していました。つまり、デスクトップ CAD ツールに保存されたデータを個々のエンジニアまたは各部門が管理していました。製品設計情報は移植性に乏しく、設計リース間で簡単に共有することができませんでした。また、設計の再利用の頻度が低く、作業の重複がしばしば発生していました。さらに、知識データベースが一元化されていなかったため、エンジニアが定年退職などで離職したときに貴重な知的財産も一緒に失われていました。また、CAD データ管理プロセスの整備が不十分で、データが競合企業にも見えやすい状態になっていました。最後に、製品ライフサイクル管理 (PLM) システムを導入する前は、データを CAD ツールから手動で抽出し、ERP システムに入力して、製造部品表 (BOM) を作成する必要がありました。 

ソリューション: PTC Windchill と PTC Creo–UGS Teamcenter との比較評価に基づく選択

LS Industrial Systems 社は UGS Teamcenter Engineering と PTC Windchill PDMLink (データ管理ソリューション) を両方評価した結果、最終的に PTC ソリューションを選択しました。同社は 2007 年、設計から製造に至るまでの完全なデータ フローをサポートするために PTC Windchill PDMLink 8.0 を導入しました。さらに、PTC の 3D CAD/CAM ツールである PTC Creo も導入した結果、同社のモジュール設計機能が高まり、高度なパラメトリック モデリングの各種機能を利用できるようになりました。CAD ツールは使わないけれど 3D モデルを表示する必要があるチームには、PTC のビジュアリゼーション ソリューションである PTC Creo View for MCAD が提供されました。このソリューションにより、自分の作業中にモジュール設計を表示し、適用することができます。

バリエーション モデルのためのモジュール製品設計

LS Industrial Systems (LSIS) 社が PTC PLM システムを導入した主要なメリットの 1 つは、顧客に提供できる製品オプションの幅が広がったことです。LSIS 社の製品ラインは非常に多岐にわたるため、多数の製品モデルを更新し維持するには、多大なエンジニアリング容量が必要でした。現在は、PTC Windchill と PTC Creo のモジュール設計機能を使用して、製品プラットフォームの作成、複数のモデルにまたがる新機能導入、過去の設計に基づく新規モデルの構成を簡単に行えるようになりました。こうしたモデルの再利用は、新規モデルの開発の迅速化に一役買っています。

社内外のチームとのグローバルなコラボレーション

コストを削減しながら製品を迅速に提供するため、LS Industrial Services 社は中国に 3 つのグローバル拠点を開設しました。これらの社内で管理される拠点に加え、近い将来に事業を拡大して中国の社外のサプライヤと連携することも計画しています。このため、設計と製造の両プロセスを前進させるうえで、世界に存在する境界を越えたコラボレーションが重要な焦点となります。

PTC Windchill ソリューションを導入する前は、文書と図面、電子メール、会議の要請、フィードバック、設計の承認といったあらゆる製品情報のチーム間の伝達が、手動により、多くの場合はオフラインで行われていました。こうしたやり取りの一元的な記録は存在せず、これらのやり取りの結果として生じる変更は記録されていませんでした。さらに、複数のリソースがさまざまなフォーマットで情報を配布し作業していたため、作業の重複や古い設計バージョンの使用を防ぐのは困難でした。

PTC Windchill ソリューションを導入した結果、LSIS 社は、単一の製品データ セットを作成し、世界中の社内チームやサードパーティ パートナーと共有できるようになりました。この自動化されたアプローチにより、知識と記録の管理を一元化できるようになり、チームのやり取り、意思決定、変更の履歴追跡が可能になりました。さらに、統合的な役割ベースのセキュリティ アクセスにより、各ユーザーと共有するデータの内容とフォーマットの両方を定義して知的財産を保護することができるようになりました。リアルタイムのワークフローと承認プロセスに従うことで、グローバルなチームが製品ライフサイクルのさまざまなステップを簡単に追跡し、リクエストに応じて即座に作業を実施することができます。

LS Industrial Systems 社のマネージャであるソン・ジョンホ (Jong-Ho Song) 氏は、協調的な意思決定の効率化に伴い、業務全体の生産性が向上したと報告しています。「PLM を使用して体系的な方法で協力し合い、コミュニケーションを図れるようになったことで、LSIS は納期を守り、客離れを防ぐことができるようになりました」とソン氏。 

エンジニアリング部門と製造部門のコラボレーション

LS Industrial Systems 社では、PTC のソリューションによって、世界中のチームとのコラボレーションが強化されただけでなく、製品設計グループと製造グループの間の調整も改善されました。「製品開発プロジェクトを立ち上げる際に気を付けているのは、製品設計者と製造エンジニアが 1 つのチームとして緊密に連携できるようにすることです」とソン・ジョンホ (Jong-Ho Song) 氏は言います。「これによって、実際の製造プロセスを念頭に置きながら設計仕様を策定することができるため、試作品の作成に無駄な時間を費やさずに済みます。製品設計者と製造エンジニアの緊密な連携は、ほかにもさまざまなメリットをもたらします。たとえば、製品に使用する部品数の削減、組立てプロセスの簡素化、製造リード タイムの短縮、製品の品質向上、コストの削減などです」とソン氏は説明します。

PTC の PLM システムを使用すると、特定の時点だけでなく製品ライフサイクル全体にわたって、製品エンジニアと製造エンジニアが定義、解析、承認のプロセスに参加することができます。こうした緊密なコラボレーションにより、
関係するすべてのグループが、必要な製品設計変更が及ぼす影響を詳細に評価し理解することができるようになります。統合 PLM プラットフォームを使用すると、開発の初期段階ですべての関係者が設計情報を共有するためのプロセスを導入し、すべての製品関係者が設計に関する作業を同時に行うことができるため、製品開発作業の並行化が促進されます。

「関連部門が設計部門に適切なフィードバックを行うことができるため、設計段階での完成度を高めて不具合の発生に伴うコストを削減できます。またこれは、コミュニケーションと意思決定の迅速化にもつながります」とソン氏は語ります。