課題 規制や極端なコスト削減のプレッシャーを受けた製造業は、常に効率と品質を向上させる手法を模索する必要があります。新型コロナウイルス (COVID-19) によってこの傾向が強まったとき、VCST 社はイノベーションによって対応しました。

詳細はこちら

デジタルトランスフォーメーションに取り組む VCST 社

自動車製造は、高い品質基準が定められた競争の激しい業界です。特に新型コロナウイルスによる打撃を受ける中で、コスト削減とイノベーション促進を求めるプレッシャーが大きくなっています。コストを削減して顧客に価値を提供し、どのような環境においても競合企業の一歩先を行くためには、継続的なプロセスおよび製品改善が鍵となります。

 

競争力を維持することは、製品およびプロセス改善を常に模索することを意味します。パワートレインおよびブレーキ部品を提供する世界的な自動車サプライヤーである VCST 社は、業界が新型コロナウイルスの打撃を受ける前からこのことを理解していました。

BMT Group に属する VCST 社は、車両の性能全体に大きな影響を及ぼすギアなどのミッションクリティカルな自動車部品を製造しています。ベルギーのシントトロイデンに本社を構え、約 50 年の経験に支えられた VCST 社は、数々の自動車の相手先ブランド製造 (OEM) および Tier 1 サプライヤーの優良パートナーとなっています。確かな品質と信頼性で知られる VCST 社の取引先は、Continental Automotive 社、Volkswagen Group、American Axle 社、Ford 社、Caterpillar Perkins 社、DAF PACCAR 社、BorgWarner 社、Cummins 社などの数々のグローバルブランドです。

VCST 社はここ数年間デジタルトランスフォーメーション (DX) に取り組み、未来の工場を構築してきました。VCST 社の工場はすでに高いレベルで自動化されていますが、自動車業界は多くのメーカーにとって厳しい環境です。規制や極端なコスト削減のプレッシャーを受けた製造業は、常に効率と品質を向上させる手法を模索する必要があります。新型コロナウイルス (COVID-19) によってこの傾向が強まったとき、VCST 社はイノベーションによって対応しました。

コスト、品質、イノベーション、市場投入期間がビジネスに及ぼす影響に注力

このようなプレッシャーに直面した VCST 社は、ベルギーの施設でスマートファクトリーへの取り組みを開始する機会が来ていることを特定しました。その目的は、コスト削減、製品品質の向上、イノベーションの促進、そして市場投入期間の短縮でした。

VCST 社はまず効率に着目しました。工場の大部分はすでに自動化されていましたが、品質部門とメンテナンス部門はまだでした。これらの支援部門は、紙のプロセスと、分断されサイロ化されたシステムに依存していました。このため、作業現場での効率向上とコスト削減を実現するには、ワークフローの自動化とプロセスのデジタル化という方法が最適であることは明らかでした。

品質も主要な検討事項でした。自動車業界では、低品質の部品は絶対に許容されません。顧客から苦情が寄せられると、施設の徹底的な検査が必要になり、結果として大規模なダウンタイムが発生して収益に大きな影響が及びます。変更管理がデジタル化されていない場合も、品質に影響が及びます。紙のプロセスでは時間がかかり、人的ミスのおそれがあるためです。VCST 社はコストについて検討するだけでなく、自動車業界の顧客の期待を満たし、さらにそれを超えるために高い品質基準を維持することに焦点を当てました。

VCST 社は同時に、騒音、振動、ハーシュネス (NVH) に関する新しい国際規制に準拠するために、革新的なプロセスとテクノロジーを導入する機会も見いだしました。電気自動車への移行に伴い、自動車の静音性は高まっています。エンジンから発生するすべての騒音と振動はギアとギアの摩擦によって発生することが多いため問題になっています。その結果、騒音の原因を示す相関関係を探るために、顧客からプロセスデータの提供を求められます。自動車メーカーは詳細なデータを提供し、特定のパラメータを定められた騒音しきい値以下に抑えることが求められています。イノベーションを実現し、これらの新サービスを提供できない企業は、顧客を失うことになります。

そして最後に、システムがサイロ化されワークフローが分断されている場合、製品製造に関する変更はどのレベルでも時間がかかり過ぎていました。変更の影響を評価するために必要なトレーサビリティデータが 4 ~ 5 つの異なるシステムに保存されていました。また、紙のプロセスが原因で推奨されている生産の調整が遅れることもありました。製品を進化させる中で、VCST 社は迅速に変更を反映する能力こそ収益の強化と競争力の維持に欠かせないことを認識しました。

VCST 社と Ad Ultima Group が打ち立てた、スマートファクトリーへの取り組みのためのエンドツーエンドのビジョン


Ad Ultima Group は、VCST 社のデジタルトランスフォーメーション (DX) における主要なアドバイザリーパートナーです。VCST 社のインダストリー 4.0 の取り組みのための包括的なエンドツーエンドのビジョンの確立を支援しました。VCST 社と Ad Ultima Group は連携して、製品の状態を継続的にモニタリングして設計および製造のサイクルに取り込む、クローズドループ型の製品ライフサイクル管理 (PLM) システムのためのコラボレーションプラットフォームを開発しました。この「単一で正しい情報源」により、VCST 社はイノベーションを介して製品の品質を向上させ、競争力の強化を実現します。

これを実現するために、VCST 社は主要なアドバイザリーパートナーである Ad Ultima Group に協力を仰ぎました。Ad Ultima Group の専門分野は、プロセス改善と、製品開発、製造、流通の自動化です。つまり、VCST 社による価値の提供とイノベーションの促進を支援するパートナーとして最適でした。

VCST 社と Ad Ultima Group は連携して、変革への取り組みのためのエンドツーエンドのビジョンを打ち立てました。両社はモノのインターネット (IoT) と包括的な製品ライフサイクル管理 (PLM) テクノロジーを活用して、IT と OT の間に存在するギャップを埋めるコラボレーションプラットフォームのフレームワークを作り出しました。これにより、ビジネス全体での継続的な改善およびスマートファクトリーへの取り組みのための準備が整いました。


両社の戦略は、IoT と PLM の機能を統合することでした。両社は、リアルタイムの IoT データとデジタルソリューションを業務全体に浸透させることで、VCST 社が市場投入期間を短縮し、柔軟性を高めると同時に応答時間を改善できることを認識していました。そして、サプライヤー、人員、デバイス、機械、顧客を統合システムとスマートアプリケーションでつなぐことで、より信頼性と透明性の高いプロセスを推進する機会が生まれました。

VCST 社と Ad Ultima Group は、IoT と PLM を統合することで、すべての変更と構成情報を記録する「クローズドループ型」のライフサイクルシステムを構築しました。両社は、データを収集し、プロセスと機械をモニタリングして情報を設計部門に送り返し、根本原因の分析や是正処置、予防処置を行うことを計画しました。設計から機械、保守の工程に至るまで、施設内の複雑な関係性をカバーし、製品とプロセスを継続的に改善するためのインサイトとパターンを特定できるシステムを設計しました。

「これまでの取り組みでは、サイロの中であれこれと考えていました。そして、私たちはすぐに既存の概念を打ち破らなければならないと気づきました。エンドツーエンドのシナリオで思考しなければならなかったのです」と話すのは、Business Line Automotive 担当 VP の Eddy Van Steyvoort 氏です。「PLM ソリューションと IoT ソリューションのリンクに関して Ad Ultima Group が示してくれた全体像は、強力なデジタル基盤を築き、継続的な変更管理ループを構築するうえで役立ちました」

VCST 社と Ad Ultima Group は、この導入に際してモジュール式のアプローチを採用しました。つまり、すべてをまとめて統合するのではなく、少しずつ柔軟にプラットフォームを VCST 社の IT および OT システムに統合したのです。両社がこのアプローチをとったのは、プロジェクトを迅速に開始し、要所要所で成功を収め、「総入れ替え」のリスクを回避するためです。両社が必要としていたのは、そのビジョンの実現に適したテクノロジーでした。

VCST 社と Ad Ultima Group は PTC とパートナーシップを組み IT/OT コラボレーションプラットフォームを導入

この取り組みに理想的なテクノロジーパートナーとして 、すぐに PTC の名前が挙がりました。PTC はすでに親グループの BMT Group との関係を築いていたため、VCST 社は安心してその強力なパートナーシップを構築できました。

「戦略的なレベルで VCST 社と連携できることは大きな喜びです。また、PTC のテクノロジーを活用すれば、VCST 社のために未来の IT アーキテクチャを構築することができるでしょう。デジタルトランスフォーメーション (DX) にはエンドツーエンドの思考が必要です。ビジネスの一部だけのためにそれを実現することはできません」と話すのは、Ad Ultima Group の CEO である Fillip Bossuyt 氏です。

「PLM ソリューションと IoT ソリューションのリンクに関して Ad Ultima Group が示してくれた全体像は、強力なデジタル基盤を築き、継続的な変更管理ループを構築するうえで役立ちました」

-Eddy Van Steyvoort 氏、Business Line Automotive 担当 VP


VCST 社がスマートファクトリーへの取り組みを促進し長期的な目標を達成するために活用したのは、PTC の産業 IoT プラットフォーム ThingWorx、ThingWorx Kepware Server、Windchill でした。PTC の IoT および PLM ソリューションが一体となり、モジュール式の柔軟なアプローチを介した VCST 社の IT/OT コラボレーションプラットフォーム構築を支援しました。VCST 社 はこのプラットフォームを、ERP (SAP) を含む既存のシステムに段階的に統合することができました。

ThingWorx と ThingWorx Kepware Server は、設備のモニタリングと自動化のシナリオを促進する強力な IoT ソリューションです。ThingWorx Kepware Server は、VCST 社が多様な旧式の機械と PLC を接続するために必要とする柔軟性を提供します。ThingWorx は、VCST 社の業務全体のデータを接続し、収集、分析することで、製造のあらゆる側面に関する貴重な情報をもたらします。

VCST 社は、設計、運用、サプライヤー、顧客に関する単一で正しい情報源を提供する、データガバナンスおよびトレーサビリティの総合的な PLM ソフトウェアとして Windchill を導入しました。現在では、工場内のすべての要素に関して変更管理が行われ、すべてがプロセス計画、設計部品表 (EBOM)、製造部品表 (MBOM) にリンクしています。ThingWorx Navigate は、専門知識のないユーザーがそれぞれのシステムのコンテキスト内で製品データを表示し、操作できるようにするための役割/タスクベースのアプリケーションも備えています。また、IoT 情報を PLM ソフトウェアに取り込むことで、VCST 社はパターンを特定し、製品およびプロセスを継続的に改善できます。

PTC のソリューションがもたらす柔軟性と、カスタマイズ不要なアプリケーションのおかげで、VCST 社はモジュール式の導入アプローチを採用できました。Windchill はオープンアーキテクチャーであるため、IoT を含むほかのエンタープライズシステムとの統合が可能で、製品主体のデジタルスレッドのための基盤を構築できました。Windchill と ThingWorx の標準化された API を利用した VCST 社と Ad Ultima Group は、プロジェクトを細かく分けて段階的に完了させました。

複数の戦略的な取り組みを中心にデジタルトランスフォーメーション (DX) を実現

VCST 社にとって、コラボレーションプラットフォームは無数の可能性への扉を開きましたが、その一方で、PTC および Ad Ultima Group との最初のスマートファクトリーへの取り組みは、エンドツーエンドのアプローチでサイロを排除することによる全体的な効率の向上と生産力強化の実現を中心に展開していきました。コストの削減、製品の品質向上、イノベーションの促進、市場投入期間の短縮により、これらのユースケースは VCST 社が顧客により多くの価値を提供し、自動車業界のリーダーとしての地位を確固たるものにしています。

収集した運用データからパターンを特定し、製品およびプロセスを改善

VCST 社は、自社の業務全体にインテリジェンスを注ぎ込んでいます。IoT と PLM の統合システムを利用して、品質に関して完全な透明性をもたらしました。レベルアップしたデータ取得、品質管理、是正および予防処置の各プロセスと組み合わせることで、製品の品質を向上させることに成功しました。また、プロセス全体で変更を記録し、迅速に反映することで、より優れた品質の製品をより迅速に製造し、市場投入期間を大幅に短縮しています。VCST 社では変更の反映にかかる時間を 25% 改善し、平均修理時間を大幅に削減できると予測しています。

VCST 社が実現したオペレーショナルインテリジェンスは、ギアとギアの摩擦から生まれる騒音を削減したいと考える顧客にとって大きなメリットとなりました。VCST 社は、製造のあらゆる側面を追跡することで、騒音の原因と考えられる要素を特定するためのプロセスデータのモニタリングと分析を行いました。

VCST 社では変更の反映にかかる時間を 25% 改善し、平均修理時間を大幅に削減できると予測しています。

これらのさまざまな記録から、VCST 社は顧客にそれぞれの機械のプロセスデータを提供し、騒音の原因を特定できるよう支援しました。結果的に、VCST 社は工場内でコンカレント設計を実行できるようになり、競争の先頭に立つために必要なイノベーションを推進しています。

VCST 社による OEE の改善とコスト削減

VCST 社は高性能な設備モニタリングと利用に関するユースケースを導入し、OEE の改善につなげました。リアルタイムでの機械のモニタリングおよび診断により、貴重な可視性を獲得し、計画外ダウンタイムを回避し、設備の利用率を最大限に向上させました。チームの効率を高め、OEE を改善しただけでなく、工場全体に自動化を拡張しきました。メンテナンスと品質チェックのワークフローのスピードと正確性が向上した結果、品質を維持しながら出力を改善できました。

「これまでと比べて、チームの作業のスピードと正確性が向上するでしょう。PTC とパートナーシップを組み、ThingWorx、Windchill、SAP を導入してから、リソース、時間、資金を最適な方法で利用できています」と話すのは、VCST 社の Smart Factory Manager である Tim Polleunis 氏です。

継続的な改善を実現した VCST 社の視線はすでに未来へ

VCST 社は、ベルギー工場の最初のユースケースの導入の最終段階に入ったばかりですが、コスト、品質、イノベーション、市場投入期間に関して大きな成果を上げることができると確信しており、その成果は引き続き将来の基盤になると考えています。市場で最も優れたパワートレインとブレーキ部品を提供するという目標の達成に向けて、順調に進んでいます。

VCST 社はその成功を足がかりに、PTC および Ad Ultima Group と連携して、さらにいくつかの戦略的取り組みをすでに計画しています。設計面にも PLM を導入するプロセスを進めており、品質プロセスと変更管理をさらに改善しようとしています。また、Creo を利用して、2025 年までに設計を完全に 3D 化するという取り組みも開始しました。モデルが主要な要素であるため、バリューチェーン全体の関係者がデータの進化的な発展を可視化できます。

自動車製造は、高い品質基準が定められた競争の激しい業界です。特に新型コロナウイルスによる打撃を受ける中で、コスト削減とイノベーション促進を求めるプレッシャーが大きくなっています。コストを削減して顧客に価値を提供し、どのような環境においても競合企業の一歩先を行くためには、継続的なプロセスおよび製品改善が鍵となります。

 

もう 1 つ予定しているプロジェクトは、拡張現実 (AR) ツールである Vuforia を中心としたものです。Vuforia Exert Capture を活用することで、メンテナンス担当者が作業を迅速かつ正確に行えるように、拡張現実 (AR) による分かりやすいステップバイステップの作業手順を作成できます。また、Vuforia Chalk を使用することで、遠隔支援用の簡単なツールを手元に置くことができます。これは特に、パートナーが現場に出向くことができない場合に便利です。これらの拡張現実 (AR) のユースケースはまだ実証実験の初期段階にありますが、その価値はすでに明らかになっています。

「私たちが作り上げた AR ツールを利用すれば、ローカルのお客様をグローバルな観点からサポートし、作業手順や問題解決方法をアドバイスできます。AR ツールにはさらに投資が必要だということがわかりました」と Van Steyvoort 氏は話します。

VCST 社、PTC、Ad Ultima Group はともに、長期的な実り多いパートナーシップを推進し続けていきます。「すべてのお客様は、当社の取り組みを非常に歓迎しています。VCST 社、PTC、Ad Ultima Group のパートナー関係を歓迎しているのです」と Van Steyvoort 氏は話します。