課題 Carlsberg 社は、10 カ所の工場で完全な生産実行システムを導入していましたが、迅速かつ容易に拡張可能で、最終的には世界中の工場全体でのデータ収集の標準化により生産パフォーマンスの改善を実現する、より軽量なソリューションを必要としていました。


現代の生産業務において、業務を効率化しビジネス価値を創出するには、生産データが不可欠です。適切な技術を導入してデータを活用して、機器のダウンタイムの削減や処理能力の向上など、企業全体にの価値を引き出すことができます。PTC の ThingWorx およびThingWorx Kepware Server を使用して飲料生産業務を刷新し、社内のプロセスを改善する一方で、イノベーションと持続可能性への取り組みを続けた企業の事例をご紹介します。

Carlsberg 社: 世界中で事業を展開するデンマークの伝統あるビールメーカー

172 年前に創設された Carlsberg 社は世界中に拠点をもつデンマークのビールメーカーであり、ビール業界をリードする企業の 1 つです。世界全体で 78 カ所のビール生産工場を擁し、主力のビール製品のほか、スペシャリティビール、地ビール、ノンアルコールビール、さまざまな国の銘柄の製品など、140 種類以上の醸造飲料を生産しており、多様かつグローバルな製品ラインナップを展開しています。

ほかの業界とは異なり、ビール業界で精算プロセスを最適化するためにデジタルソリューションが導入されるようになったのはごく最近のことです。世界中のさまざまな地域に工場をもつ多くのメーカーと同様、Carlsberg 社は複数の工場で生産データを追跡する方法を標準化する際にいくつかの課題に直面しました。



Carlsberg 社は、生産プロセスとパフォーマンス測定を向上させ、総合設備効率 (OEE) を改善する方法を求め、10 年以上もデジタルソリューションの導入を検討していました。10 カ所の工場で完全な MES(生産実行システム)を導入していましたが、迅速かつ容易に拡張可能で、最終的に世界中の工場でデータ収集を標準化し生産パフォーマンスを改善できる、より軽量なソリューションを必要としていました。Carlsberg 社は、より一貫性のあるデータ収集方法を導入すれば、機械のパフォーマンスの最適化、計画外ダウンタイムとコストの削減、処理能力の向上を実現できると考えたのです。

Autoware 社と連携して IoT ソリューションを活用し OEE を改善

Carlsberg 社は、製造業におけるデジタルトランスフォーメーション (DX) の実現に注力しているイタリアのソフトウェア企業であるAutoware 社をテクノロジーパートナーとして採用し、データ収集および運用の改善に向けた取り組みを開始しました。そのために、Autoware 社は PTC の技術を利用して、リアルタイムのパフォーマンスモニタリングのための IoT ベースのアプリケーションを設計しました。機械オペレーターがこのアプリケーションを使用することで、リアルタイムデータおよびアラートを介してさまざまな工場の生産パフォーマンスを簡単に評価できます。

autoware-logoAutoware 社は、独創的なインダストリー 4.0 ソリューションでシステムを統合することにより、製造分野におけるイノベーションを推進しています。PTC の長年のパートナーであり、製造技術に関する深い専門知識を有する Autoware 社は、デジタルへの取り組みを刷新するための支援を必要としていた Carlsberg 社にとって理想的な企業でした。Autoware 社のチームは、迅速に準備を整えてプロジェクトに着手し、新しい IoT ソリューションの設計と展開、そして企業全体への拡張を支援しました。

 

Autoware 社は、このアプリケーションを開発するために さまざまなオートメーションデバイスおよびソフトウェアアプリケーションからデータを自動的に抽出し、統一データモデルに統合するソフトウェアである ThingWorx Kepware Serverを採用しました。さらに、Autoware 社は、リアルタイムデータ分析および分析データと生産に関する豊富なレポート機能により、生産および機器の状態を可視化するエンドツーエンドの産業 IoT プラットフォームである ThingWorx を採用しました。これら 2 つの技術により Carlsberg 社は機械のデータをモニタリングしてダッシュボードに反映できるようになり、デジタルトランスフォーメーション (DX) に向けた取り組みの基盤を構築しました。

作業員はデータを参照してラインのパフォーマンスを目標値と比較しながら明確に把握できるほか、リアルタイムのアラートにより生産上の問題を迅速に特定して解決できます。同様に、一部の現場作業員は、タブレット端末に搭載されたアプリで、ThingWorx のデータを活用して特定の機械のダウンタイムを追跡し、その原因をリアルタイムで確認できます。さらに、工場内の離れた場所からでも、次にとるべき行動を確認できます。

Autoware 社のソリューションが Carlsberg 社の効率的な標準化と拡張を支援

Carlsberg 社は工場間での標準化に向けてすでに多くの基礎を築いていましたが、新しいソリューションによって、旧式の機器や、データ収集、アーキテクチャー、ソフトウェアの不統一による「ずれ」に適切に対応できるようになります。重要なのは、データと指標を標準化することで、Carlsberg 社は機械のパフォーマンスと生産性をほかの工場と比較して評価できるようになることです。さらに、わずか 3 カ月でソリューションを導入できたことから、今後複数の工場に短期間で拡張するというニーズも満たせます。

「当社の目標は、生産データの標準化された共通のビューをお客様に提供するアプリケーションを開発することでした」と、Autoware 社の CEO である Luigi De Bernardini 氏は話します。「お客様はこのような共通のビューをもつことで、生産体制を整え、さまざまな生産拠点の効率性を客観的な方法で測定できます。これこそ真のビジネス価値です」

特に、価値を創出し、一元的に構成されたデータ環境内で作業するための鍵となったのが ThingWorx Kepware Server でした。ThingWorx Kepware Serve によって構成情報をインポートおよびエクスポートし、特定の工場のばらつきに簡単に対応してアプリケーションのデータ標準を満たすことができます。ThingWorx Kepware Serve は各工場の PLC からデータを収集し、ThingWorx がその ThingWorx Kepware Serve利用して、 のデータを各工場でのリアルタイムモニタリングおよび診断用に可視化します。

チームが新しいソリューションのために選択したクラウドベースのアーキテクチャーには、ほかの工場で以前から使用していたオンプレミスのソリューションに比べて大きなメリットがあります。クラウドベースのソリューションの場合、簡単にシステムを進化させ、新しい機能を追加できます。アプリケーションを更新する際も、1 回展開するだけで、クラウドベースのアーキテクチャーが同じ変更を即座にすべての工場に反映させます。同時に、一部の工場固有の機能を特定の場所のみで使用できるようにして、ほかの工場には後で展開することもできます。

このように必要に応じて柔軟にソリューションを構成し、結果的に効率向上と時間短縮を実現することで、総所有コスト (TCO) が大幅に改善されます。「新しいソリューションではオンプレミスのソリューションに比べ必要なリソースが少ないため、管理すべきリソースも少なく済みます」と、Autoware 社のテクニカルリードを務める Marco Faltracco 氏は話します。「このアーキテクチャーによりさらに多くの工場に容易に拡張できるようになるため、現在ではさらなる拡張も検討しています」と Faltracco 氏は続けます。「総所有コストも、オンプレミスのソリューションを所有する場合よりもはるかに削減できます」

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Carlsberg 社はパフォーマンスと生産性を向上させる一方で、より持続可能な未来を見据える

現時点で、このアプリケーションは Carlsberg 社の 28 カ所の工場に展開されています。最終的には、残りのビール生産工場への導入も予定しています。Carlsberg 社のデジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みはまだ進行中ですが、リアルタイムのパフォーマンスモニタリングがビジネス全体にもたらすメリットはすでに明らかになっています。まず、可視性が向上したことで業務手順が改善され、生産が中断される回数が減少しました。また、予防保全の改善により機器のダウンタイムが減少しました。もう 1 つの効果は廃棄物が減少したことで、二酸化炭素排出量と持続可能性に関する企業目標に貢献していることです。

特に、パートナーシップのおかげで、Carlsberg 社が自信をもって効率的にソリューションを展開する能力に大きな違いをもたらしました。この点は、長期的に見てすべての関係者にメリットをもたらすでしょう。「パートナーチームとして緊密に連携し、最後の工場にはわずか数日間で展開できました」と De Bernardini 氏は言います。「協力し合うことで、チーム全体が適切に任務と責任を果たすことができるレベルに到達したのです。実際、当社の全体的なビジネスモデルはパートナーシップに基づいています」と De Bernardini 氏は続けます。「このようなプロジェクトを成功させる唯一の方法は、全員が参加する強力なチームを作り、適切な技術によってすべてを結び付けることであると信じています」

Carlsberg 社にとって、デジタルへの取り組みを促進することは、自社が常にビール業界において単なるイノベーターではなく、より優れた持続可能な未来を見据える企業という立場にあることを証明するものであり、Carlsberg 社は今後もさらなる成功のために Autoware 社と引き続き協力していきたいと考えています。