課題 Bharat Forge 社は、業界からのプレッシャー、積極的な成長計画、鍛造ラインでサイロ化するデータとシステムに対尾するため、製造運用の合理化と大規模な効率改善を必要としていました。

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注目のメーカー: 鍛造業界のグローバルリーダー

成功の秘訣

  • 厳しい利益率と成長の必要に迫られた Bharat Forge 社は、デジタルトランスフォーメーション (DX) により運用の効率性を向上
  • 接続性、使いやすさ、エンドツーエンドのプラットフォーム機能を備えた PTC の技術を採用
  • 一部の鍛造ラインの OEE を 15% 改善し、ROI を速やかに確保

 

 

 

Bharat Forge Limited (BFL) 社は 1961 年に設立された、プネに拠点を置くインド系多国籍企業です。技術を積極的に活用する金属鍛造のグローバルリーダーであり、自動車、鉄道、防衛、海洋、航空宇宙、オイル/ガス、電力、建設、および鉱業の各業界向けにサービスを提供しています。高性能で安全な重要部品を幅広く製造してきた 50 年の経験を背景に、Bharat Forge 社は世界各地で影響力を持ち、インド、ドイツ、スウェーデン、フランス、北米に 10 カ所の製造拠点があります。

Bharat Forge 社はアルミニウムの鍛造にも手を広げ、インドと米国に新たな工場を建設中です。さらに、拡大を続けるBharat Forge 社は、最近、ターボチャージャー市場にも参入し、防衛分野において部品製造から相手先ブランド製造 (OEM) へ転換しました。この転換には企業の体質を変える必要があり、製造工程は非常に複雑になりました。


 

目標: 計画外ダウンタイムを根絶

Bharat Forge 社の今後 4 ~ 5 年の目標は、インダストリー 4.0 を採用して会社を変革し、グローバルリーダーとしての地位を維持していくことです。しかし、会長の Baba Kalyani 氏は、油圧、空圧、エレクトロニクス分野において、今後 1 年半以内に計画外ダウンタイムを根絶しなければならないと考えていました。そのため、Bharat Forge 社は速やかに適切な技術を導入する必要がありました。その手段として、デジタルシステムとプロセスを導入し、外部へ依存をやめることにしました。

「イノベーションは私たちのすべての活動の中心です。常に最先端の技術を採用し、市場の変化に対応してお客様に選ばれるグローバルパートナーになることが私たちのモチベーションになっています。競争力を維持する手段として力を入れているのが R&D です」と副マネージングディレクターの Amit Kalyani 氏は述べています。Bharat Forge 社には KCTI(Kalyani 技術イノベーションセンター)と KCMI(Kalyani 製造イノベーションセンター)という世界最大規模の R&D センターがあり、両センターはイノベーション部門として重要な役割を担っています。

「これらのセンターでは先端材料や技術に関する知識やスキルを高め、プロセス改善における新たな機会を特定し、さらには新製品や材料の開発までサポートします」と Amit Kalyani 氏は述べています。


 

課題: 変わらなければ、生き残れない

「当社の 4 つの産業施設にある鍛造ラインはさまざまな技術とプロセスで運用されていたため、製造の効率性を向上させる必要がありました」と CDO(最高デジタル責任者)の Yogesh Zope 氏は述べています。業界からのプレッシャーのなか、積極的な成長計画を掲げる Bharat Forge 社は、一刻も早くデジタル化を進める必要がありました。ただ、現在のビジネス環境で成功するには、デジタルだけでなく、全体的な変革を必要としていました。

彼らは、製造業のビジネスにおいてデジタル化は必須であることに気づいたのです。Kalyani 会長の言葉を借りるなら、「変わらなければ、生き残れない」のです。


 

アプローチ:エンタープライズレベルで考え、2 つの製造工場から始める

技術と企業レベルの統合機能を検討
Bharat Forge 社はまず、半年かけてさまざまな技術を精査し、デジタルトランスフォーメーション (DX) の実現を支援するスタートアップ企業との提携を検討しました。使えそうなソリューションはたくさん見つかりましたが、企業レベルのエコシステムに対する統合機能を持たない技術ソリューションでは、継続的な変化は生まれないということに彼らは気付きました。

社内での導入と保守が容易な PTC を選択
そのような状況のなかで Bharat Forge 社の目に止まったのは、PTC の製品ポートフォリオ全般とインダストリー 4.0 に関する幅広い知識でした。拡張現実 (AR)、製品ライフサイクル管理 (PLM)、産業 IoT (IIoT) を統合できる PTC の包括的なデジタルスレッド戦略は、彼らのニーズに応えうるものでした。

外部のディベロッパーやコンサルタントに依存したくない彼らにとって、ThingWorx の産業 IoT プラットフォームと Kepware の産業用コネクティビティソリューションはまさに理想的でした。Kepware により異なる設備やレガシー設備にシームレスに接続し、そのデータを使用して ThingWorx でインサイトを生成できるという点に感銘を受けました。

2 つの工場でエンドツーエンドのデジタルトランスフォーメーション (DX) を実現
PoC(実証実験)に成功した Bharat Forge 社は、1 つ目の工場をエンドツーエンドのデジタル技術と完全に接続する試みに着手しました。それには IoT によるデジタル品質管理、PLM との統合による完全なデジタルスレッドの開発などが含まれます。

IoT については、センサー化によるプロアクティブなモニタリング装置を導入し、履歴データを分析してダウンタイムの主な原因を特定することから始めました。どのような情報が再発防止に役立つのかは現場作業員が一番よく知っています。彼らの力を借りて、どのような情報が重要で、どのようなタイプのセンサーが必要なのかを特定しました。

Bharat Forge 社の計画は、2 つ目の工場を完全にデジタル化し、そのソリューションを海外拠点のドイツと米国に導入することです。


 

ソリューション: 技術、人、プロセスをつなぐ

Bharat Forge 社は、デジタル化だけでは高い効率性は得られないと考え、3 つの領域に焦点を当てて運用全体を変革しました。

プラットフォームと技術の導入
PoC(実証実験)の後、Bharat Forge 社は IT と OT の専門チームをつくり、工場全体に Kepware と ThingWorx を導入、展開しました。

従業員の再教育
幹部を含め 2,500 人の技術者全員にインダストリー 4.0 についての 6 週間の集中トレーニングに参加してもらい、技術がどのように業務の改善に役立つのかを理解し、活用することへの不安を解消できるようにしました。さらに、同じ機械で何年も作業している技術者を、コンフォートゾーン(居心地のいい場所)の外に押し出しました。デジタルの可能性を知った技術者は、作業現場に変化を望むようになりました。

無駄のない導入
TPM(総合的設備管理)に関する取り組みの一環として、油圧、空圧、エレクトロニクス、メカトロニクス、ロボティクスの分野でデジタルを活用して、いかに運用コストを削除し効率性を向上させることに注力しました。

Kepware は100 種類以上のデバイスからデータを単一のデジタルデータセットにまとめることで、接続、集約し、安全なアクセスを可能にします。オートメーションデバイスやソフトウェアアプリケーションからのデータの引き出しを自動化し、特にレガシー機器の生産性を合理化します。

ThingWorx は Kepware からデータを取得し、それを視覚的に表示することで、リアルタイムで状態のモニタリングと診断ができるようにします。リアルタイムで生産の KPI や過去の傾向をモニタリングすることで、総合設備効率 (OEE) とラインパフォーマンスを向上させます。


 
 

成果: 鍛造ラインの OEE が 15% 以上向上

Bharat Forge 社の成功要因は、デジタルトランスフォーメーション (DX) のプロセスにおいて、従業員の考え方を最優先に考えたことです。CDO の Yogesh Zope 氏は、デジタルトランスフォーメーション (DX) 関連の取り組みの 70 ~ 80% が従業員の考え方を変えることに費やされたと推測しています。この取り組みは大いに成功しました。

Bharat Forge 社は、PTC の IoT ソリューション群による状態モニタリングを、インドに構える 4 つの産業施設の鍛造ラインすべてに導入しました。現在、すべての加工施設への導入を自社のみで進めています。デジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた IoT の導入を継続的に拡大しながら、運用コストの削減と効率化を進めています。

たとえば、午前 2 時に、作業員が ThingWorx ダッシュボードで異常な振動を検出し、プレスを停止すると壊れたボルトが見つかりました。もし 30 分以内に対応できていなかったら、施設では少なくともシフト 2 回分は操業を停止していたでしょう。プレスのサイクル時間は 12 秒であるため、数千個の損失を回避できたことになります。PTC のプラットフォームによりこのように小さな成功が積み重なり、OEE(総合設備効率)は複数の鍛造ラインで 15% 以上向上しました。


 

インダストリー 4.0 センターオブエクセレンス (CoE)

この継続的なイノベーションと改善に向けた取り組みの一環として、Bharat Forge 社は PTC と連携して「インダストリー 4.0 センターオブエクセレンス (CoE)」を立ち上げました。この施設はプネの工場に拠点が置かれ、Bharat Forge 社のインダストリー 4.0 ソートリーダーシップに組み込まれた作業用センターオブエクセレンス (CoE) として、デジタルトランスフォーメーション (DX) のアイデア創出、最先端技術の開発および体験、そして作業現場への技術導入トレーニングを担っています。このセンターにより、Bharat Forge 社は予防保全を確立し、運用効率と製品品質を向上させ、市場投入までの期間を短縮させるとともに、機械学習と人工知能の拠点を構築しました。


 

「インダストリー 4.0 センターオブエクセレンス (CoE) は、製造拠点のデジタルトランスフォーメーション (DX) を加速させ、情報に基づいた迅速な意思決定を可能にします。迅速な製造工程の策定、継続的な改善、補強に一役買ってくれるでしょう」と Amit Kalyani 氏は述べています。「このセンターは、仕事場をデジタル化して、すべてのあらゆる運用プロセスにおいて高い生産性と効率性を実現するという私たちのビジョンを形にしたものです。PTC の技術スタックと Bharat Forge の優れた製造技術が合わされば、デジタルイノベーションを起こして、大きなビジネス価値を引き出せます」


 

次のステップ

Bharat Forge 社がデジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた取り組みを始めた当初、誕生して 60 年経つ工場には古くて特殊な技術が混在していました。今では、OEE を含む生産 KPIをリアルタイムでモニタリングできるようになりました。インテリジェントなアラームにより警告が出ると、作業員が数秒以内に対応することで効率性を向上できます。OEE の計算値をめぐる議論も減りました。作業員から経営幹部まで、作業現場のデータの透明性が高まったことで、効率よく自分の職務をはたせるようになりました。

Bharat Forge 社は、PTC との協力的アプローチによりデジタルトランスフォーメーション (DX) を実現しました。新たな市場進出や買収を通じて成長を続けながら、デジタルを活用してシステムを迅速に統合し、プロセスや技術を迅速に導入していくことでしょう。鍛造ラインと加工ラインの状態モニタリングから始まり、現在は予測分析の PoC(実証実験)を進めています。また、製造工程に製品ライフサイクル管理 (PLM) と拡張現実 (AR) を組み込むことを検討しています。

「PTC の技術スタックと Bharat Forge の優れた製造技術が合わされば、デジタルイノベーションを起こして、大きなビジネスバリューを引き出せます」

- Bharat Forge 社副マネージングディレクター、Amit Kalyani 氏