課題 Brembo 社には 14 カ国に 40 以上の工場があり、すべてに独自のプロセスと設備を備えていました。データは豊富にあっても洞察力に欠けていました。Brembo 社は、プロセスデータの多様なソースを統合し、工場のオペレーションに関する洞察を得る方法を必要としていました。


スピードを重視して設計された車両にとってコントロールは非常に重要です。Brembo 社ほど高い精度と衝撃に強いブレーキシステムを提供している自動車メーカーはありません。北米に 75 の生産ラインを持ち、さらに 14 カ国に工場を擁する自動車業界の大手企業である Brembo 社は、短期間でデジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みを開始し、企業全体に拡張したいと考えていました。Kepware と ThingWorx を活用して革新的なユースケースを導入し、製造オペレーションを最適化することで、競争の先頭に立ち続ける Brembo 社の事例をご紹介します。

自動車業界の大手企業 Brembo 社は高性能な製品の製造に尽力

Brembo 社は、自動車、バイク、産業用車両、機械用のブレーキシステムとコンポーネントの設計、開発、生産をリードする世界規模の企業です。Brembo 社はレースの世界にも力を入れ、1975 年以来、その印象的な赤いブレーキシステムで 500 回以上のモータースポーツ選手権で勝利を収めてきました。Brembo 社はイタリアに本社を置き、生産拠点を北米、ヨーロッパ、アジア、南米に及ぶ 14 カ国に擁しています。革新と進化を重視する Brembo 社は、従業員の 10% を研究開発業務に従事させるというビジネス戦略をとっています。この進化への意欲は、Brembo 社のデジタルトランスフォーメーション (DX) においても大きな役割を果たしました。

PTC および Brock Solutions 社と提携し、データソースの接続とデータ収集を実現

変革への取り組みを開始し、リアルタイムな洞察を獲得するには、機器を接続してデータを収集する必要があることを Brembo 社は理解していました。Brembo 社には 14 カ国に 40 以上の工場があり、施設すべてに独自のプロセスと設備を備えていました。データは豊富にあっても洞察力に欠けていました。その上、デジタルトランスフォーメーション (DX) に取り組む前は、USB メモリを介して手動でデータにアクセスし、サイロ化した状態で分析を行っていました。

複数の生産ラインから簡単に情報を収集して分析できないため、Brembo 社は複数の課題に直面しました。1 つ目は、ラインオペレーションを十分に可視化できていなかったこと。2 つ目は、時間のかかる手動のデータ収集によりトラブルシューティング機能が制約を受けていたこと。そして 3 つ目は、一貫性のあるオペレーションの確保とばらつきを最小限に抑えることが困難であったことです。特に、早い段階でばらつきを把握することが難しかったため、品質への影響を抑え、十分にスクラップを削減することができていませんでした。このような課題により、Brembo 社は精算全体で効率を最大限に高めることができませんでした。Brembo 社は、プロセスデータの多様なソースを統合し、工場のオペレーションに関する洞察を得る方法を必要としていました。

Brembo 社は、産業用接続を促進し、さまざまな旧式の機械と PLC をリンクできるツールを必要としていました。ThingWorx Kepware Server により、異なるデータソースを統合し、生産ラインの現状を示すデータを表示できると考えました。また Brembo 社は、既存のインフラ上に構築してリアルタイムな洞察を提供できる、柔軟なソリューションも必要としていました。さらに、導入スピードを重視していたため、企業全体に迅速かつ効果的に拡張できることが必須でした。Brembo 社は、PTC のエンドツーエンドの産業 IoT プラットフォームである ThingWorx を活用することで、既存のインフラ全体にソリューションを迅速に導入、拡張できました。ThingWorx のリアルタイムのデータ分析と豊富なインサイトおよびレポートにより、生産と設備の状態を可視化できるようになっただけでなく、Brembo 社が求めていた導入の柔軟性とスピードも実現されました。

 

Brock Solutions 社
brock-solutions-logoBrock Solutions 社は ThingWorx および Kepware のインテグレーターとして定評があり、オートメーションと IoT の専門知識を提供するだけでなく、拡張性を念頭に置いたソリューションを設計するための実績ある方法を提案します。Brembo North America 社の製造ディレクターである Jason Wolfe 氏は、Brock Solutions 社が不可欠なパートナーである理由を次のように説明しています。「Brock Solutions 社は製造分野を理解しています。私たちは確実に実際のビジネス上の問題を解決できる堅牢なソリューションを導入するため、技術を理解しているだけでなく、洞察、アイデア、製造に関する専門知識も提供できるパートナーを必要としていました」。Brock Solutions 社が概要を示したデジタル化のロードマップは、3 つのラインのパイロットから始まり、その後、段階的に施設全体に展開するというものでした。このアプローチにより、ソリューションの拡張と同時に、継続的な改善を実現しました。


 

Brock Solutions 社の支援を受けた Brembo 社は、Kepware の接続性と ThingWorx の迅速な開発機能を活用して、生産状況のリアルタイムモニタリング (RTPPM) のユースケースを 10 週間以内に導入しました。Kepware と ThingWorx を使用して生産ラインを接続し、ThingWorx によって実現された一元的なデータハブは、工場、地域、企業レベルのビューを表示するためにサーバー全体のデータを集約します。収集された生産データは 3 つのカスタムダッシュボードに表示されます。各ダッシュボードは、それぞれのユーザーグループにリアルタイムで実用的なデータを提供するとともに、作業員がリアルタイムでトラブルシューティングを行えるように、詳細情報、アラート、プロセスフローの「ポップアップ」を表示します。このような接続性を確保した Brembo 社は、ラインが一貫して効率的に稼働していることを確認し、ばらつきを最小限に抑えることができるようになりました。さらに、新たに獲得した洞察を活用し、価値の向上、時間の節約、将来の進化に向けたより優れた基盤の構築を実現するための新たな KPI を開発しました。

成功を確実に手に入れ、進化を継続するには IT と OT の融合が不可欠

ソリューションを適切に拡張し、将来の成功を土台にして進化を継続するために、Brembo 社は Kepware で収集したデータのための新しいシステムとプロセスの構築に取りかかりました。Brembo 社は、IT と OT を適切に融合させることが、目標達成の鍵になると認識していました。

Brembo 社は IT と OT の融合に関して 2 つの基本理念を重視していました。1 つ目は、IT の職務と OT の職務の間に明確な境界戦を設けること。そして 2 つ目は、IT が OT の生産性向上を支援できるように、IT が OT のニーズと業界のトレンドを詳細に把握できるようにすることです。成功をさらに確実なものにするために、Brembo 社はシンプルなフレームワークで IT の職務と OT の職務を分割しました。それは、OT がライン内で発生する事象を担当し、IT がライン外で発生する事象を担当するというフレームワークでした。

職務は明確に定義されていても、成功を収めるには IT と OT の間で常にコミュニケーションとコラボレーションが必要です。IT はラインに入る情報とラインから出てくる情報の継続的な流れを保証する必要があり、OT はライン外の製品の継続的な流れを保証する必要があります。IT と OT は表裏一体なので、価値を生み出すには連携が必要です。Brembo 社では IT と OT の融合への取り組みの一つとして、データサイエンティストを導入し、OT に意思決定のサポートを提供しました。支援を委ねました。IT と OT の間で適切にデータを共有することで、Brembo 社は Kepware を使用してラインオペレーションの可視化の向上、業務効率の改善、価値ある変更を促進する取り組みの優先順位付け、OT のトラブルシューティング能力の向上を実現しました。このように IT と OT の融合に関して配慮の行き届いたアプローチによって、Brembo 社は、ユースケースの拡張に成功しました。

産業 IoT のユースケースを拡張して OEE を改善し、有用な洞察を獲得

パイロットプログラムを成功させた後、Brembo 社は、Kepware と ThingWorx を使用すればより多くの成果を上げ、デジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みを促進できることにすぐに気付きました。Brembo 社は Kepware と ThingWorx をすべてのプロセスに統合することで、ユースケースの拡張を開始しました。最初に取り組んだのは、リアルタイムの生産パフォーマンスのモニタリングと設備のモニタリングによる総合設備効率 (OEE) の改善でした。OEE は、サイクルタイム、ダウンタイム、歩留まりという 3 つの主な要素の組み合わせです。ThingWorx と Kepware の機能を組み合わせることで、Brembo 社は、これら 3 つの要素をすべて分析し、ライン全体の効率を最適化できました。

 

たとえば、Brembo 社は ThingWorx を使用して、並行する 2 つの生産ラインのサイクルタイムを互いに比較テストしたり、予算上のサイクルタイムと比較テストしたりすることで、ラインのパフォーマンスに関する洞察を得ています。現在では、ラインが予算のサイクルタイムを超えて稼働していないか確認できるため、無駄が発生している場所を特定できます。それだけではなく、ライン全体のサイクルタイムを比較してサイクルタイムを改善できるラインを特定し、ラインのパフォーマンスをさらに最適化できます。このような点に意識が向いたことで、Brembo 社はそれまで認識していなかった問題を特定し、対応できるようになりました。さらに、設備のモニタリングおよび利用率管理機能により、機械の計画外ダウンタイムが発生するタイミングと理由も特定できます。設備のモニタリングは予知保全機能の基盤となり、これによりさらに時間とリソースを節約できます。OEE の改善により、無駄の削減、問題の迅速な特定と解決、生産ライン全体の効率向上を実現しています。

Brembo 社は Kepware と ThingWorx を使用して、OEE の改善に加え、生産ラインやその他のプロセスを合理化しています。たとえば、Kepware を使用してガスおよび電力メーターをモニタリングすることで、エネルギー消費量を節約しています。また、Kepware を介して収集したデータに基づいて電力システムを自動化し、ラインが稼働していない場合は機器への通電を停止し、ラインが生産を再開した時点で電力が復元するようにしました。これにより Brembo 社は、機器をアイドル状態で連続運転して過剰なエネルギーを消費することがなくなりました。
また、Kepware を使用してより簡単に汚染要件をモニタリングし、規制遵守を確保しています。厳格な汚染要件をもつ化学物質のデータ収集および分析に対応するために、Brembo 社は自社の IoT ソリューションを活用して分析を実行し、データログを取得して、生産を厳密に追跡し、規制遵守を徹底しています。

また、Kepware は、Brembo 社の生産ラインの情報を直接 ERP の財務データに統合するためにも使用されています。現在 Kepware はラインの機器に統合されているため、生産ラインの情報を自動的に ERP システムに送信し、会計、在庫、財務の処理を実行できます。Brembo 社は、データ収集および分析を自動化することで人為的ミスを最小限に抑え、貴重な時間を節約し、規制遵守プロセスを合理化しています。

OEE から ERP まで、Brembo 社は広範囲で Kepware と ThingWorx を活用しています。「現在、当初の構想の一部であった多くの内容が最終段階にあります。デジタルトランスフォーメーション (DX) 以前の工場では夢でしかなかったことが、今では現実になろうとしています」と、Brembo North America 社の IT マネージャー Stephen Ceccarini 氏は話します。有用な洞察を簡単に活用できるようになった Brembo 社は、生産ラインの効率向上、時間の節約、問題の早期特定、ビジネス全体のプロセスを合理化しています。

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迅速に拡張可能なシステムを構築

Brembo 社は PTC と Brock Solutions 社の支援を受け、ThingWorx と Kepware のユースケースを生産ラインおよび機器全体に迅速に拡張しました。最初はわずか 3 つのラインでしたが、最終的には 75 ラインまで拡張しました。Brembo North America 社の CEO である Dan Sandberg 氏は、Brock Solutions 社とのパートナーシップと高性能な PTC のツールにより、想像していたよりも早くデジタルトランスフォーメーション (DX) の成果を上げることができたことについて次のように話しています。「PTC と Brock Solutions 社のパートナーシップと ThingWorx プラットフォームの活用によって、当社のデジタルトランスフォーメーション (DX) を促進できました。提供されたソリューションは、数カ月ではなく数週間で価値をもたらしました。今後も変革の推進と業績の向上に貢献してくれるでしょう」

ThingWorx と Kepware には旧式の機械を簡単に接続し、一元的なデータハブを介してユーザーがリアルタイムの情報を可視化できる機能が備わっているため、Brembo 社は自社の取り組みを迅速に拡張できました。各工場では、専任の OT エンジニアが ThingWorx に関連するすべての変更を統合しています。Brembo 社のチームは、単発のソリューションを開発するのではなく、最小限の変更であらゆるシナリオに適用可能なモデルを設計しました。Brembo 社はすべての Kepware サーバーに変更管理制御アプリケーションを組み込み、サーバーの構成全体を自動的にバックアップしています。これにより、変更の前後のスナップショットを取得するようにアプリケーションを設定し、両者を比較することが可能になります。さらに、その構成をほかの場所に複製して、ソリューションを企業全体に拡張できます。また、Brembo 社は、ThingWorx と Kepware を使用してさまざまなソリューションで情報を管理、比較、リンクできるように、標準的な命名規則およびプロセスも確立しました。

「PTC 社と Brock Solutions 社のパートナーシップと ThingWorx プラットフォームの活用によって、当社のデジタルトランスフォーメーション (DX) を促進できました。提供されたソリューションは、数カ月ではなく数週間で価値をもたらしました。今後も変革の推進と業績の向上に貢献してくれるでしょう」
Dan Sandberg 氏、CEO、Brembo North America 社

 

 

拡張可能なソリューションを構築し、全社規模で新しいソリューションを導入しやすい社内構造を作り上げた結果、Brembo 社はデジタルトランスフォーメーション (DX) を迅速に進めました。Brembo North America 社のオペレーションマネージャーである Alvaro Quiroga 氏は、「Kepware と ThingWorx によって、今ではすべてがインダストリー 4.0 になっています」と語ります。全社規模で拡張可能なソリューションを開発したことで、Brembo 社は継続的な改善の基盤を築くことに成功しました。

「効率化とリアルタイムの可視化により、Brembo は 2020 年に 150 万ドル以上を節約できました」

Alvaro Quiroga 氏、オペレーションマネージャー、Brembo North America 社

 
ThingWorx と Kepware を活用して驚くべき成果を達成

Brembo 社は、リアルタイムの可視化と権限を与えられた従業員いよって時間を節約しています。データ収集を個々の作業員ではなく Kepware が行うことで、作業員の効率が向上し、より多くの部品を生産できるため、市場投入期間が短縮されます。たとえば、データ分析に約 3 日かかっていたトラブルシューティングのシナリオが、今では 3~4 時間でできるようになりました。Brembo 社は、リアルタイムデータを活用して関連情報を直接掘り下げ、あらゆる問題を特定しています。これにより、残業も回避できるようになりました。

 

Brembo 社は OEE を向上するために、スクラップと手戻りの削減、品質の向上、稼働時間と処理能力の改善に取り組んでいます。インダストリー 4.0 が実現する前は、各シフトの最後におおまかに OEE を計算していました。ThingWorx を利用することで、Brembo 社のバックオフィスが状況をリアルタイムで把握し、処理能力を改善するための積極的な決定ができるようになりました。ThingWorx により、Brembo 社はサイクルタイムを分析し、それまで把握していなかった課題を特定しています。これらの変革は、大きな節約につながりました。「効率化とリアルタイムの可視化により、Brembo は 2020 年に 150 万ドル以上を節約できました」と、Brembo North America 社のオペレーションマネージャーである Alvaro Quiroga 氏は話します。

Brembo 社ではコストの削減により真の価値を得ただけでなく、ますます顧客中心の対応ができるようになりました。生産ラインのオペレーションを可視化し、リアルタイムデータにアクセスできるようになったため、顧客や規制当局からの問い合わせにもタイムリーに対応できる自信も得られました。

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「当初、このプロジェクトは PoC(実証実験)でしたが、今では非常に高い接続性、効率性、生産性で運用しているため、この技術なしで工場を稼働することは考えられません」と Ceccarini 氏は話します。


デジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みは順調だが、まだ終わりではない

Kepware と ThingWorx は生産ラインオペレーションのほぼすべての部分に組み込まれていますが、Brembo 社のデジタルトランスフォーメーション (DX) への取り組みはこれで終わりではありません。今後は、段取り替えプロセスの改善とその際のダウンタイムの削減、予知保全などのユースケースでの AI と機械学習の活用、サイクルタイムの最小化と歩留まりの改善による OEE のさらなる最適化に取り組みます。また、作業指示に拡張現実 (AR) を導入することで、現場の作業員に適切な情報を適切なタイミングで提供します。

Kepware と ThingWorx の導入により、最終的に Brembo 社は、競争の激しい自動車業界でリーダーの位置づけと競争上の優位性を維持できました。「私たちは無限の可能性を信じています。今後も新しいツールを開発し、企業で価値を獲得し続けていくつもりです。この先、この 3 年半で達成してきたものよりもさらに多くの成功を収めることができると信じています」と Quiroga 氏は話します。

「私たちは無限の可能性を信じています。今後も新しいツールを開発し、企業で価値を獲得し続けていくつもりです。この先、この 3 年半で達成してきたものよりもさらに多くの成功を収めることができると信じています」

Alvaro Quiroga 氏、オペレーションマネージャー、Brembo North America 社